日に日に寒さが増すこの時期、もうすぐ待ちに待ったイベントがやってきますね。そう、クリスマス! そんな聖夜に生まれたという逸話をもつ小さな花、クリスマスローズ。
またの名を「冬の貴婦人」とも呼ばれる神秘の花を、『花の神話』(奏寛博 著)よりご紹介します。
目次
貴婦人の裏の顔 クリスマスローズの隠れた本性
クリスマスローズという花をご存じでしょうか。茶道を嗜む方であれば「初雪おこし」や「寒芍薬」という和名の方に聞き覚えがあるかもしれませんね。
日本ではキンポウゲ科ヘレボルス属に分類されるものをまとめてクリスマスローズと呼称しますが、本来はその中でも、ニゲルという種類のものをクリスマスローズと呼びます。開花時期は12月から3月。ちょうどクリスマスの頃バラによく似た花を咲かせることから、この名前で呼ばれるようになりました。
日本で最も流通している種類の開花は4月頃ということもあって、クリスマスの花というイメージを持つ人は少ないのではないでしょうか。
ちなみにヘレボルス属のニゲルとは、ギリシア語では「死をもたらす黒」という意味です。クリスマスとはかけ離れた暗いイメージですよね。
その名の通り有毒で、古代ローマでは住民の生活水にクリスマスローズの根を浸けて弱らせたところを攻め込んだという逸話が残っています。
また薬として使うときは適量と最大量が決められており、子供や老人には与えないようにと厳しく管理されていました。
慢性的な足の痛風や関節の病気などに効くとされていますが、ヨーロッパでは躁鬱や精神不安定の際に使われたそうです。
この毒にも薬にもなる特性に由来して、「慰め」や「中毒」といった花言葉がつけられています。
ちなみにクリスマスローズの持つ毒は、空気に触れるとプロトアネモニンという物質に変化します。この物質が肌につくと、被れたり水疱ができたりしてしまいます。
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羊番の少女に授けられたクリスマスローズ
さてクリスマスローズの効能についてお話ししたところで、今度はクリスマスローズに秘められた伝説についてお話ししましょう。これは最初のクリスマスローズがどのようにして生まれたのかという伝説です。
昔々のお話し、イエス・キリストがクリスマスの夜に馬小屋で産み落とされたという話は有名でしょう。
イエスの生誕を天使が羊飼いの人々に伝えたところ、祝福のために数多くの人が贈り物を持参したそうです。しかし、ある貧しい羊番の少女はあげられるものがなく、何も持っていくことができませんでした。
そんな少女のもとに天使が舞い降りてきて、手にした百合を地面に向けて振りました。すると純白の花が咲き乱れ、少女はその花をイエスのもとへと届けたといわれています。
これが原初のクリスマスローズということですね。こうした伝説も相まって、クリスマスローズはイエス・キリスト降誕の象徴とされているそうです。
貴婦人に日傘は付き物、暑いのは嫌いでしてよ
毒に伝説と、私たちの生活とはいささか離れたお話が続きましたが、最後に身近なことをお話ししましょう。ずばり、クリスマスローズって育てやすいの? という疑問です。
先述の通りクリスマスローズは毒を持っており、育てる時はゴム手袋を着けるなど注意が必要です。
熱に弱い代わりに寒さには強く、氷点下15度という低温にも耐えられるため「うちは日当たりが悪いからなぁ」という家庭でも安心して育てられます。
日当たりの良い家庭でも、夏場に気を付ければ問題なく育てられるようです。
ただ寒さに強いといっても霜や霜柱で傷つくと弱ってしまいますので、対策はしっかりとしましょう。
専用の土がホームセンターなどで売られていますので、購入するのもひとつの手ですね。
ちなみにクリスマスに花を咲かせるのは原種の【ノイガー】という種類だけで、こちらはクリスマスローズと呼ぶことはありません。ノイガーに属するヘレボルスの総称がクリスマスローズです。
海外では別種として認識されていることもありますので、注意してくださいね。そしてやはり毒草ですので、小さい子供やペットの誤飲誤食には注意が必要です。
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本書で紹介している花の一例
- 蘭
- 椿
- スイセン
- スノードロップ
- 梅
- etc...
ライターからひとこと
クリスマスローズという花について家族や知人に聞いてみたところ「前は育てていたよ」という方が 何人かいたことに驚きました。しかし皆さん「俯きがちに咲くから地味で好きじゃない」という評価で、そうなのかなぁと調べてみると確かに俯いているんです。でも覗き込むようにしてみると、驚くほど整った顔立ちでした。花瓶にさすととても綺麗でしたので、一度試してみてはいかがでしょうか。