小説や映画に出てくる吸血鬼は、よくニンニクや十字架を苦手としていますよね。しかしこれらは苦手というだけで、吸血鬼を退治するまでの力はありません。ではどのようにすれば、吸血鬼を退治することができるのでしょうか。
『図解 吸血鬼』(森瀬繚/静川龍宗 著)には、吸血鬼の特徴や世界各地の吸血鬼などが紹介されています。今回はその中から、吸血鬼を退治するための弱点についてお話します。
目次
吸血鬼の弱点①‐吸血鬼の苦手とするもの
ニンニクや十字架は、確かに吸血鬼が苦手としているものです。これは吸血鬼だけではなく、ギリシア神話に出てくる吸血怪物ラミアの弱点にも共通しています。もともと刺激臭を放つ植物には、悪霊や魔物を寄せ付けない魔除けの効果があると信じられていました。特にニンニクは殺菌作用もあることから魔除けの中でも強い力があると考えられており、今でも東欧の一部の地域では、軒先にニンニクの束をぶらさげている民家が見られるほどです。また吸血鬼は、強い信仰で支えられているカトリックの聖具も苦手にしています。これが、「吸血鬼は十字架が苦手」というキャラクター像に繋がっているのでしょう。じつはカトリックの聖具ならば、十字架に限らずメダルなども同様に吸血鬼の弱点になります。高位の司祭が聖別した聖餅や聖水になれば、吸血鬼の不滅の肉体に火傷を負わせるほどの威力を持ちます。
他には野薔薇の蔓や芥子の種のように、鋭く尖った部分のある植物にも魔除けの効果があると考えられていました。このような植物を単独で使う場合もありますが、棘のある野薔薇で十字架を作るといった、魔除けの相乗効果を狙うこともあります。
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吸血鬼の弱点②-まずは吸血鬼の墓探しから
吸血鬼の苦手としているものを身につければ彼らを寄せ付けずに済みますが、本格的に吸血鬼を退治するためには、相応の準備が必要になります。まずやるべきなのは、吸血鬼の墓を探すことです。吸血鬼は基本的に、自分の埋葬された棺の中で眠ります。墓地に埋められている棺がすくなければ、手当たり次第探すことで見つけられるでしょう。しかし多くの棺がある場合は、このような総当りの手段を採ることは難しくなります。そんな時に利用されたのが白毛の馬です。
白毛の馬は吸血鬼のような魔物に敏感で、吸血鬼が潜む墓の近くでは暴れたり、後ろ足で立ち上がったりと強い反応を見せるのです。
こうして墓を見つけたあとは、トネリコや山査子の樹から削りだした長い杭を用意します。これは吸血鬼の心臓を貫き、大地につなぎとめておくためのものです。吸血鬼は肉体こそ不死ですが、魂まで不死というわけではありません。吸血鬼を退治するためには、肉体を弱らせることで、魂が離れやすい状態に持ち込むことが必要なのです。
もし条件に合うような長い杭が用意できない場合は、焼き殺すという方法もあります。その場合には、十字路や三叉路など道の分岐点となる場所で行われました。このような道の分かれ目は、あの世とこの世の境界に近いとされ、吸血鬼の肉体に縛り付けられた魂も離れやすくなるのだといいます。
その他にも、吸血鬼の頭と胴を切り離して埋葬する方法もあります。しかし強い再生能力をもつ吸血鬼の肉体は、頭部が首の近くにあるともとに戻ってしまう可能性があるため、切り離した頭部は足元に置かなければなりません。
吸血鬼の弱点③-さまざまな行動制限
不死といわれる吸血鬼ですが、じつは行動範囲に大きな制限を受けています。そのひとつが、太陽の光です。吸血鬼は太陽の光を忌み嫌うため、昼の間は棺の中に潜まなければなりません。使う棺にも条件があります。埋葬された墓地から離れた場所に潜む時には、棺の中に墓の土を入れて眠らなければならないのです。また夜間であっても、中から招かれない限り、吸血鬼は他人の家に入ることができないとされています。吸血鬼の被害者に生前顔見知りだった者が多いのは、こうした理由がありました。
その他にも流れる水を渡れないなど、吸血鬼ができることは意外と限られています。不死の存在だからといって、無尽蔵に人を襲うことは難しかったようですね。
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