ある日、街は謎の異星人によって占領され、我々は山や森のなかに逃げ込むしかなかった。しかしいつ彼らが襲ってくるかわからない――! こんなとき、なるべく体力を温存して、逃げながら対策を練らなければなりません。
どんな状況でも大切なのは、休息と睡眠です。今回はいざというときのために、『図解 特殊部隊』(大波篤司 著)から、「シェルター」についてご紹介します。
目次
野外で寝るなら必須の「シェルター」とは何なのか?
もしも悪意のある地球外生命体がやってきた場合、わたしたちは、いつでも建物などの屋内に逃げ込めるとは限りません。ときには野外で生活をしなければならいときもあるのです。野外では、寒気や雨風、雪などにさらされる危険性があります。
そんなところで休息や睡眠をとれば、急激に体温が低下して、低体温症を引き起こしかねません。
また、逆に暑さや日差しも体力を奪っていきます。脱水症状や熱中症なども心配です。
敵もいつ何時やってくるかわからないため、三度の食事も睡眠もままなりません。
しかし我々は生き延びなければならないのです。
せめて身体を過酷な自然環境から保護し、少しでも膂力を残すために、「シェルター」を作りましょう。
そもそも「シェルター」とは、 体力や精神力の消耗を防ぐため、自然の環境から身体を隔離する「覆い」です。
テントがあればそれを使い、自然の洞窟や、岩の張り出した部分などがあれば利用します。
以下にシェルターを作る際に、適した場所をあげます。
【シェルター設営に適した場所】
・周囲から見えにくい場所
・木の生い茂る森
・険しい岩だらけの谷間
・高低差のある場所では中腹近く(暖かいため)
【シェルター設営に適さない場所】
・倒木が多くある場所(地盤が弱い可能性)
・水際に近すぎる場所(急な増水の危険性)
・土砂崩れや落石、雪崩の痕跡がある場所
もし洞窟などを使える場合は、雨風が防げることに加え、設営や解体の時間・労力を省けるので理想的です。
しかし、出入り口が一カ所であれば、追っ手が来たときに危険です。
すでに敵が地形を把握していれば、洞窟の存在も知られている可能性もありますので、考慮も必要です。
テントがあれば効率よし! シェルター実践編
テントがあれば、非常に効率的なシェルターといえます。1人用のテントなら短い時間でも組み立てられますし、持ち運びにも比較的苦労しません。
雨や風を防いでくれるのはもちろん、中は温度を一定に保ちやすいうえに、カモフラージュを施せば身を隠す助けにもなります。
テントを使うときのポイントとしては、入り口(開口部)は風下に向けることです。
せっかくの暖かい空気を逃がさないためです。
テントがなければ、木の枝や軽金属のパイプ、ポンチョ、パラシュートの布、防水シート、葉などがシェルター作りの材料に利用できます。
どんな状況でも絶対にしてはならないことは、地面に直接、横にならないことです。
熱を奪い取られてしまいますので、毛布などがない場合は、柔らかい木の葉や、草などを敷き詰めて寝るようにしてください。
しかしジャングルでは、それだけでは足りません。
噛みつくような虫もいるので、高床式にする必要があります。 木の枝を組んで床を作ったり、木のツタやツルをロープ代わりにして、ハンモックなどを作っても良いでしょう。
こうして高さを出すことにより、ジャングル特有の湿気からも身を守ることができます。 虫は頭上からも落ちてきますから、布か防水シートがあれば屋根にも使えます。
蚊帳があればベストです。
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砂漠や極寒地! シチュエーション別シェルター実践編
わたしたちが逃げこむのは、なにも森ばかりとは限りません。もしも古代エジプトの遺跡を探検中に、盗賊に追われるようなことがあった場合……つまりそこが砂漠であった場合など、また別のノウハウが必要になってきます。
砂漠といえば、なんといっても焼けつくような暑さです。
基本はテントやパラシュートの布を使って直射日光を遮りますが、大きな岩の影など、地形を上手く利用できるとさらに良いでしょう。
布地に余裕があれば、二枚重ねにすることで、空気の層に断熱材の働きをさせることができます。
穴を掘って地中に潜り、空気の層を作ることで、シェルター内の気温は半分まで下がります。
【砂漠でシェルターを作るコツ】
・地面に穴を掘る
・布地を渡して日よけにする
・穴を掘ったまわりに盛り土をして、シートを石などで押さえても可
では、極寒地ではどうでしょうか?
たとえば、イエティや雪女などに見つかって追われている場合です。
ここでは、雪や氷を使ってシェルターを作ることが可能です。
傾斜地にできた雪の吹きだまりを用いた「雪洞」は代表的で、いわゆる「かまくら」に近いものです。
このタイプのシェルターは、暖まった空気を外に逃がさないことが重要ですが、酸欠になってしまう危険性もあります。入り口とは別の場所に換気口をあけなければなりません。 また、内部に段差を設けて、冷たい空気を下段へ流してやることで、睡眠時の体温低下を緩和できます。
もちろんジャングル同様、毛布や木の枝などを敷き詰めて、雪の上に直接寝ないようにすることも大事です。
【極寒地でシェルターを作るコツ】
・雪の吹きだまりに横穴を掘って雪洞にする
・入り口は雪でふさぎ、別の場所に換気口を作る
・断熱材を用いて、なるべく雪に触れない
・一段低い場所を作って冷たい空気を下に追いやる
なお、どんな場合でも、撤収時に痕跡を残さないようにするために、自然に手を加える際には、最小限かつ元に戻せるように心がけましょう。
以上、シチュエーション別のシェルター作りのコツでした。 これで異世界の生き物に追われても、多少は安心ですね。
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ライターからひとこと
本書を読んでいると、いつ何時サバイバルな人生が始まってもいいように、常日頃からシェルターグッズを玄関に準備しておこうという気になってきます。しかし虫が出たくらいで騒いでいるようでは、到底生き延びられる気がしません……。まずは近場のキャンプ場あたりから始めるのが妥当ですね。
本書では他にも、具体的なサイバル術が書かれています。読んだだけで強くなった気がするから不思議です。