思い返せば、第1回モーニングスター大賞開催中の一昨年の夏、モーニングスターブックスツイッターアカウントのフォロワー様から「受賞者に記念品があれば面白いのでは」とアイディアをいただきました。
そして始まった受賞記念モーニングスター型トロフィーの製作。プロトタイプとして2台製作し、これらは第4回ネット小説大賞を受賞された『成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです』の時野洋輔先生と『魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ』の伏(龍)先生に贈呈させていただきました。
そして、第1回モーニングスター大賞と第5回ネット小説大賞、両賞受賞者の皆様用に、ちょっとずつ製作を進めていたのですが、第2回モーニングスター大賞が始まるなど、日々の業務に追われ、製作が遅れに遅れてしまいました。
受賞者の皆様にトロフィーをお渡しできたのがつい先日、2018年3月も終わろうかという頃です。すでに第2回モーニングスター大賞も終了し、第1回受賞作のなかには完結した作品も出ている時分です。祭の後に勢い込んで駆けつけてしまったようなタイミングの悪さを感じてしまいます。思えば昔から夏休みの宿題を9月半ばにようやく提出するような人間でした。
なんとか皆様にトロフィーをお届けできたことですし、せっかくですので、その製作過程をまとめてみました。動画でも記録しておりますので、文章と合わせてお楽しみいただければと思います。
製作の流れは動画でも分かりますので、本レポートでは使用した機材の説明も交えてお伝えしますね。
モーニングスター型トロフィーの製作過程
モーニングスターの特徴と言えば球形の打突部に突き出たトゲ。トゲを削り出すのに使用したのは、フィンランドのナイフメーカーAhti(アハチ)のKorpiというモデルです。刃の長さが8センチ弱の比較的小ぶりなナイフですが、細工物には取り回しが良く、今回も活躍してくれました。さすが森林大国フィンランドのメーカー。木工にも向いています。
トゲや柄となる木棒をカットするのに使用したのが、ピラニアソーとガイド。以前はごく普通の木工のこぎり(ゼットソー)を使っていたのですが、この組み合わせで工作精度がだいぶ上がりました。適当にカットしたパーツだと、のちのち修正が必要になり、かえって難儀します。
木球に柄を取り付ける穴を開ける作業用に万力を導入しました。これまではレンガとレンガの間に球を挟んで足で押さえつけながら作業していたのですが、格段に効率がアップしました。電動ドリルは以前から所有していたものです。組み立て家具のネジ回しなどでも頻繁に使うので、電動ドリルは日本中一家に一台レベルで皆持っていた方がよいと思っています。
前回まではごく普通のペンキ缶スプレーで塗装していたのですが、今回エアブラシを導入しています。エアブラシは会社のロッカーに眠っていたものを拝借しました。新紀元社はプラモデルの本もたくさん出しているので、こういった工具もあったりします。ただエアを吹き出すコンプレッサーは社内にもなく、代替にエア缶を使用しました。
このエア缶なのですが、吹き出すエア圧が安定せず苦労させられました。吹き続けると気化熱の原理で缶が冷えて圧が低くなっていき塗料の出が悪くなってきます。脇の下に挟んだり、お腹の中に入れたりしててしばらく暖めると復活するのですが、今度は逆に圧が高くなりすぎ塗料がベチャっと吹き出てしまって……。そうなると最初から塗り直しです。コンプレッサー導入を真剣に考えてしまいました。金額的な壁のために断念しましたが。
塗料は下地としてつやありの黒を吹き、その上からゴールドを吹いています。シルバーの上からクリアイエロー2に対してクリアオレンジ1の割合で混色したものを吹いて金色を再現する手法も試してみました。エアの問題でムラが出てしまい上手くいったのは1本だけ。この貴重な1本は第1回モーニングスター大賞大賞受賞作『勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした』作者の灯台先生にお贈りしました。
トロフィーを飾る台はホームセンターに売っている既製品をこげ茶に塗ってアンティークっぽい雰囲気にしてみました。地が白木だったので、こげ茶のステインを布で塗り込み、乾燥後にクリアラッカーで表面を保護しています。
ネームプレートは真鍮の板に文字を白黒反転させたものを転写して、それを腐食液に浸けて作ります。残念ながらその製作課程は動画も写真も撮っていないので、また機会がありましたらレポートしますね。
プレートを瞬間接着剤で台に固定し、モーニングスターを乗せれば完成です。
プロトタイプから数えると、計8つのモーニングスターを作ったことになります。徐々に腕前があがり、出来映えがよくなっていきました。いったい自分の職業はなんなのか、アイデンティティーの危機を覚えます。一年半で8つもモーニングスターを作る職人が日本に何人いるのでしょうか? 他社の小説コンテスト運営担当がいったい弊社をどんな目で見ているのか気になります。
ただお贈りした受賞者の皆様に喜んでいただけたのなら幸いです。数年後にゴミに出されていたらどうしましょう。
◎おすすめ記事
【レポート】「2017年 第2回STEEL! リーグマッチ公式戦 」
武器や甲冑だけじゃない! 中世の職人が製作したものとは