「東雲先生!」
「そういうあなたは新紀元社の重岡女史! 前回僕の懇願をなにひとつ聞き入れてくれなかった血も涙もない重岡女史!」
「あ、はい、その節はどうも……」
「必要な時には助言してくれなかった癖に校正の段階で『日本神話なら活玉依媛(いくたまよりひめ)は蛇の神の子を妊娠していますよ』とか『道教にもユニークな神さまがたくさんいますよ』とかドヤ顔の朱入れしてきたことでおなじみの重岡女史」
「いえ、一応教えておくのが編集の仕事かなって……」
「あとポリネシア神話って単語に矢印で『モアナを思い出しますね!』って書いてあった。あんな自由な朱入れはじめて見たよ」
「えへへ」
いや褒めてねえし。
「ところで東雲先生、読者からの投稿が」
「あ、うん。いっぱい来てましたね、たくさん」
そうなのだ。連載開始と同時に公開されたメッセージフォームには実にたくさんの投稿が寄せられていた。それこそ、すべてに答えるのは相当頑張らなければ難しそうなくらい。
読者の皆様、本当にありがとうございます。
「ということで、せっかくのおたよりを一通でも多く取り上げるためにも、ここは単刀直入に!『東雲佑の読者だより』第二回、行きましょう!」
「はい!」
威勢良く言う編集に、元気よく返事をする作家。
でもなぁ。単刀直入にはいいけど、その方針のせいか今回地の文が少ないのが気になるなあ。これじゃ小説っていうかもう脚本だよ。ラジオドラマかなにかの。
ラジオドラマといえば、TokyoFM系列で日曜日の夕方に放送されている『あ、安部礼司』ってラジオ番組を読者の皆様はご存知だろうか。東京神田神保町にある架空の企業を舞台にしたコメディもののラジオドラマなのだけど、実はパンタポルタ を運営する新紀元社の所在地もまた神田……。
「……東雲先生」
「……はい」
「なにか思うところがあるのかもしれませんが、いまさら悪あがきはやめてください」
……だって地の文が少なかったんだもん。
まあいい。それじゃあ、気を取り直して。
「学ぼう!」
「学びましょう!」
そういうことになった。ちなみにここのやりとりは夢枕獏先生の『陰陽師』のパロディである。夢枕獏先生といえばつい先日自著の新聞広告を経費自分持ちで掲載したのが作家界隈では大変物議を醸……。
「悪あがきはやめてくださいって、言いましたよね?」
「……はい」
「二度目の注意ですね 。三度目はありませんよ?」
こえー。
∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞
ペンネーム『斉凛』さん
伝承の中で人と人外の恋愛のハッピーエンドってあるのでしょうか? 鶴の恩返しのように正体がばれて、別れていなくなってしまったり、人外は人間より寿命が長くて人間に先立たれたり、悲しい恋物語が多い気がするのですが。
伝承の中で人と人外の恋愛のハッピーエンドってあるのでしょうか? 鶴の恩返しのように正体がばれて、別れていなくなってしまったり、人外は人間より寿命が長くて人間に先立たれたり、悲しい恋物語が多い気がするのですが。
ペンネーム『アンザイ』さん
異類婚姻譚の中で、幸福な結末を迎える物語はありますか?
異類婚姻譚の中で、幸福な結末を迎える物語はありますか?
「ナイスチョイスです! 最初に取り上げるにはかなり良い質問だと思います!」
「そうでしょうともよ! 人は本能的にハッピーエンドを求めるのだ!」
とはいえ、この連載をはじめてからあらためて感じたのだけど、伝承や昔話としての異類婚姻譚は悲劇的な結末を迎えるものがやたら多い。どうしてそうなのかはファンタジー下級戦士の僕には知る由もないのだけど、それこそ8割がた、下手すれば9割は悲しい終わり方を迎えるのではなかろうか。
ちなみに、現代の創作ジャンルとしての異類婚姻譚では幸せな結末、ないしはずっと続いていく幸せな日常が描かれることが多いようだ。
てんで的外れだとはわかってるのだけど、そういう対比には『先祖の悲しい歴史の果てに子孫が幸せな今を築いている』というような印象があって、なんだかちょっと微笑ましさを感じてしまう。
現代の異類婚姻譚カップルよ、ご先祖様の分まで幸せになってね。
「感覚派作家らしい素敵な感受性ですね。それはともかく、早くハッピーエンドの異類婚姻譚伝承の話に入りましょうよ。今回の課題は『サクサク進行』ですからね」
「あ、はい……」
さて、ではここで新紀元社文庫の『幻想世界の住人たちⅣ』を見てみよう。日本の神話・伝承を扱った今巻の第三章に、次のようなエピソードが紹介されている(しっかり宣伝したから今回原稿料に色つけてくんないかなぁ)。
話の題は『狐を妻として子を生ましめる縁(はなし)』。
出典は『日本霊異記』、平安時代初期に書かれた本邦最古の説話集である。
美濃国(岐阜県)に住んでいたある男が、妻となるような女性を求めて旅に出ました。その旅の最中、人が住んでいるとは思われないような野原のなかでひとりの美しい女性と出会いました。男は一目でこの女が気に入り、家に連れて帰り妻にしました。それから二人の間には子供も生まれ幸せに暮らしていました。子供も少し大きくなり、男は子供のために子犬を飼ってやることにしました。ところが子犬は女を見ると吠え叫び、一向になつこうとしません。女のほうもおびえてばかりです。そんなある日、犬が女に咬みつこうとすると、女は驚いて狐の姿を現してしまいました。しかし、男は「私とお前の間には子供もある。これまで通りに暮らしなさい(帰つ寝)」といっていままで通り暮らし続けたので、さらに子供も生まれました。そして、この子の名前をきつね(岐都禰)と名付けました。
(新紀元社刊『幻想世界の住人たちⅣ』より抜粋)
「読者投稿の中に『日本一古い異類婚姻譚を知りたい』ってお題もあったけど、『きつね』の語源にもなっているこのお話は日本最古の異類婚姻譚だそうです。しかしこの旦那さん、よくぞ男を見せてくれたね! えらい!」
「最古のお話がハッピーエンドって素敵ですね! では、次のお題です!」
ほんとにサクサク行くなぁ……。
ペンネーム『segaga』さん
結婚と言えば子ども、生まれた子どもたちはどのように育つのかが気になります。
結婚と言えば子ども、生まれた子どもたちはどのように育つのかが気になります。
ペンネーム『ツミレ』さん
第一回でもチラっと触れていたと思いますが、陰陽師の安倍晴明と葛葉みたいな異類婚姻譚の末に生まれた子どもが活躍する話が好きです。そういうお話をもっと集めて、どんな素質が子どもに受け継がれるのか系統だてて見てみたいです。
第一回でもチラっと触れていたと思いますが、陰陽師の安倍晴明と葛葉みたいな異類婚姻譚の末に生まれた子どもが活躍する話が好きです。そういうお話をもっと集めて、どんな素質が子どもに受け継がれるのか系統だてて見てみたいです。
ペンネーム『おがわ』さん
異類婚姻により生まれた子供はどんな存在になるんでしょうか? 人間なのか人外なのか……。
異類婚姻により生まれた子供はどんな存在になるんでしょうか? 人間なのか人外なのか……。
「これはもう私たちオタクにはたまらないファクターですよね。特別な血統、特別な能力、覚醒……」
重岡女史がなんだかウットリしている。薄々わかっちゃいたけど、やっぱりこの女筋金入りである。
さて、サブカル界隈ではいかにもおなじみの『半人』要素だけど、神話や伝承の中でも枚挙にいとまがない。神と人とのハーフならギルガメッシュやヘラクレス、雄牛を親に持つミノタウロスに、吸血鬼と人との間に生まれるとされるダンピール。意外なところでは酒呑童子を八岐大蛇と人間の娘の間にできた子供だとする話もあるらしい(そういえばどっちも大酒飲みだ)。
「ただ、これらの話はそのほとんどが本人である子供に焦点を当てたものであって、子供たちの親には、つまり肝心の異類婚姻譚部分にはあんまり、というか全然注目してないっぽい。そういうのまで取り上げるのは、こう……」
「わかります。趣旨に反するというか、カテゴリーエラー感ありますよね」
わかってくれるか!
「はい。スマブラの新作に任天堂ハードで出てない作品のキャラ出すようなもんです!」
ごめん、その例えはちょっとよくわかんない。
とにかく、『作家と学ぶ異類婚姻譚』としては属性としての特殊な血統ではなく、あくまでも異類婚姻譚の中で生まれた子供たちのことを取り上げたい。
最初に紹介しておきたいのが、さっきひとつ 目のお題で取り上げたばかりの『狐を妻として子を生ましめる縁(はなし)』で生まれた二人の子供のこと。
この子たちについての描写には『この子は大変な力持ちで、足の速さも鳥の飛ぶようであった。』とあり、また『この子が今美濃国の狐直たちの先祖である。 』とも書かれている(狐直はきつねのあたいと読むらしい。狐直がなんなのかはちょっとよくわかんない)。
質問にも名前のあった安倍清明の親も狐とされてるけど、日本では古代から狐が神聖視されていた(それこそ神道に取り込まれる以前の精霊信仰の頃から)らしいこともあって、狐の子はかなり扱いがいい。
次に人と異類との子が『人として生まれてこない』話。
この文章が掲載されるのはまだギリギリ3月だと思うのだけど、4月から『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ第6期がはじまりますね(超楽しみ!)。
その鬼太郎に、毎度南方妖怪チームのリーダー格として登場するアカマタという妖怪がいるのを皆さんはご存知だろうか。南方妖怪たちは鬼太郎の敵として描かれることが多いのだけど5期では味方になり、中でも5期アカマタは正々堂々としたすっげえいい奴で……。
いや、鬼太郎の話は違う。いま大事なのは伝承としてのアカマタだ。
アカマタは沖縄や奄美地方に実在する同名の蛇のマジムン(変化)であり、少年や美青年(赤い鉢巻をした姿だとされる)に化けて人間の娘に夜這いをかける。
話の流れとしては娘に近しい誰かがこの男の正体を見破るもの、さらに蛇の子を妊娠した娘に堕胎の方法を教えるものとがあるのだが、娘が出産に至る展開もある。その場合、アカマタの子を孕んだ娘は子蛇をごっそり大量に産み落とすそうな(産まれたのは子蛇が一匹だけだったという話もあるし、人間の子だったという話もある)。
「あ! 先生待って! ちょっと、ちょっとタイムです!」
「? わかった、ターイム」
「ええとですね。今回冒頭で朱入れのこと暴露してくださいましたけど、このアカマタの話、まさに朱入れで教えた活玉依媛(いくたまよりひめ)の神話の変形ですよこれ!」
「は? まじで?」
「はい、このまえ調べたばっかりですから間違いありません! 古事記では明言こそされていませんが、活玉依媛のもとに通ってくる男(その正体は大物主神なんですけど)には蛇体を思わせる描写があって、日本書紀にある同型の話でははっきり蛇ってされてるみたいです。で、この話を原型とした蛇婿話は日本中に分布してるんです!」
「あ、そ、そうなんだ……」
「うわー、これ私かなりドヤ顔していいやつですよね? あ、ちなみに活玉依媛が生んだ子供は櫛御方命(くしみかたのみこと)で、その子孫が大田田根子(おおたたねこ)。この大田田根子は厄病が流行した際に――」
「う、うっせえバーカ! なんだよ助手ポジションのくせに美味しいとこ持ってきやがって、なにが蛇婿話だよ! そしたらこっちはお嫁さんの方が蛇の場合のお話で対抗してやるよ!」
律儀で正直だが嫁の来手がない男のところに、ある日お姫さまのように美しい女がやってきて一緒に暮らしはじめる。やがて玉のような男の子が生まれ夫婦はますます幸せに暮らしていたが、ある日女房が突然姿を消してしまう。
男は村の和尚に相談して妻の残した謎かけを解き、とうとうある池に辿り着く。池には大蛇がおり、それが男の妻の本性だった。
男の必死の懇願や和尚の説得の甲斐もなく、結局妻がもう一度人間の姿になって男の元に帰るということはなかった。最後に「なにか印を残してほしい」という男に、蛇女房は「これで遊ばせればあの子は泣かないから」と自分の片目をくり抜いて渡した。
母を恋しがる子もこの目玉で遊ばせておくと不思議と泣かなかったが、一年経ち二年経つうちにまた泣き出すようになった。男がもう一度件の池に出かけていくと、女房は「私はもう目が見えなくとも一人で生きていけるから」と、もう片方の目もくり抜いて渡した。
やがて成長した子供は和尚に手習いを教わるようになるが、一を教えれば十を憶えるような只ならぬ利発さを発揮した。これは百姓や炭焼きにしておくには惜しい子であると、和尚の世話により寺に預けられることとなった。
小僧となった子供が鐘をつくたびに、目の見えない母はじっと聞き入るという話である。
男は村の和尚に相談して妻の残した謎かけを解き、とうとうある池に辿り着く。池には大蛇がおり、それが男の妻の本性だった。
男の必死の懇願や和尚の説得の甲斐もなく、結局妻がもう一度人間の姿になって男の元に帰るということはなかった。最後に「なにか印を残してほしい」という男に、蛇女房は「これで遊ばせればあの子は泣かないから」と自分の片目をくり抜いて渡した。
母を恋しがる子もこの目玉で遊ばせておくと不思議と泣かなかったが、一年経ち二年経つうちにまた泣き出すようになった。男がもう一度件の池に出かけていくと、女房は「私はもう目が見えなくとも一人で生きていけるから」と、もう片方の目もくり抜いて渡した。
やがて成長した子供は和尚に手習いを教わるようになるが、一を教えれば十を憶えるような只ならぬ利発さを発揮した。これは百姓や炭焼きにしておくには惜しい子であると、和尚の世話により寺に預けられることとなった。
小僧となった子供が鐘をつくたびに、目の見えない母はじっと聞き入るという話である。
「話の中では特に言及されてないけれど、この話の子供の利口さもまた尋常ならざる出生に関係しているのかもしれない。
とはいえ、この話は伝承としてはかなり形が整っているので、オリジナルとなる民話をアレンジした後世の創作なんじゃないかなぁとも思う。当然、時代が下るほどに物語というのは洗練の度合いを増す。千夜一夜物語の中でもとりわけ完成度の高いアラジンやアリババの話なんかは、9世紀に成立したとされる初期千夜一夜物語とは実はまったくの無関係だったりする。ちなみに……」
「東雲先生、さっき手柄を独占しちゃったことは謝ってあげますから、そうやって露骨に尊敬されようとするのはやめましょ……見苦しいですよう、かえってカッコ悪いですよう……」
「それだけ正確に僕の意図を理解しててなんで背中から撃つような真似すんだよ! あと謝ってやるってなんだよ全然謝意を感じねーよ謝意をよ!」
「あ、子供の為に母が目玉を残すのは蛇嫁譚の基本形ですし、その結果盲目となった蛇が鐘を鳴らして欲しいって頼むのも定番ですね!」
……また美味しいとこ取られた。もうやだこの担当。
*****
「えー、紹介しきれなかったけど、他にも鬼の父と人間の母との間に生まれた『鬼の子小綱』の話とかも見つけました。半人半鬼のこの子は生まれながらに食人衝動を持っていて、他の子を襲った咎で刻み殺されたり、あるいは自分から殺してくれって懇願したりする。どちらにしても悲しいね」
「生まれてきた時代を間違えましたね。鬼とのハーフなんて、ラノベだったら絶対主人公になれる素質なのに。ダブルブリッドの優樹ですとか」
「あ、はい……それから伝承ではなく創作になっちゃうけど、小泉八雲(『はちうん』じゃなくて『やくも』だよ)の『雪女』でも、主人公の箕吉は雪女との間に十人もの子供をもうけてる。誰にも話すなという禁を破った箕吉に対して、雪女は『あなたは責任ある父、殺すことはできません。しかし子供を不幸にするようなことがあったら……』と言い残して姿を消す。この場合、子供の存在は父親の命を救ったと同時に、一種の呪いにもなっちゃってる」
「雪女とのハーフといえば、地獄先生ぬ~べ~NEOではぬ~べ~とゆきめの息子のゆきべ~が再登場してますよね。霊能力者と雪妖のハイブリッド能力者っていう美味しいキャラになってます」
「お、おう。あとこれは異類婚姻譚とはまったく関係ないんだけど、このお題のための調べ物をするうちに、人間の妊婦さんが妖怪を出産する『産怪』という概念があるのも知りました。興味がある人は調べてみてね。
さて! お時間というか文字数もかなりギリギリですし、今回はこんなところで切り上げましょう!」
「……」
「……あの、重岡さん?」
「…………ディズィー(※1)……あ、それにヴィクトリカ(※2)も……うふ、うふふふふふふ……」
うわあ、こいつマジモンだ。
∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞
「学んだー!」
「学んだー!」
ああ、今回は本当にすごく学んだ気がする。コーナーはじまって以来の達成感と読者との一体感を感じる。 風が吹いてきてる。
だから、助手役の癖に作家を差し置いて博識ぶりをアピールしてたあざとい重岡女史のこととか、全っ然怒ってない。強い男は女を責めないし、賢い作家は編集と喧嘩しないのである。
ところで、ひとつ目のお題の最後に重岡女史が『最古の異類婚姻譚がハッピーエンドだなんて素敵ですね!』みたいなことを言ったのを、読者の皆様は覚えておいでだろうか?
そのときふと気づいたというか、考えたことがある。
ちょっと前にツイッターで『なんで異類婚姻譚は悲劇的な結末が多いんだろう?』って呟いた時に寄せられたご意見やご情報の中に(読者の皆様、ツイッターでもありがとうございます!)、次のようなものがあったのだ。
『異類婚姻譚の結末にバッドエンドが増えはじめたのには、良くも悪くも宗教の発達が関係しているとの考察もあります』
日本最古の異類婚姻譚がハッピーエンドなのは、宗教がまだ未発達だったからなんだろうか?(重岡注:日本霊異記は仏教説話集ですよ!)
さらにつっこんで考えると、現代日本でハッピーエンドの異類婚姻譚作品が多いのは、宗教が力を失いはじめてるから?
「いや、さすがにこれは論理が飛躍しすぎか」
僕はそう呟いて考えを打ち切ると、意味もなく深い息をついて天井を仰いだ。
……よし、最後にかなり作家ぽさを醸し出したぞ。セーフ、作家セーフ。
「あ、東雲先生」
僕が最後の最後でようやくいい気分に浸っていると、重岡女史が空気も読まずに話しかけてきた。
「……あんだよ?」
今回かなり恨みがあるので声にやさぐれ感が出てしまったが、それでもちゃんと返事をしてあげるジェントルな僕である。
「読者様からの投稿、ほんとにたくさんきましたよね」
「うん」
「ありがたいですよね!」
「うん」
「だからできるだけ一通でも多く ご紹介したいですよね!」
「まぁ、うん」
「ですよねですよね! ということで、最後に私からも読者メッセージを紹介して終わりたいと思います!」
ペンネーム『しゅん』さん
重岡さん東雲先生の文章読みたいからもっと尻叩いて書かせて!オナシャス!
重岡さん東雲先生の文章読みたいからもっと尻叩いて書かせて!オナシャス!
いやいやいや。いやいやいや。
「いやいやいやいやいや。だってもう十分書いてるでしょ?」
「でも『もっと』って書いてありますよ。もっとって言ったら、それは今よりも『もっと』ってことでしょう」
もっと、モット、MOTTO。
「……無理。死んじゃう。だってこれ最初は隔週って話だったんだよ?」
泣きそうになりながらガクブルの僕に対して、大丈夫です、21世紀の日本で人はそう簡単に死にません、と重岡女史は言った。いったいなにがどう大丈夫なのか。
「とりあえずいきなり週二回は難しいでしょうし、まずは二週間に三回とかからはじめましょうか。……先生? 東雲先生?」
読者よ、親愛なる読み手よ。
お願いします。これを見たら『東雲先生を大事にしてあげてください!』的なメッセージを重岡さんに送ってください。急いで。僕が死んじゃう前に。
※1
格闘ゲーム「GUILTY GEAR」シリーズに登場する少女のこと。生体兵器であるギアと人間との間に生まれた。彼女を守る左右の翼「ネクロ」「ウンディーネ」の造形が素晴らしく、アルターから発売されたフィギュアはディズィーの魅力を余すところなく再現していると思います!
※2
ビスクドールと見紛うほどの美しい容姿をした少女。桜庭一樹先生の『GOSICK』シリーズ(角川ビーンズ文庫)に登場する。可愛いだけでなく「知恵の泉」と称する天才的な頭脳をもつ。灰色狼の一族であった母が人間によって無理やり身篭らされ、ヴィクトリカが誕生した。
※
本文中の重岡女史の台詞だが僕にはなにを言ってるのかさっぱりわからなかったので、今回の注釈は責任持って彼女に書いていただいた。これを読んでさらにご理解頂けたと思うのだが、彼女は実に筋金入りなのである(この期に及んでまだフィギュアの話とかしだすとは……)。
せっかく重岡さんが趣味の話をする流れを作ってくれたので、最後に僕も『俺の屍を越えてゆけ』というRPGをご紹介したい。短命と種絶の呪いをかけられ子孫を残すことができなくなった一族が、人ではなく神と交わって血を繋ぎ宿敵撃破を目指す内容の作品である。人間ダビスタとも呼ばれるかなり業の深い作品だが、今回のお題的に是非言及しておきたかったのだ。滑り込みセーフ!
*作者紹介*
東雲佑(しののめ たすく)。幻想小説を得意としている。第3回なろうコンの拾いあげ作品『図書館ドラゴンは火を吹かない』が宝島社より発売中。
第2回モーニングスター大賞では『雑種の少女の物語』が最終選考まで残り、社長賞を受賞。ちなみに、第1話の作中に登場する「先日のエッセイ」とは『名前の中のストーリー』のこと。
東雲佑(しののめ たすく)。幻想小説を得意としている。第3回なろうコンの拾いあげ作品『図書館ドラゴンは火を吹かない』が宝島社より発売中。
第2回モーニングスター大賞では『雑種の少女の物語』が最終選考まで残り、社長賞を受賞。ちなみに、第1話の作中に登場する「先日のエッセイ」とは『名前の中のストーリー』のこと。
『作家と学ぶ異類婚姻譚』
第1話
読者だより①
第2話