日本語で触れることのできる代表的なD&D世界を、前回に引き続き紹介する。
今回はサプリメントの数ではフォーゴトン・レルムに次ぐボリュームで、豊富な情報を日本語で得られるファンタジー世界、「エベロン」だ。
エベロン ― 新機軸満載の日本のファンタジーを連想させるノワールな世界 ―
登場当初より、D&D日本語版でサプリメントが翻訳刊行された世界がエベロンである。第3.5版の展開のなか、2002年に開催されたWotCによる大規模なコンテストで、11,000通を超える応募の中から選ばれたエベロンは、それまでの剣と魔法のヨーロピアン・ファンタジーとは一味違う、特異な設定が魅力である。
・魔法が技術として進歩し、呪文だけでなく呪文の力をアイテムに封じて使うアーティフィサー
・魔法のテクノロジーの結実である、封じた精霊の力で走行する大陸間鉄道ライトニング・レイル、エレメンタル駆動機関によるエレメンタル飛空艇、エレメンタル馬車、エレメンタル・ガレオン船といった乗り物、交通機関
・近世的なコーヴェア大陸のほか、未開のゼンドリック大陸、ドラゴンが棲み陰謀をめぐらすアルゴネッセン大陸、夢魔に支配されたサローナ大陸と、各種多様なロケーション
・人工ヒューマノイド種族ウォーフォージド
・特殊な魔法の力を持つ紋様ドラゴン・マークと、その力により社会的権威をもつ13家系のドラゴン・マーク氏族
・陰謀・策謀によって予言を実現しようとするドラゴンたち
・主な舞台となるコーヴェア大陸では「最終戦争」(The Last War)が停戦した直後の時代設定
・魔法のテクノロジーの結実である、封じた精霊の力で走行する大陸間鉄道ライトニング・レイル、エレメンタル駆動機関によるエレメンタル飛空艇、エレメンタル馬車、エレメンタル・ガレオン船といった乗り物、交通機関
・近世的なコーヴェア大陸のほか、未開のゼンドリック大陸、ドラゴンが棲み陰謀をめぐらすアルゴネッセン大陸、夢魔に支配されたサローナ大陸と、各種多様なロケーション
・人工ヒューマノイド種族ウォーフォージド
・特殊な魔法の力を持つ紋様ドラゴン・マークと、その力により社会的権威をもつ13家系のドラゴン・マーク氏族
・陰謀・策謀によって予言を実現しようとするドラゴンたち
・主な舞台となるコーヴェア大陸では「最終戦争」(The Last War)が停戦した直後の時代設定
これらの設定は第3.5版、第4版で次の日本語版が刊行され(日本語版発売順)、エベロン世界で最も特徴的で有名な「塔の街」シャーンに始まる小説も翻訳された。サプリメントで紹介される地域で小説の物語が展開することで、エベロンの魅力と理解が深まることだろう。
■第3.5版
エベロン・ワールドガイド(原題:"Eberron Campaign Setting" WotC 2004、ホビージャパン 2006)
エベロン・プレイヤーズ・ガイド(原題:"Player's Guide to Eberron" WotC 2006、ホビージャパン 2007)
ゼンドリックの秘密(原題:"Secrets of Xen'Drik" WotC 2006、ホビージャパン 2007)
ドラゴンマーク(原題:"Dragonmarked" WotC 2006、ホビージャパン 2007)
シャーン:塔の街(原題:"Sharn, City of Towers" WotC 2004、ホビージャパン 2008)
五つ国:ファイヴ・ネイションズ(原題:"Five Nations" WotC 2005、ホビージャパン 2008)
■第4版
エベロン・プレイヤーズ・ガイド 第4版(原題:"Eberron Player's Guide" WotC 2009、ホビージャパン 2009)
エベロン・キャンペーン・ガイド 第4版(原題:"Eberron Campaign Guide" WotC 2009、ホビージャパン 2010)
■小説『ドリーミング・ダーク』3部作
第1部 シャーンの群塔 上、下(原題:"The City of Towers Eberron: The Dreaming Dark, Book 1" WotC 2005、ホビージャパン 2008)
第2部 砕かれた大地 上、下(原題:"The Shattered Land: The Dreaming Dark Book 2 WotC 2006、ホビージャパン 2008)
第3部 夜の門(原題:"The Gates of Night The Dreaming Dark, Book 3" WotC 2006、ホビージャパン 2008)
『エベロン・キャンペーン・ガイド 第4版』の冒頭に、エベロンの冒険世界としての魅力の一端、世界の雰囲気について示されている。引用しよう。
基本的な色調。エベロンは伝統的なD&Dでおなじみのスリルに満ちた冒険活劇の要素を残らず取り入れつつも、謎と陰謀のスパイスを強めに効かせてある。エベロン・キャンペーンにおいて物語は常にハッピーエンドを迎えるとは限らず、またあらゆる問題に正しい答えが見つかるとも限らない。最終戦争はかつての盟友を不倶戴天の敵に変えたばかりか、一国をまるまる滅ぼして無残な傷痕を残した。今や大都市という大都市には犯罪と不正がはびこっている。味方だと思っていた相手が瞬く間にてのひらを反すかもしれず、悪の手先として知られるキャラクターが意外なときに助けの手を差し伸べてくれるかもしれない。身をひそめたドラゴンたちが歴史の流れを形づくり、奸悪な魔物どもが騙されやすい人々の夢に影響をおよぼす。現実の境界のすぐ外側には恐ろしい怪物が群れをなしてうごめき、現実と非現実を隔てる壁を破ろうとしている。何によらず、目で見たとおりのものなど、この世界には一つも存在しない。
フォーゴトン・レルムを別にすれば、日本語でこれほどの量・質を誇る異世界設定情報は、そうはない。D&D第5版においても『ソード・コースト冒険者ガイド』の「付録:他の世界におけるクラス・オプション」にて、同書のクラス・オプションをエベロンを舞台に用いる場合のガイドラインが掲載されている。エベロンという世界の個性は、第5版においても魅力的なのだ。
※記事中の日付は記事公開時のものです。
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