【魔術子の 出張タロット占いの館】相談者：ぱん太

私は魔術子。
オカルトショップで働く魔術人形。
普段は主に魔術の研究をしているわ。

パンタポルタさんの依頼で占いをすることになったけれど、正直、タロットも占いも初めてなのでとても困惑しているの。
でも、きっと大丈夫。
だって、魔術には不可能なことなんてないんですもの。

ところで、私が働いているお店では、たくさんのタロットを扱っているのよ。
たくさんあり過ぎて、魔術子には違いがさっぱりわからないの。
でも、今日は店長が私のためにカードを選んでくれたから大丈夫。
「これしかない」って言ってたから、つまり、このカード以外には考えられない！
ていう意味よ、きっと。


それでは、早速始めましょう。
今日の相談は何かしら？




どうなりますか……って、大雑把な質問ね。
いいわ、その雑な質問に、私がきめ細かい御神託を下してさしあげるわ。
タロット鑑定士、魔術子の誕生よ！

今回の相談には商業と通信にまつわる神、ヘルメスの力を借りましょう。
ヘルメスに照応する水星の魔術数は８。
だから、まずカードを８回シャッフルするわ。

シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカッ、
シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカッ、

これで１ターン。

これを８回繰り返して、合計６４シャッフル。
さらに念を入れるなら、それを１ターンとして計８回、
すなわち、８×８×８＝合計５１２シャッフルすれば完璧ね。
いくわよ。

シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカッ、
シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカッ、
シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカッ、
シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカッ、

…………。

思ったより時間がかかるわね。
もっと速くシャッフルしなくちゃ。

シャシャシャシャシャシャシャシャッ！

シャシャシャシャシャシャシャシャッ！

シャシャシャシャシャシャシャシャッ！

シュイーーーーーーーーーーーン！
（高速で回転するカードが放つ振動音）

シュシュシュシュシュシュ、ツルッ……あっ！

…………。

カードが飛んでっちゃった……。

まぁ、いいわ。
きっと、この手元に残った一枚のカードがヘルメスのご神託なのだわ。
今回はこのカードで占うことにしましょう。


“ドミヌス　オルビス　テラールム
　我は汝、汝は我なり。
　万物を貫く蜜蝋の力を以て、
　我らの前にその型を示せ。　
　ショウ　ミー　ザ　フォーチューン！”


ペシッ！（カードを叩きつける音）


ふぅ、
なるほど、これは大アルカナの四番、皇帝のカードね。

ぱん太くん、
ずばり、パンタポルタの未来はこのおじさん次第ね。

……え？
おじさんって、誰かって？

それは私にはわからないわ。
あなたの近く、或いはパンタポルタに関わる人物の中に、このおじさんそっくりの人がいるはずよ。
社長かもしれないし、社員かもしれないし、作家さんかもしれないし、ビルの清掃員かもしれない。
それが誰であれ、その人物が鍵を握っているのよ。

……え？
そんな人、いないって？

いいえ、いるはずよ。　　
火水風地の四大元素説を提唱したエンペドクレスはこんなことを言っているわ。

いつも同じ瓦の上で寝る犬は、
「瓦と同じものを、その犬が有している」からなのですって。

つまり、見た目は全然違っても、本質は非常に似通っている、ということがあるということなのよ。
だから、見た目がこのカードのようなおじさんじゃなくっても、このおじさんと入れ替えてみて、違和感のない人物はいないかしら？
ひょっとしたら、人物じゃなくて天井とかゴミ箱かもしれないわね。
さぁ、おじさんの顔を知ってる人たちと入れ替えて想像してみて。


…………。


いた？

フフフ、もうわかったわね。


そう、この皇帝はぱん太くん、あなた自身のことよ。


運命の行き先を決めるのは、いつだってあなた自身。
パンタポルタを発展させるのも、終わらせるのも、ぱん太君次第というわけね。

今こそ、ボストンバッグにダイナマイトを詰め込んで旅立つ時よ。
輝かしい、パンタポルタの未来のために。


……あら、風がざわついてきたわ。
そろそろ時間のようね。

それじゃあ、またどこかで会えるといいわね。


”シー　ユー　ネクスト　フォーチューン！”



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