ケルト神話は、いくつかの物語によって構成される神話群です。
何となく興味はあるけど難しそう。話のネタとして知っておきたい。好きなキャラクターがどんな活躍をしていたのか気になる。
そんな方に向けて、ケルト神話のあらすじや名シーンを分かりやすくまとめました。
第3回目は、フィアナ騎士団の武勲や絶世の美男子ディルムッドが登場するフィン物語群を取り上げます。
目次
フィン物語群のあらすじ
アイルランドを守る戦士集団のフィアナ騎士団は、内部でバスクナ氏族とモーナ氏族が勢力争いをしている状況であった。
バスクナ氏族出身のフィアナ騎士団長クールはモーナ氏族の娘と恋仲になるが、モーナ氏族によって殺されてしまう。クールの子を身ごもった娘は落ち延びて、息子を生む。
クールの息子は成長してフィンと呼ばれるようになった。彼はアイルランドの王都タラを襲う怪物を倒して武勇を示し、父の遺産と騎士団長の地位を取り戻す。
フィンに率いられたフィアナ騎士団は、異界の化物や異国の脅威からアイルランドを守り武勲を上げた。特に活躍したのがフィンの息子オシーンとその子オスカー、そしてモーナ氏族の若き戦士ディルムッドであった。
しかしディルムッドがフィンの婚約者グラーニャ姫と駆け落ちしてしまったことが、フィアナ騎士団の崩壊の始まりとなった。嫉妬によりディルムッドを罠にかけて殺したフィンは、騎士団の戦士たちの信望を失ってしまったのだ。
やがてアイルランドの新上王カルブレが、拡大するフィアナ騎士団の権力を嫌い排斥に乗り出した。モーナ氏族の裏切りもあって騎士団は追い詰められていく。最後はオスカーとカルブレが相打ちとなって戦いは集結するが、もはやフィアナ騎士団に過去の栄光はなくなっていた。
ざっくり用語解説
*フィアナ騎士団
1世紀ごろに組織された戦士集団。外敵の排除やアイルランド上王の守護を目的とする。150人の指揮官と4000人の兵士を持つほどの勢力であったとされる。特定の拠点や領地を持たず、狩猟生活をしながらアイルランド各地を旅していたという。
*フィン・マックール
バスクナ氏族出身のクールとモーナ氏族出身のマーナの子。様々な魔法の品を持っていたが、賢者フィンネガスのもとで修行した際に得た知恵の鮭の脂が最大の武器であった。鮭の脂の染み込んだ親指を噛みしめることで得られる知識は、フィンを数々の危機から救った。またフィンの手で汲んだ水は癒しの力を持ち、飲ませればあらゆる傷を治したという。
*オシーン
フィンの息子。優秀な戦士であり、後に詩人として讃えられた。常若の国ティル・ナ・ノーグに招かれ、そこで300年を過ごしたといわれる。やがて故郷に帰ったオシーンを迎えたのは、フィアナ騎士団が失われ変わり果てたアイルランドだった。彼は騎士団の栄光を伝えるため、アイルランド各地を放浪する。
*ディルムッド・ウア・ドゥヴネ(ディルムッド・オディナ)
フィアナ騎士団の若き英雄。頬のホクロは妖精につけられたもので、女性を魅了する力を持つことから、愛の印「オディナ」と呼ばれる。フィンの甥にあたり、フィンの孫オスカーの親友でもあった。女好きといわれることもあるが、誠実な性格で仲間からの信望は厚かった。
*グラーニャ
アイルランドの上王コーマックの娘でフィンの婚約者。若く美しいが、奔放でわがままな姫君。年老いたフィンを嫌ったグラーニャは、結婚式前夜の宴席で色男ディルムッドに執拗に迫り彼を脅迫した。ディルムッドは心ならずも彼女を連れ、16年の間アイルランドを逃走することになる。
*カルブレ・リフェハル
コーマックの跡を継いだアイルランド上王。フィアナ騎士団の行き過ぎた権力の増大に怒り、討伐を企てる。これにより騎士団はフィンを中心とするバスクナ氏族と、上王に味方するモーナ氏族に分かれ相争うことになった。
妄想名シーン
フィンの婚約者グラーニャに見初められ駆け落ちしたディルムッド。やがて周囲のとりなしもあってフィンはディルムッドを許すが、心の底では復讐の機会を狙っていた。
フィンは騎士団を集めて狩猟を催す。
「ディルムッド、おまえも来るがよい。ベン・バルベンの森に住む魔の猪を狩るのだ」
その猪はディルムッドを殺すと予言されていた。ディルムッドは猪と戦い、瀕死の重傷を負う。
「騎士団長よ、あなたの癒しの手で水をお与えください」
フィンは3度水を運び、そのたびにディルムッドの目の前で水をこぼした。それを見たフィンの孫オスカーが激怒して詰め寄り、思い直したフィンは慌てて水を取りに戻るが、もはや手遅れであった。
ディルムッドの遺体は、愛の神オイングスが運び去ったという。
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