11月の誕生石の代表といえば、トパーズです。
トパーズには青や黄金、ピンクなどさまざまな色がありますが、今回はその色の秘密やトパーズにまつわる伝説を、書籍『パワーストーン』(草野巧 著)よりご紹介いたします。
目次
11月の誕生石「トパーズ」――その色と出産地は?
みなさんはトパーズといえば何色を想像しますか?冒頭でも触れたように、青や黄金、ピンクなど、さまざまな色があるトパーズですが、和名では「黄玉」と書かれます。
その名から日本では黄色系のイメージが強くありますですが、本来のトパーズは無色透明で、流通する多くのものは放射線をあてる加熱処理によって、人工的に色をつけられています。
トパーズは主に、ブラジルやスリランカ、アフリカなどから産出されますが、実は日本でも産出されるのをご存じでしょうか。
一説によると、明治時代になって滋賀県で大きなトパーズが発見され、その中には青いトパーズがあったといいます。
「黄玉」というくらいですから、それまでは黄色いイメージがあったのでしょうが、以降日本でも、青いトパーズの存在が知れ渡ったと考えられています。
ちなみに天然のブルートパーズはごくごく薄い青色で、やはり現在流通するブルートパーズのほとんどが、色調処理されたものです。
さて、「トパーズ」という名前の由来ですが、一世紀のローマ人、プリニウスによる『博物誌』に、以下のような紹介があります。
アフリカ大陸とアラビア半島の間にある細長い海、紅海の沖合三十五マイルのところに島があり、そこがトパーズの産地として知られていました。
この島はいつも深い霧に覆われ、渡航する者たちは霧の中から島を探し出さなければなりませんでした。
それゆえに、島はその地方の言葉で「探す」という意味を持つ「トパゾス」と名付けられ、そして島で採れる石には、「トパーズ」という名が与えられたといいます。
なお、石言葉は、潔癖、友情、希望などです。
11月の誕生石「トパーズ」――闇に光る石!?
紀元前一世紀ごろ、ローマからアジアに旅をした歴史家のディオドルス・シクルスがこんな話を収集しています。当時、紅海にサーペント島という島があり、変わった方法でトパーズが採掘されていました。 島の採掘者によれば、彼らは夜になるとトパーズを探しに島のあちこちに出かけていきました。
そして、暗闇の中で光っている場所を見つけて、目印を置いていきます。
翌朝にもう一度その場所に向かい、そこからトパーズを拾い上げて帰ってくるのです。
つまり、トパーズは夜になると光を放つため、簡単に見つけることができたのだといいます。
しかし誰でもトパーズを採掘できたかといえば、そうではありません。
サーペント島はエジプト王に支配され、監視人たちが厳しく見守っていたのです。 島の住人はみんなトパーズの採掘者でしたが、石はすべてエジプト王の所有物とされました。
許可なく島に近づいたり、上陸した者は処刑されたといいます。
おそらく先に紹介した「トパゾス」という島は、サーペント島のことかもしれませんね。
実は、紛らわしいことに、時代によって呼び名が異なる宝石があります。
トパーズもその仲間で、古代や中世の時代では、現在「ペリドット」と呼ばれる石もトパーズと呼ばれていました。
この光る石の話は、トパーズではなくペリドットの可能性もありますが、しかし彼らにとってトパーズの存在は、暗闇の中で自ら光りを放つ石だったことは間違いありません。
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トパーズがエジプト王のものとされたことはご紹介しましたが、プリニウスによる『博物誌』には、こんな話があります。紀元前三世紀、当時のエジプト王・プトレマイオス二世の母ベレニケ王后のために、トパゾス島から巨大なトパーズの塊がエジプト王家にもたらされました。
プトレマイオス二世はそのトパーズを気に入って、その塊から妻アルシノエ二世の像を作り、アルシノエ神殿と名付けた聖域に奉納しました。
この像はなんと、高さ2メートルもあったといいます。
プトレマイオス二世と妻アルシノエ二世は、実の姉と弟です。
そしてプトレマイオス王朝の伝統といわれる姉弟(兄妹)婚は、この二人から始まっています。
この二人の関係は面白く、プトレマイオス二世は気弱で、妻で姉のアルシノエに負うところが多かったといわれます。さらにアルシノエは晩年、生きながらに女神に列せられている人物です。
それほどすごい姉となれば、もしかするとプトレマイオスは尻に敷かれていた、と考えてもいいかもしれませんね。
そして、気の強い姉に命じられて、弟は巨大なトパーズで姉の像を作らされた可能性もなくはありません。
何にせよトパーズは、エジプト王家で女神を象るほどの高貴な石といえるでしょう。
以上、トパーズにまつわる伝説などをご紹介しました。
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ライターからひとこと
次元を問わず、11月生まれの彼女がいる殿方も多いかと思います。アクセサリーをプレゼントに選ばれる方もいらっしゃるかと思いますが、王家から学ぶなら、トパーズはやり手で頭の切れる、Sっ気のある女性になんかに喜ばれそうですね。しかしくれぐれも彼女を象ったアクセサリーなどプレゼントされませんように――。翌日から連絡がとれなくなる可能性があります。本書にはほかにも、いろんなパワーストーンについて紹介しています。さまざまなシーンでご活用ください。