アイヌ世界には善神や豊穣の神ばかりでなく、魔神・邪神の類も存在しています。
今回はそんな魔神・邪神「ウェンカムイ」についてご紹介しましょう。
目次
アイヌの魔神「ウェンカムイ」とは?
【「ウェンカムイ」とは?】
・「ウェン」=好ましくない状況全般のこと。「ウェンカムイ」=「悪い神」。
・特定の神を指す名前ではなく、自然界に無数に存在している。
・人間に仇なすものは全てウェンカムイと呼ばれる。人間を殺傷した熊も「ウェンカムイ」。
・「ウェン」=好ましくない状況全般のこと。「ウェンカムイ」=「悪い神」。
・特定の神を指す名前ではなく、自然界に無数に存在している。
・人間に仇なすものは全てウェンカムイと呼ばれる。人間を殺傷した熊も「ウェンカムイ」。
アイヌ世界にはウェンカムイという名前の特定の神がいるわけではありません。人間に仇なす存在は全てウェンカムイであり、自然界に無数に存在していると考えられています。
たとえば人間を殺傷した熊もウェンカムイとみなされるのです。
ウェンカムイの対処方法
ウェンカムイを祓い、取り憑かれないようにするため、アイヌの人々は様々な工夫をして生活していました。
【ウェンカムイの対処法①出産・育児編】
・難産の場合、便所の神に助けを請う。
・生まれたばかりの乳幼児には、わざと汚らしい名前を付ける。
・赤ん坊がくしゃみをしたら、近くにいる者は「糞頭巾かぶった!」と唱える。
・魔除けのため、赤ん坊に灰を塗って魔を祓う。
・難産の場合、便所の神に助けを請う。
・生まれたばかりの乳幼児には、わざと汚らしい名前を付ける。
・赤ん坊がくしゃみをしたら、近くにいる者は「糞頭巾かぶった!」と唱える。
・魔除けのため、赤ん坊に灰を塗って魔を祓う。
生まれたばかりの乳幼児は特にウェンカムイに取り憑かれやすいと考えられています。
そこで人々は、赤ん坊に「ションタク」(糞の塊)、「セタシ」(犬の糞)といった汚らしい名前をわざと付けたり、灰を塗ったりして魔除けにし、赤ん坊の命を守ろうとしました。
【ウェンカムイの対処方法②日常生活編】
・家に這い込むカエルに灰を投げつける。
・酒を仕込む時に炭火を混ぜ込む。
・伝染病が発生した時は、家や村の入口に行者ニンニクを掲げる。
・船に乗っている時は大声を上げず、常に敬虔な態度でこぎ進む。
・家に這い込むカエルに灰を投げつける。
・酒を仕込む時に炭火を混ぜ込む。
・伝染病が発生した時は、家や村の入口に行者ニンニクを掲げる。
・船に乗っている時は大声を上げず、常に敬虔な態度でこぎ進む。
ウェンカムイはきれいなものを好み、汚いものや臭いものを嫌がるとされています。
そこで人々は、匂いの強い行者ニンニクや火の神の産物である炭火などを利用することで、生活の中からウェンカムイを遠ざけようとしたのです。
ウェンカムイは家や村の中だけでなく、自然界のあちこちに存在しています。
特に危険なのは船に乗っている時です。人々は水難事故でウェンカムイに命を取られぬよう、静かに敬虔な態度で船をこぎました。
北海道各地には「カムイコタン」(神の村)を意味する地名が存在しています。これらの場所には全て、水上交通の難所とされる激流がありました。
石狩川が石狩平野に流れ出す「旭川のカムイコタン」には、石狩川を堰き止め村を滅ぼそうとしたニッネカムイ(魔神)の伝説があり、魔神の足跡や胴体、英雄のサマイクル神によって刎ねられた首がそれぞれ岩になって残されています。
ロルンペ(悪魔祓いの行進)のやり方とは
ウェンカムイの苦手なものを掲げ、注意して暮らしていたとしても、時には不幸な事故が起きてしまうこともあります。
そんな時、アイヌの人々はロルンペ(悪魔祓いの行進)をして魔を追い払おうとしました。
【ロルンペ(悪魔祓い)のやり方】
①事故現場に村の主だった者が集まる。
②皆で列を作り、男は刀を抜き、女は杖を振り上げる。
③ペウタンケ(ときの声)をあげて魔を威嚇し、足踏みをしながら行進する。
①事故現場に村の主だった者が集まる。
②皆で列を作り、男は刀を抜き、女は杖を振り上げる。
③ペウタンケ(ときの声)をあげて魔を威嚇し、足踏みをしながら行進する。
ロルンペ(悪魔祓いの行進)は、事故が起きた現場で行われます。
水難事故なら川や海の近く、熊による人身事故なら山中の事故現場、火災なら火災現場に村人たちが集まり、刀や杖を掲げ、ときの声をあげたり足踏みしたりして魔を威嚇しながら行進するのです。
◎関連記事
【図解】アイヌの民族衣装【アイヌ文様・装身具など】