トルコにあるカッパドキアは、キノコ型や円錐型などさまざまな形の奇岩が立ち並ぶ不思議な地域です。古代からこの地には多くの人々が暮らし、奇岩を削って修道院や聖堂、地下都市を造り上げていました。
『古代遺跡』(森野 たくみ著)では、ギザのピラミッドやトロイ、ストーンヘンジ、アンコールワットなど、世界各地にある73もの遺跡を地域別に紹介しています。
今回はその中から、カッパドキアについてお話します。
目次
カッパドキアの奇岩はどうやって誕生したの?
トルコの首都アンカラから南東に約220km、アナトリア高原中央部の火山地帯にカッパドキアはあります。
このカッパドキアの地にはキノコ型や円錐型、尖塔のような形をしたものなど、さまざまな奇岩が立ち並んでいます。
いったいどうやってこんな不思議な地形ができたのでしょうか?
カッパドキアは火山地帯に位置しており、付近にはエルジェス山やハサン山といった火山が存在しています。何百万年も昔、これらの火山は活火山で、何度も活発に噴火を繰り返していました。
一連の噴火によってカッパドキアには広く火山灰や溶岩が堆積していきました。
火山灰は冷え固まって凝灰岩となり、長い年月をかけて雨水や湧き水が凝灰岩や溶岩層をゆっくりと浸食していきます。
こうしてできた地形がカッパドキアなのです。
古くから人が住み着いていた! カッパドキアの歴史
カッパドキアの地には古くから多くの人々が住んでいました。
最初にこの地に住み着いたのは、紀元前1900年頃のアッシリア商人たちです。彼らは交易を目的に、カッパドキアにキュルテペという植民地を建設しました。
▽紀元前1600年~紀元前1100年頃
その後、紀元前1600年~紀元前1100年頃になると、アッシリアの後を継いだヒッタイトが奴隷・鉱産物の交易拠点としてカッパドキアを発展させます。
ヒッタイトの滅亡とともにカッパドキアも衰退しましたが、1世紀前半、ローマ皇帝ティベリウス(在位14年~37年)はローマ帝国の一部としてこの地を組み入れます。さらに2世紀後半になると、カッパドキアにはキリスト教徒らが布教に訪れるようになりました。
当時、ローマ帝国ではキリスト教を認めておらず、キリスト教徒らに度々弾圧を加えていました。弾圧を逃れたキリスト教徒の人々は、4世紀はじめ頃までカッパドキアに隠れ住みながら信仰を続けていたといいます。
▽4世紀前半
やがてコンスタンティヌス帝(在位307年~337年)の時代になると、キリスト教は国教となり、カッパドキアはキリスト教徒たちの修業の場となりました。
▽7世紀
7世紀になりイスラム教徒の勢力が強まると、キリスト教徒を中心に多くの避難民がカッパドキアに集まるようになります。当時の人口は6万人にものぼり、人々は岩山に迷路のような地下通路を掘り、煙突や水飲み場、食料貯蔵庫などを備えた住居を作り上げました。
▽8~10世紀
8~9世紀前半になると、ビザンチン帝国(東ローマ帝国)では、教会・修道院などで絵画や銅像を礼拝に用いることを禁じた「偶像破壊令」が出され、偶像破壊運動が巻き起こります。その流れを受け、カッパドキアでも初期の壁画の多くが破壊されてしまいました。
しかしその後も洞窟内には多くの聖堂や修道院が建てられ続けます。その数は10世紀には360を超え、人口も11世紀になると7万人を上回るようになりました。
▽11世紀後半
アナトリア一帯がセルジュク朝トルコの支配下に入った後も、カッパドキアではイスラム教徒とキリスト教徒が平和的に共存を続けます。カッパドキアでのキリスト教徒たちの信仰は長く続き、1453年にビザンチン帝国が滅ぼされてからも信者たちはこの地で信仰を守り続けました。
世界遺産に登録されたカッパドキアの岩石遺跡群
長くキリスト教徒たちの信仰の場だったカッパドキアですが、現在では世界各地から観光客が訪れる一大観光地となっています。
1985年、カッパドキアは「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩石遺跡群」としてユネスコの世界遺産に指定されました。
カッパドキアの遺跡の中でも特に目を引くのは、キリスト教徒たちが残した修道院や聖堂です。代表的な聖堂には以下のようなものがあります。
・バックルの聖堂(トカル・キリセ)
・リンゴの聖堂(エルマル・キリセ)
・聖女バルバラの聖堂(バルバラ・キリセ)
・暗闇の聖堂(カランルク・キリセ)
・聖母マリア聖堂(メリエ・マナ・キリセ)
・リンゴの聖堂(エルマル・キリセ)
・聖女バルバラの聖堂(バルバラ・キリセ)
・暗闇の聖堂(カランルク・キリセ)
・聖母マリア聖堂(メリエ・マナ・キリセ)
また、カイマクル地下都市など、かつてキリスト教徒らが隠れ住んでいたとされる地下都市の一部も観光地として公開されています。
トルコに行く機会があれば、これらのカッパドキアの遺跡群を訪れてみるのもいいですね。
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