西洋を舞台にしたファンタジー作品の舞台背景となることも多く、華やかなイメージのある中世ヨーロッパ。城、修道会、馬車、ギルドといった言葉に馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
まさに、ロマン溢れる時代ともいえる中世ヨーロッパの生活は、一体どのようなものだったのでしょう。
今回は『図解 中世の生活』(池上正太 著)を参考に、中世ヨーロッパに暮らした人々の生活を農村・都市・城にわけてご紹介します。
目次
◇中世ヨーロッパの生活①:農村の人々
中世ヨーロッパの農村といえば、農民たちが素朴で穏やかな生活を営んでいるというイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし実際は、中世ヨーロッパの農村での生活は決して楽なものではありませんでした。
土地をもたない「農奴」は領主や聖職者、地主といた支配者の持つ直営地の近くに暮らして労働をおこない、税金を納めなくてはならないうえ、さまざまな制約を課せられていました。
一方で、放浪生活を送る人々は「牧人」と呼ばれ、主に家畜の放牧を生業としていました。
そのほか中世ヨーロッパには、「村長」や「酒場の主人」、「鍛冶屋」、「司祭」など農作業以外の仕事をして生活を送っていた人たちもいます。
◎さらに詳しい解説はこちら↓
中世ヨーロッパの農村にはどんな職業があったの?
農奴と牧人~中世ヨーロッパの農村に暮らした人々とは~
【1コマ漫画】中世ヨーロッパ 農村の風呂
◎Kindleで読む
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◇中世ヨーロッパの生活②:都市の職業
中世ヨーロッパには、ファンタジー作品でよく目にする鍛冶屋をはじめ、さまざまな職人たちが生活をしていました。そうした職人や商人が集う組織がギルドです。
この同業者組合は、もともと住民たちが自らの生活や作業の安定化のためにつくった組織でした。
職人たちは関連する業種間で集団をつくって生活しており、生き物に対して刃物を振るうという共通点から、床屋と医者は肉屋と同じギルドとして扱う地域もありました。
また、中世ヨーロッパでは職人遍歴制度が採り入れられています。これは、若い職人が親方になる前に数年間諸国を遍歴し、人格形成することを義務づけた制度です。
驚くことに、都市には乞食を職業とする人たちもいました。こうした貧しい民の救済を目的として、施療院と呼ばれる施設もつくられています。
◎さらに詳しい解説はこちら↓
乞食は職業だった! 中世ヨーロッパの貧民の暮らしとは
武器や甲冑だけじゃない! 中世の職人が製作したものとは
冒険者ギルドを作る前に知っておきたい中世のギルド
職人たちは関連する業種間で集団をつくって生活しており、生き物に対して刃物を振るうという共通点から、床屋と医者は肉屋と同じギルドとして扱う地域もありました。
また、中世ヨーロッパでは職人遍歴制度が採り入れられています。これは、若い職人が親方になる前に数年間諸国を遍歴し、人格形成することを義務づけた制度です。
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◇中世ヨーロッパの生活③:城の暮らし
おとぎ話に登場する中世ヨーロッパの世界では、城に住む貴族たちが豪華絢爛な生活を送る姿が描かれます。
ところが、城の領主ともなれば責任者として領地や配下の管理をしなければいけないので、その生活は忙しいものでした。
日々の運営方針を指示するところからはじまり、領内で起きた犯罪の裁判も執り行います。
さらに奥方は客人のもてなしや刺繍、機織りなどの仕事を担っており、領主と奥方はそれぞれの仕事を分担し、配下の者たちと協力し合って生活していました。
城の食事は、一般的な市民や農民に比べれば大変豪華なものでしたが、私たちの想像するような中世ヨーロッパの食事風景とは異なり、大皿で運ばれてきた料理を手掴みで食べていました。
中世ヨーロッパの都市は、領主や皇帝、司教によって支配されていました。しかし時代が下がり12世紀に入ると、商業活動の発展とともに自分たちで都市を運営したいという市民運動が発生します。こうして生まれたのが、皇帝から特許状を与えられて市民が統治を行う「自治都市」です。
都市の政治を取り仕切っていたのは、都市貴族とも呼ばれる有力な商人や職人ギルドの親方といった人たちでした。
自治都市が誕生した反面で、中世ヨーロッパには荘園制度がもうけられていました。そのため、荘園の農奴は賦役や貢納を課せられるなど、領主の強い支配を受けていたのです。
◎さらに詳しい解説はこちら↓
王様に生まれなくても大丈夫 中世の自治都市を運営する方法
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◇中世ヨーロッパの生活⑤:医術と芸術
現代のように科学の知識が生活に浸透していなかった中世ヨーロッパでは、医術はまったく違う理論によって成り立っていました。
古代から受け継がれてきた迷信や経験則による医術が行われていたのです。占星術を用いて病気の原因を突きとめたり、治療に適した日時を決めたりする迷信深い内科が尊ばれていました。
中世ヨーロッパは、吟遊詩人と呼ばれる人たちが活動していた時代でもあります。彼らは、各地を放浪しながら民衆の求めに応じて、恋物語や実際に起きた事件を題材とする物語などを奏でていました。
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◇中世ヨーロッパの生活⑥:法制度と情報伝達
中世ヨーロッパ初期に西ヨーロッパを支配していたゲルマン人たちは、それぞれの部族の「部族法典」を裁判の根拠としていました。
その後に誕生した神聖ローマ帝国では、重犯罪を扱う上級裁判と、軽犯罪を扱う下級裁判が行われるようになります。裁判官には、皇帝や王、領主やその配下の役人が選ばれました。
また中世ヨーロッパにおいて、陸路の移動は徒歩が中心でした。中世ヨーロッパと聞くと馬車の走る姿を想像しがちですが、当時の馬車は車体が直接車軸の上に乗っているような構造だったこともあり、悪路による振動が伝わりやすく、乗り心地が悪かったといいます。そのため、移動に馬車を使うことは好まれていませんでした。
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