勇ましい武士の皆さん、こんにちは。時は戦国時代、これから合戦という皆さんにはいろいろな不安があるかと思います。
そこで、持ち物は? 食事は? ちょっと一息入れたいときは? ――などなど、皆さんの気になることを『図解 戦国武将』(池上良太 著)よりご紹介します。
目次
合戦中でも娯楽OK! 陣中生活、意外と楽しいです
陣とは、出兵した先に構築された臨時拠点のことです。この陣中生活、毎日ピリピリして気が休まらないだろうと今から憂鬱な方もいるかもしれません。
確かに、戦国時代の合戦は規模が大きく、長期化の傾向にあります。武将も兵士も陣に入れば長逗留は避けられません。
そのため、陣中には簡単な防衛設備や、宿泊施設が設けられます。商人なども出入りしますから、生活は思ったほど不便ではありません。戦国時代の陣の様子はさながら小さな町のようなのです。
さらに皆さんの杞憂を一気に吹き飛ばすお知らせがあります。
そうです、 娯楽が許されているのです。インドア派の人は本の持ち込みもできますし、能や狂言に熱中する人もいます。アウトドア派の人はスポーツを楽しんでいます。よく陣中で見かけるのは、相撲をとっていたり、狩りなどでストレスを発散している武将たちですね。
一応、お酒、ギャンブル、そしてあまり大きな声では言えませんが、女の人と仲良くすることも可能です。
ただし、お酒は作戦会議から酒宴に変わってしまう人たちも多いので、あまり飲み過ぎないように気をつけてください。
通常、合戦中には三日分の食料を持参しますが、それ以降は小分けにして支給されます。中には支給された米からお酒を造ってしまう人もいるので、それを避けるためにこのようなシステムになっているのです。
また、博打で丸裸にされて、支給された食料や武器、甲冑までなくなり、上司に泣きつく人もいます。
こういったことが重なり、軍によっては、軍法や軍規でギャンブルが禁止になっていることもあります。
戦国時代の合戦中は、明日命を落とすやもしれぬ――そう思って思い切り遊びたくなる気持ちもわかりますが、長期戦になる場合が多いのです。快適な生活を維持するために、モラルを忘れず、周りの人たちに迷惑をかけないようにしましょう。
合戦中の持ち物について――武将も自己管理です
持ち物は個人携帯が基本です。これは武将の方でも同じです。戦国時代中期以降になって「小荷駄(こにだ)」と呼ばれる輸送部隊も充実していますが、基本的には武装も食料も自分で管理してください。
多くの人は、「打違袋(うちがいぶくろ)」という細長い袋や「腰籠」に荷物を入れ、腰につけて持ち運びます。
武将の皆さんは馬に載せる方が多いです。
足軽は、食料や、こまごまとしたものを書き付ける紙、薬、消毒用の胡椒粒、小銭、鋏、筆、防寒用唐辛子、ほかにも水筒や、火薬などの濡らしてはいけないものを包む防水処理を施した紙、鼻紙、鋸、鎌などを持ち歩きます。
さて気になる食料ですが、以下のものが一般的です。
【食料】
・焼いて味噌や塩をまぶしたお握り
・焚いた後に乾かした乾し飯
・梅干し
・黒砂糖
・鰹節
・兵糧丸と呼ばれる非常食
これらは、打違袋に入れて腰につければ「腰兵糧」、一食分を一玉に捩って、肩からタスキ状にかければ「兵糧袋」と呼ばれています。
合戦中の刀、装備品の持ち運び方について
合戦では、食料や小物に加えて、武装も持ち運ばなければなりません。足軽の人は、武装は基本的にレンタルができますので安心してください。
冑はなく、お鍋にも使える「陣笠」が借りられます。他にも、敵と区別するために甲冑などにつける「合印(あいじるし)」、背中などに刺して使う「指物(さしもの)」なども持ち運びます。
武器は所属する隊によって異なりますが、長柄(ながす)隊に配属された人は槍を、弓隊に配属された人は弓と矢、鉄砲隊に配属された人は鉄砲と火薬を持ちます。
武将は、槍や馬と馬具、刀剣類、甲冑などを持ち運びます。甲冑は戦場までずっと身に付けている必要はありません。一部だけを身に付けて、あとは「鎧櫃(よろいびつ)」にしまっておきましょう。
この鎧櫃の中には、縁起物として春画を忍ばせる人もいますし、冑に「兜仏(かぶとぼとけ)」という小さな仏像を入れている人もいますよ。
ちなみに、刀については以下の種類があります。
【戦国時代の刀剣】
・太刀 (約80cm~150cm)
・打刀 (約40cm~80cm)
・腰刀 (それ以下)
「刀は武士の魂」とはよくいいますが、実際の合戦では刀を丁寧に扱う余裕はありません。基本的には、ひたすら叩きつける、鎧の隙間を狙って突き刺すといった戦い方が多いので、刀はまずは何より丈夫さが優先されます。
なお、太刀は刃を下向きにして腰につるし、打刀と腰刀は刃を上向きにして腰帯に差します。
打刀の短いものは「脇差」で、腰刀は鍔がない刀です。脇差は片手でとっさに抜いて使えますし、敵の首を落とすときなどにも使えますから、なくしたり、ましてや博打に負けて取り上げられたりしないように気をつけてください。
以上、戦国時代の合戦中の陣ライフについてのご案内でした。
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- etc...