現代でも、サーカスや大道芸で大人気 の道化師(ピエロ)。ひょうきんな動きや奇妙な仕草で、人々を笑わせることを職業にしています。
彼らは中世の頃にはすでに存在し、主に王様や領主たちを楽しませてきました。
今回は、『図解 中世の生活』(池上正太 著)を参考に、当時の「道化師」の役割をご紹介します。
目次
道化師は王様を馬鹿にしても許される職業だった⁉
中世の道化師も現代と変わらず、こっけいな仕草や奇妙な発言で人々を笑わせることを生業としています。中世では、生まれつきハンディキャップのある人を王や領主が従者として雇い、王や王の周囲の人物を笑わせることを職業とする宮廷道化師と、彼らの仕草や言動を真似して披露する職業道化師が存在していました。
道化師は左右対称に異なる色の服を着て、ロバの耳と鈴のついた頭巾をかぶり、牛の膀胱などをつけた杖を持ち、腰に木でできた剣や鞭を挿した姿が一般的だったとされています。
舞台や映画に登場するピエロも、カラフルな衣装と先端にポンポンなどのワンポイントがついた特徴的な帽子に身を包み、フラフープやボールなどの小道具を持った姿をしていることが多いので、想像しやすいのではないでしょうか。
中世当時の道化師は社会的な身分が低く、職業自体を周囲の人間から笑われることの多い存在でした。
しかし、娯楽を提供することが仕事だった彼らは、人々を楽しませるために使う言葉と仕草に関しては、自由に扱うことができました。
その一例として、道化師は愚か者であるという建前で、王様相手でも無礼な発言や批判をして笑いを取ることが許されていたのです。
度が過ぎれば罰を受けることもありましたが、時として王を嘲り笑うことで、周囲の人間を笑わせていました。
しかし、宮廷道化師の無垢な姿を真似し、下品な芸で人々を笑わせていた職業道化師については、教会から悪徳の存在とされていました。
諸国を放浪して芸を見せていた旅芸人が定住しないことで猜疑の目で見られていたように、娯楽を提供するにも少し肩身の狭い思いをすることも少なくはなかったようです。
現代の道化師も、不安定なボールの上に乗ってポーズを取ったり、刃物をジャグリングしたりと、見ていてこちらがドキドキすることがありますよね。
このように道化師がリスクのある行為で人々を笑わせているのは、中世の時代に、罰を受ける覚悟で笑いを取っていた芸人としての気概からきているのかもしれません。
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