河童といえば、鬼や天狗と並んで有名な妖怪のひとつです。
【水中に棲む・キュウリを好む】などの特徴を持ちますが、死んだ河童の骨は水に溶けてしまうことを知っていますか?
今回は『幻想世界の住人たちIV』(多田克己 著)から、河童の知られざる姿を紹介します。
目次
河童の生態を解説! 好きなもの・嫌いなもの
河童は2~10歳くらいの子供のような外見をしています。頭のてっぺんに水を蓄えておく皿が乗っているのは有名ですよね。
水に棲む河童の体はヌルヌルとして生臭く、手足の指の間には水かきがあり、足の裏には吸盤がついています。
河童といえば背中の甲羅をイメージしがちですが、実は甲羅のある河童とない河童がいて、甲羅がない河童は猿のように全身が毛深くなっています。
河童の両腕は内部でつながっているようで、一方の腕を引っ張るともう一方の腕が縮みます。ひどく引っ張ると腕が抜けてしまうこともあるようです。また河童のお尻の穴は3つあり、おならの臭さは強烈で、まともに嗅ぐと死んでしまう人もいるそうです。
◇河童の好きなもの
河童はキュウリのほか、茄子やカボチャ、ゴマの茎などの野菜を好みます。
また見た目にそぐわず怪力の持ち主で、力を自慢するため、人間に出会うと必ず相撲を挑んできます。
◇河童の嫌いなもの
河童の嫌うものは、金属(鉄)、とうもろこし、ささげ豆、麻の灰、鹿の角、夕顔、ヒョウタンなどですが、地域によっては逆に好物になっていることもあります。
動物では猿が大嫌いで、河童の天敵です。また仏に供えた仏飯を食べた人間には近付こうとしません。
水中へ引き込む危険な妖怪? 河童の能力と弱点
河童はこんな恐ろしい面も持っています。
河童は人間の尻子玉(肛門にあると信じられていた玉)が好物で、人間を水中に引き込んで尻子玉を取ってしまうのです。
尻子玉を抜いた肛門から生き肝を食べたりもします。取った尻子玉を龍王に捧げることもあるようです。
◇河童の能力
河童は自分の姿を消すことができ、人間や動物、物品などに化けることもできます。最も危険なのは人や家畜の体に入り込む能力を持っていることで、子供などが河童に取り憑かれると川や沼を見つめ続け、最後には水に入って溺れ死んでしまいます。
河童にはオスもメスもいますが、子供を作るときに人間を使うこともあります。水遊びをしている女の子の中に入り込み、身ごもらせるのです。
また河童は霊薬の処方に通じています。河童の霊薬は河童膏と呼ばれ、金属による切り傷や接骨によく効きます。人間に捕まった河童を逃してやったお礼に、この薬をもらうことがあるようです。
◇河童の弱点
そんな河童の弱点は頭上の皿です。河童の力は水が源なので、頭の皿の水をこぼすと弱ってしまうのです。
逆に水の中に入れば力は強くなり、馬や牛を水中に引きずり込むほどの怪力を発揮します。
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中国から渡来? 正体は人形? 謎多き河童の起源
河童の起源には諸説あります。ここでは「中国渡来説」「人形起源説」の2つをご紹介しましょう。
◇中国渡来説
もともと河童は中国の黄河上流に棲んでいましたが、ある一族が棲みよい場所を求めて黄河を下り、海を渡って日本までやってきました。
熊本県の球磨川河口に棲み着いた河童たちは次第に上流へ移り、繁栄して9000匹にも増えたということです。そのためこの一族の族長を九千坊と呼ぶようになりました。
九千坊は数をたのみに暴れまわったため、肥後国の加藤清正は河童の天敵である猿を集めて攻め立てました。九千坊は降参して肥後の国を去り、水難よけの水天宮の使いとなって日本全国へと広まっていったそうです。
◇人形起源説
昔、三笠山の春日神社を造営したときのこと。人手を補うため、工匠の奉公をつとめていた内匠頭が藁の束を十字に組んで99体の人形を作り、魂を吹き入れました。人形たちは子供の姿になって働き始め、神社の造営は滞りなく進みました。
神社が完成したあと不要になった人形たちは川へ捨てられましたが、生き延びて河童になったということです。しかし河童になったあとも藁束を組み合わせた体の構造は変わらず、両腕がつながったままなのです。
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