アーサー王伝説の主人公、アーサーの両親についてご存じですか？ 実はアーサーの父であるウーサー・ペンドラゴンが、敵将の妻に恋をした結果生まれた子がアーサーなのです。 『アーサー王』(佐藤俊之 著)では、アーサー王と円卓の騎士たちにまつわる物語を、登場人物一人ひとりに沿って解説しています。今回はその中から、ウーサー・ペンドラゴンの恋の物語をご紹介します。
目次
ウーサー・ペンドラゴンとイグレーンの出会い
ウーサー・ペンドラゴンが自らをブリテンの王と名乗るようになった頃、ブリテンはサクソン人やアングロ人、ビクト人、海賊など、周囲の外敵から常に狙われていました。さらにブリテン内部の諸侯も一枚岩ではなかったため、ペンドラゴンの支配体制はなにかきっかけがあれば脆くも崩れてしまいかねない状況でした。ペンドラゴンに仕えていた魔術師マーリンはこうした状況を危ぶみ、ブリテン諸侯がペンドラゴンの真の臣下になり、一丸となって外敵に対処すれば勝利が得られるのではないかと考えます。
さてそんな折、ブリテン西南のコーンウォールという土地を収めていたのはゴルロイスという男です。彼は勇猛果敢で非常に力のある領主だったので、マーリンは、ゴルロイスとペンドラゴンが和解すれば、他の諸侯もペンドラゴンに刃向うことはないだろうと考えます。
そこで、ペンドラゴンとマーリンはゴルロイスと妻のイグレーンを城に招き、盛大な宴を開いてもてなしました。ゴルロイスはペンドラゴンの力と寛容さに心をうたれ、彼の臣下となってもよいと思い始めます。
ところが肝心のペンドラゴンは、ゴルロイスの妻イグレーンのあまりの美しさに目を奪われてしまい、宴の間ずっとイグレーンばかり見つめ、酒を注いだり踊りに誘ったりしていました。このありさまにゴルロイスはすっかりペンドラゴンを軽蔑し、挨拶もしないまま、宴が終わる前に妻を連れて帰ってしまいます。
マーリンの大作戦、そしてアーサー誕生す
さてウーサーは翌朝、ひと言も断ることなく、妻を連れて城をあとにしたゴルロイスに激怒した。そして再び彼らに己の城を訪ねるよう、召喚の書状を出した。イグレーンにもう一度逢うことができる。仮にゴルロイスがこれを拒否しても、戦いを始める口実となる、とウーサーは考えたのだ。 『アーサー王』p.26書状を受け取ったゴルロイスは召喚の命令を拒否し、妻とともにティンタジェル城にこもり防御を固めました。ティンタジェル城は海辺に張り出した岩の上に建っており、難攻不落の安全な城でした。
ペンドラゴンはイグレーンを力ずくで奪おうとティンタジェル城を襲いますが、なかなか攻め落とせません。その様子を見た魔術師マーリンは彼に、「もしウーサーとイグレーンの間に生まれる子どもをくれるなら、そなたの願いを叶えよう」ともちかけます。ペンドラゴンはこの提案に乗ることにしました。
マーリンの作戦は、ペンドラゴンの軍が敗走したようにみせかけ、ゴルロイスに追撃させようというものでした。作戦は成功し、ゴルロイスは城から出てペンドラゴン軍を追いかけます。 その隙に、ペンドラゴン自身はマーリンの魔法でゴルロイスの姿になりきり、ティンタジェル城へと忍び込みました。イグレーンは自分に近づく男が本物の夫ではないと気づかず、ペンドラゴンと一夜を共にしてしまいます。
一方その頃、本物のゴルロイスは戦場で待ち構えていたペンドラゴン軍の罠にかかり、斃されてしまったのです。
こうしてイグレーンはペンドラゴンの妻になり、やがてひとりの男の子が生まれます。
ペンドラゴンは約束通り、生まれてきた我が子を魔術師マーリンに渡しました。マーリンはこの男の子にアーサーという名をつけ、エクター卿という騎士に預けます。アーサーはエクター卿のもとですくすくと成長し、やがてブリテンの王となり、伝説を残すのです。
最後に、ペンドラゴンのその後についてお話しましょう。
ゴルロイスを騙し、イグレーンを無理やり自分の妻としたことで、彼は世間からブリテンの王とは認められなくなります。そこへ敵であるサクソン人たちが陰謀を企て、ペンドラゴンの召使いになりすまして彼の食事に毒を盛りました。こうしてペンドラゴンは亡くなり、息子であるアーサーが成長し活躍する姿を見ることはできませんでした。
超入門！ アーサー王と円卓の騎士団の物語
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