結婚式は意外に質素　アイヌの名付けや遊び、結婚

『ゴールデンカムイ』で話題のアイヌ民族。彼らの一生はどのようなものだったのでしょう？

今回はアイヌの子どもたちの誕生から成長過程、結婚までをご紹介します。

アイヌの子どもたち①名付け

 アイヌでは、生まれたばかりの赤子には病魔などの悪霊から嫌われるよう、わざと不潔な名前がつけられました。 


たとえば次のような名前です。

・セタシ(犬の糞)
・ポンション(小さな糞)

子どもがある程度成長すると、それぞれの個性に合わせ正式な命名が行われます。歴史上に残る名付けの例には、次のようなものがありました。




これらの正式な名前は基本的に一生ものですが、大きな事件に遭遇した場合など、心機一転を図り改名することもありました。

アイヌの子どもたち②遊びと学習

立ち歩いて遊ぶ年頃になると、アイヌの子どもたちは遊びなどの中から様々な事柄を学ぶようになります。主な遊び方や学習事項を男女別にご紹介しましょう。


①ヘカチ(男の子)の遊びと学習事項

・アカムカチュ(輪突き遊び。輪を放り投げて矢や槍で貫く)
・アッシュノ(弓遊び)
・トゥシエテルケ(縄跳び)
→これらの遊びから狩りでの身のこなしを学んだ。

・早口言葉遊び
→チャランケ(談判、裁判)の訓練になった。

・その他学習事項：狩り、魚獲り、家の造作、先祖供養、礼儀作法、神事、伝説などの知識　など。


②マッカチ(女の子)の遊びと学習事項

・オタテント(砂浜でのお絵かき遊び)
→刺繍のデザインの知識を学ぶ。

・その他学習事項：織物、刺繍、裁縫、料理、ゴザ編み、山菜採り
・ユカﾗやウエペケレなどの口承文芸


こうした遊びや学習を経て、男子であれば10代後半、女子は初潮を迎えた頃から服装や髪形を改め、オッカイ(青年)、メノコ(成人女性)となりました。


オッカイ、メノコになると、次のような変化があります。

・男子：褌を締め、髪型を整える。
・女子：女系の身内から授かったウプソルクッ(守り紐、貞操帯)を締め、口の周りや手首に刺青を入れる。

アイヌの結婚形態

成人した男女はやがて結婚に至りますが、アイヌの伝統的な婚姻には様々な形がありました。その中から恋愛結婚と許嫁について、それぞれの特徴をご紹介しましょう。


①恋愛結婚
・地域：北海道南西部、白老か日高地方に多い。
・方法：娘が年頃を迎えると、家の南側にトウンプ(娘の部屋)を増築。そこに訪ねて来る若者と恋仲になり、結婚。

娘の部屋を訪ねた若者は、娘と贈り物をし合って交流を深めていくのが習わしでした。贈り物に選ばれたのは次のような品々です。

・男性→女性：手製のメノコマキリ(女持ちの小刀)の鞘、ケモップ(針入れ)、機織り具、自分のニンカリ(イヤリング)の片側
・女性→男性：手製のコンチ(頭巾)、マタンプｼ(鉢巻)、着物


しかしどんなに当人たちが愛し合っていたとしても、以下のような場合には結婚が認められなかったり、好まれなかったりしています。


・近親婚にあたる場合→結婚不可。
・特定の家系(イペサクﾙ(狩り下手)・ポニタク(呪いの言葉)を知る家系など)との婚姻→好まれない。


②許嫁
許嫁とは、子どもが幼いうちから親同士で結婚の約束を取り決めるという方法です(後に解消される場合もあります)。

・地域：北海道全域にみられる。
・方法：幼少のうちから親同士が相談し、結婚相手として決める。成人後、互いに贈り物を交わした上で結婚。

この方法では予め親同士が相談しているため、恋愛結婚のように、当人たちの気持ちが盛り上がってから実は結婚できない関係だった(近親婚など)と発覚するということはありません。

アイヌの伝統的な結婚式

最後にアイヌの伝統的な結婚式のやり方をご紹介しましょう。


【結婚装束】
・新郎：刺繍の入った着物を着て、頭にサパンペ(冠)をつける。
・新婦：上等の着物を着て、頭にマタンプシ(刺繍入り鉢巻)を巻き、首にタマサイ(ネックレス)を下げる。

【結婚式の流れ】
①花嫁が炊いた飯を椀に高く盛って花婿に差し出す。
②花婿はそれを半分食べ、花嫁に返す。
③花嫁が残りの飯を食べる。


アイヌの結婚式は、一杯の山盛り飯をふたりで分け合って食べるという素朴なものでした。

結婚した夫婦は実家の近くに分家を構えて暮らすことが一般的でした。夫婦どちらかの両親と同居するわけではないため、嫁姑問題のような争いは起こりにくかったといわれています。


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