映画やドラマ、漫画などによく登場する戦国武将。彼らがどんなものを食べていたかご存知ですか?
『図解 戦国武将』(池上良太 著)では、戦国武将の日常生活や合戦の様子から当時の社会背景まで、武将をとりまく諸事情を総合的に解説しています。今回はその中から、戦国武将の食事についてご紹介します。
目次
ご飯は茶碗5杯分! 戦国武将の日常の食事
そもそも戦国武将たちは普段、どのようなものを食べていたのでしょう?戦国時代の食事は、基本的に午前8時と午後2時の1日2回でした。この他、午後9時頃に夜食を食べることもありますが頻度は稀で、夜遅くまで起きている時に限られます。 朝早くから城へ出仕する時などに弁当を持って行ったり、配下の家臣に食事をふるまうこともありました。
食事の内容は一汁一菜が基本でご飯の量が最も多く、1回の食事で2合5尺(今の茶碗5杯分)も食べていました。ご飯といっても白米ではなく、玄米や雑穀が中心です。これを蒸籠(せいろ)で蒸したものを強飯(こわいい)、現代のように炊いたものを姫飯(ひめいい)と呼びます。貧しい中級以下の武士などは雑炊にして食べることも多かったようです。
汁物は味噌汁や糠味噌汁、塩汁などで、食事を終える時にご飯にかけて一緒に食べます。 おかずは野菜や海草、蒲鉾や納豆などの加工食品、梅干し、漬物、鳥類や魚の肉などさまざまです。といっても豊富な種類のおかずを食べられるのは裕福な者に限られ、ほとんどおかずのない食事も多くみられました。
当時の武士たちは合戦や行軍、土木作業など体を動かすことが多かったため、濃い味付けが好まれました。味付けには塩、味噌、酢、ひしお(魚醤)などが使われています。
豪華絢爛 信長が家康のために作った食事とは
このように、戦国武将たちの食事は基本的に質素なものが多かったのですが、客人を招いての宴席となると途端に豪勢な内容となりました。特に大名の場合、豪華な食事で客をもてなすことは自らの権力を誇示することにもつながるため、食事の量や内容に気を遣っていたことが記録に残されています。本書では、織田信長が徳川家康をもてなした際に出された食事内容を紹介しています。 それによると、食事は本膳、二膳、三膳、四膳、五膳、そして御菓子という合計6膳に分けて提供されていました。
主な内容は、本膳は鯛の焼き物、なます、鮒鮨、二膳はうるか(塩辛)や鰻、三膳は焼き鳥や渡り蟹、四膳は巻するめや椎茸、五膳はまながつおの刺身にしょうが酢などです。この他、各膳にホヤ冷汁、鶴汁、鴨汁といった趣向を凝らした汁物などが添えられます。また、御菓子として羊皮餅、美濃柿、豆飴なども提供されました。
かなり豪華な内容ですが、これでも略式の膳で、本来は本膳の前に引き出物、酒と汁物が3回提供されたといいます。
質素だけど工夫あり 戦国武将の合戦中の食事
最後に、合戦中の食事内容をご紹介しましょう。合戦中の食事は普段とは大きく異なるものでした。
合戦の際は、大名から配下の武将や武士に対し、大量の白米や味噌などの高蛋白なおかずが振舞われます。食べ物にありつけるため、貧しい下級武士の中には子連れで参戦する者もいました。さらに出陣前には、酒や山海の珍味が振舞われることもありました。
武士たちは戦支度をする際、鎧兜などの装備の他に合戦に向けた陣中食(携行食)も用意します。これらの陣中食は腹に巻いたり腰にぶら下げるなどして持ち歩かれました。
陣中食の内容は地域によって様々で、作り方もバリエーションに富んでいます。その中から代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
・握り飯・乾飯
乾飯は米などの穀物を炊いた後で乾燥させたもので、水と一緒に食べたり、炒めたり茹でたりして食べられていました。
・兵糧丸(ひょうろうがん)
米や蕎麦粉、豆類、魚粉などを混ぜてよくこね、球状にまとめたものです。地域によって材料や味はかなり異なっており、また大名によっては製法を秘密としていたこともありました。
・味噌玉
焼き味噌を1食分ずつ球状に丸めるなどしたもので、お湯で溶けば即席の味噌汁になる他、そのままかじって食べることもできます。梅干しやワカメなどの海産物、野草や雑穀などを中に入れたものもありました。
・芋茎縄(いもがらなわ)
ズイキと呼ばれるサトイモの茎を味噌汁で煮しめて乾燥させ、縄状にしたものです。腰に巻きつけて運ぶことができ、普段は縄として使える上に、そのままかじって食べることもでき、ちぎって鍋に入れれば味噌汁にもなるというスグレモノでした。
他にも、武将たちは梅干しや餅類、干物など様々な食糧を合戦中に食べています。
普段の質素な食事と、もてなしのための豪華な食事、そして合戦中の陣中食。戦国武将たちの食生活は地域や場面によって実に様々だったのです。
本書で紹介している明日使える知識
- 戦国武将はどんな所に住んでいたのか?
- 戦国武将の名前の決まりとは?
- 合戦にはどれぐらいの費用がかかったのか?
- 戦国時代の交通手段
- 戦国時代を知るための資料2『甲陽軍鑑』
- etc...
ライターからひとこと
兵糧丸や味噌玉の中には、現代までレシピが伝わっているものもあるそうです。どんな味がするのか自分で作ってみるのも面白そうですね。本書では他にも、戦国武将たちが合戦に持って行った品々や、どんな1日を過ごしていたのかなどをイラスト入りで紹介しています。思わず「へえっ」と唸ってしまうネタもきっとありますよ!