ファンタジー世界でおなじみの存在・ゴーレム。もしゴーレムを作り使役できたら、人間の代わりに重い荷物を持たせたり作業を行わせるなど、日常生活も便利になりそうです。 そこで今回は『図解 錬金術』(草野 巧著)を参考に、ゴーレムの作り方や使役する上での注意点についてご紹介します。
目次
ゴーレムとは何か~胎児・人造人間・ロボット・番人~
ゴーレムを作る前に、まずはそもそもゴーレムとはどのようなものなのかご説明しましょう。「ゴーレム」とはヘブライ語で「作りかけの未定形のもの」「胎児」といった意味を持つ言葉です。『旧約聖書』「詩篇」には、「胎児であったわたしをあなたの目は見ておられた」という一文がありますが、この「胎児」とはゴーレムという単語の訳語です。
では「ゴーレム」とは何でしょうか?
ユダヤの神秘主義カバラでは、奥義に通じた義人は神のような創造力を持つと考えられていました。ゴーレムは、カバラの奥義に通じた義人がつくり出す人造人間で、いわばホムンクルスやロボットのような存在です。主人の命令に従い、自分の意思は持ちません。ゲームなどのファンタジー世界ではしばしば遺跡などの番人として登場しています。
ゴーレムを作った人間は、ゴーレムを使役して様々な作業を行わせることができます。
しかしいつもうまくいくとは限りません。中には使役に失敗しゴーレムを狂暴化させてしまったり、結果として命を落とすことになった人もいるのです。
そこで次項からはゴーレムの作り方に加え、使役する上での注意点についてもご説明しましょう。
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ゴーレムの作り方~ゴーレムを動かすのは魔法の言葉~
ゴーレムの作り方はいくつかあるといわれています。最も一般的な方法では、まず、ねばねばした土(泥)やにかわで人形を作ります。続いてできあがった人形の額または胸に、ヘブライ語でemeth(真理)を意味する文字を書いた護符を貼りつければ、ゴーレムの完成です。
ちなみに、できあがったゴーレムを元の土人形に戻したい時は、emethの最初の文字eを消せばよいとされています。methとは死を意味するヘブライ語だからです。
また、1915年にオーストリアの作家グスタフ・マイリンクによって書かれた小説『ゴーレム』では、土人形の歯の裏に魔法の数を書き込むことで、ゴーレムとして動き回るようになることが記されています。
このほか、土人形の口の中に護符を入れるとゴーレムになり、それを取り出すともとに戻るとか、床の上に横たえた土人形の周りを、カバラの定式呪文を唱えながら7周するとゴーレムになるともいわれる。 『図解 錬金術』p.54これらの作り方から共通して言えることは、ゴーレムとは元は土や泥でできた人形であり、これにカバラの魔法の言葉や数、護符などを加えることでゴーレムとして動き回れるようになるということです。
なお、ゲームや小説、映画などの創作物の中では、土や泥以外にも様々な素材でできたゴーレムが登場します。たとえば死体の肉でできたフレッシュ・ゴーレム、石でできたストーン・ゴーレム、鉄でできたアイアン・ゴーレムなど、皆さんもその名前を耳にしたことがあるかもしれませんね。
ゴーレムを使役する上での注意点
さて、このようにしてできあがったゴーレムを使役する時は、充分に注意を払わなければなりません。16~17世紀のプラハに住むユダヤ人ラビ(聖職者)のレーフは、ユダヤ教の安息日(金曜の日没から土曜の日没まで)にはゴーレムを働かせてはいけないという決まりのもと、自分で作ったゴーレムに家の中の細々とした仕事をさせていました。
ところがある日、彼は決まりのことを忘れ、ゴーレムの口から護符を抜かずに出かけてしまいます。すると彼の留守中にゴーレムは狂い、暴れ出してしまいました。市民からの通報で事態を知ったラビ・レーフは慌ててゴーレムの口の中から護符を取り出し、元の土人形へと戻すことができたといいます。
ほかにも、昼間しか動かしてはならないとか、家から出してはいけないなど、ゴーレムによって様々な制約・決まりが設けられていたようです。そうした決まりを破ったり、手入れを怠ったりすると、ゴーレムは途端に狂暴化して周囲のものを破壊し始めてしまいます。
ゴーレムを使役する時は決まりを守り、くれぐれも注意した方がよさそうです。
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