小山に住む不思議な小人たちと主人公「せいたかさん」とのあたたかな交流を描いた『コロボックル物語』シリーズ。子どもの頃に読んだという方も多いのではないでしょうか。
コロポックルは元々、アイヌの伝説に登場する生き物でした。そこで今回は、アイヌの伝説の中のコロポックルがどんな存在なのか、ご紹介しましょう。
目次
コロポックルってどんな人たち?
アイヌの伝説に登場する「コロポックル」とは?
- 「コロポックル」=「蕗の葉の下の者」。蕗の葉より背が低い人のこと。
- 別名:「トイチセコッチャカムイ」(「土の家に住む神」という意味)。
コロポックルの特徴
①蕗の葉よりも背が低い小人。
②アイヌの人々とは友好関係にあった。
③姿を見られることを極端に嫌がる。
コロポックルとは「蕗の葉の下の者」という意味で、その名の通り、蕗の葉よりも背が低い小さな人たちです。
「トイチセコッチャカムイ」(土の家に住む神)という別名を持ち、竪穴住居に住んでいるとされることもありました。
彼らはアイヌの人々と基本的に友好関係にありますが、アイヌの前に姿を現すことを大変嫌がったといいます。また、最後は一族ごと海の彼方に去って行ったともいわれています。
コロポックルにまつわる伝説
北海道東部・十勝地方には、コロポックルにまつわる次のような伝承が残されています。
十勝地方に残るコロポックルの伝承
- 十勝川流域にコルポルウンクルという一族が住んでいて、人間に魚や穀物を恵んでいた。
- しかし彼らは姿を見せるのを嫌がり、いつも窓から手だけを出してアイヌの人々に食物を与えていた。
- ある時、悪い男がコルポルウンクルを無理やり家へ引きずり込むと、その正体は裸の小さな女だった。
- コルポルウンクルの長は怒り、呪いの言葉を吐いて一族ごと海の彼方に去ってしまった。
この伝承に登場するコロポックルは「コルポルウンクル」と呼ばれており、アイヌの人々に食べ物を与えるなど友好的でしたが、ある時、無理やり正体を暴かれてしまいます。
この無礼に怒ったコルポルウンクルの長は、「ネプチ! トカプチ!」 (焼け失せろ! 干上がれ!) と叫ぶと、一族を引き連れて海の彼方へと去ってしまいました。この「トカプチ」が「十勝」という地名の語源になったといわれています。
コロポックルの正体は千島に住むアイヌ?!
ではコロポックルとは伝承の中だけに存在した生き物なのでしょうか?
考古学者の瀬川拓郎氏は、コロポックルの正体について次のように考察しています。
考古学者・瀬川拓郎氏の説
コロポックルの特徴……
・海の向こうの島に住んでいて、船でやって来てなぜか土を盗んでいくという伝承がある。
・竪穴式住居に住む。
・姿を見られることを極端に嫌がる。
・体が小さいのでワシを恐れる。
千島に住むアイヌの特徴……
・伝染病を恐れ、多民族と直接接触しない「沈黙交易」を行う。
・竪穴式住居に住む。
・19世紀頃まで土器を作っていた。
・ワシの尾羽を交易品にしていた。
瀬川氏は、コロポックルの特徴と千島北部に住むアイヌの特徴がよく似ていることから、コロポックルの正体は千島のアイヌではないかと考えました。
ですが千島のアイヌは身長が極端に低いわけではありません。「コロポックル=背が低い」というイメージは、中世日本の「一寸法師」などの伝説がアイヌに伝わり、コロポックルの伝承と混じった結果だとも考えられています。
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