日本には八百万(やおよろず)の神がいる、なんて言いますよね。実はインドのヒンドゥ教にもたくさんの神様がいるのをご存知ですか?
なかには、一目見たら忘れられないようなインパクトのある姿をした神様もいます。
この記事では、人間の体に象の頭をもつユーモラスな神「ガネーシャ」についてお話します。
目次
ガネーシャは1度死んでいる?
ガネーシャははじめから象の頭をしていたわけではありません。実は、
父親であるシヴァ神に一度頭を切り落とされ、代わりに象の頭を取り付けられたのです。
いったい何をしでかして頭を切り落とされたの? と思った人もいるかもしれませんが、ガネーシャはシヴァ神の怒りを買ったわけではなく、手違いによって切り落とされてしまいました。
事の顛末はこうです。
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ガネーシャはシヴァ神の妃であるパールヴァティーによって造り出されました。
シヴァ神には数多くの従者がついていましたが、夫と違って従者のいなかったパールヴァティーは自分のた従者を造り出すことを決意します。こうして生まれたのがガネーシャです。
ガネーシャを造るにあたり、パールヴァティーは夫であるシヴァ神に相談をしませんでした。実際に造る時も、シヴァ神が不在の時間を狙って行われています。これが後々に誤解を生むことになったのです。
ガネーシャを造る秘術は滞りなく行われ、無事に成功しました。シヴァ神が戻ってくる前に秘術を成功させたパールヴァティーは安心し、入浴準備にとりかかります。そして生まれたばかりのガネーシャにさっそく「入浴中は誰も家に入れないように」と命令を下したのです。
そこへ何も知らないシヴァ神が帰ってきました。ガネーシャは、パールヴァティーから言い渡された命令を遂行するためシヴァ神に襲い掛かります。
もちろん、シヴァ神もガネーシャもお互いのことを知りませんから、諍いのすえガネーシャの首は切り落とされてしまったのです。
事態を知ったパールヴァティーは嘆き悲しみました。そんな妻を哀れんで、シヴァ神はガネーシャの蘇生を約束します。
ああ、優しい夫じゃないかと思うかもしれません……しかし、家の前を偶然通りかかった象の頭を切り落としガネーシャにつけたのです。
さすが神様のやることは違いますね。
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月が満ち欠けるのはガネーシャの呪いが原因だった?
ガネーシャは象の頭をもつだけでなく、よく見ると右の牙だけ折れているのが分かります。実は、この右の牙にも面白いエピソードがあるのでご紹介しましょう。
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ある年の誕生日、ガネーシャはお腹いっぱいにお菓子を食べてパーティ会場から家へと帰っていたときのこと。空に浮かぶ月の光が照らす道の中をネズミに乗って走っていると、突然一匹のヘビが道を横切りました。
驚いたネズミは飛び上がり、乗っていたガネーシャは振り落とされてお腹が破裂してしまいました。ガネーシャのお腹にはパーティで食べたお菓子がたくさん詰まっており、破裂した拍子にお菓子も外へ飛び出してしまいます。
慌ててお菓子をお腹に詰めなおすと、ヘビを帯のように使って破裂したお腹を閉じました。そして再びネズミに乗って帰宅しようとすると、ガネーシャの耳に大きな笑い声が聞こえてきました。一部始終を見ていた月が笑っていたのです。
プライドを傷つけられたガネーシャは自分の右の牙を折って月に投げつけ、誰も月を見なくなるように呪いをかけます。この呪いに嘆いた月は、遂に蓮の花に隠れてしまいました。
ほかの神々はガネーシャの説得を試み、呪いは一定期間のみに限定されることになりました。こうして月は満ち欠けするようになったと言われています。
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