【アイヌ文様】
アイヌでは、写実的に造られた物には魂が宿り悪さをすると信じられていた。
そのため伝統的なアイヌの文化にリアルなモチーフの物はない。衣類や日用品はアイヌ文様として知られる幾何学文様で装飾される。
和人などの他民族との交易で手に入れた綿布を細長く切り、生地にアップリケを施す。その上からさらに刺繍で文様をアレンジしていくのだ。
【衣装】
アットゥシ
アイヌの民族衣装として最も有名な着物。ニレ科ニレ属の落葉高木であるオヒョウなどの樹皮から採った繊維で織られている。通常は生成色(ごく淡い灰色がかった黄色)だが、布地にハンノキの樹皮で染めた赤い糸や胡桃の樹皮で染めた青い糸を織り込んで縦縞をいれる工夫もされた。
仕上げに「アイヌ文様」と呼ばれる幾何学文様で装飾され、男女問わず大人から子供まで身に着ける。
レタルペ
モセ(イラクサ)の皮の繊維で織られた光沢のある布地。レタルペは白い物という意味である。
ユクウル(鹿の毛皮)
防寒具としてアットゥシの上から羽織る。しかし、狩りのときは仲間からの誤射を防ぐため鹿以外の皮を着た。
【装身具】
ニンカリ
男女ともに耳に穴を空け、金属製の大きく丸いイヤリングを装着する。女性の場合はニンカリと共に、布地に古銭を飾りつけたレクトゥンペ(チョーカー)や刺繍で飾ったマタンプシを頭に身に着けた。
タマサイ
女性の装身具。ガラス玉を連ねた大型のネックレス。シトキと呼ばれる金属板が綴じつけられている。
シトキには日本製の銅鏡が用いられることが多いが、大型で装飾のある金属板なら種類を問わない。
サパンペ
成人した男性が儀礼に参加するときは、和人との交易で得た陣羽織を身に着け、エムシ(宝刀)を帯び、サパンペという頭飾りを被った。
サパンペはイナウ(木で作られた祭具)の削り花キケをまとめた物で、額の部分には一族の象徴とされる動物を模した像を取り付ける。
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