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時は人類が宇宙開拓時代を迎えた未来の世界。『ストーリーの作り方』の著者が、未来に生きるSF作家の姿を借りて贈る、著者ならではのメイキング解説を練り込んだSFパロディー。いま、人類が宇宙進出に至った知られざる真実が明かされる。
人類の英知
作者:野村カイリ
同盟国を含めた諸外国が、日本の主張を許すはずもなかった。
同盟国を含めた諸外国が、日本の主張を許すはずもなかった。
各国の代表は、自国が被った被害の大きさを声高に主張した。感情的にも、諸外国に比較して被害の少なかった日本の主張は認められなかった。
戦功も主張し合った。
「ウイルスを仕込んだ生物兵器でエイリアンを全滅させたのは、実は我が国である」
と主張する国まで現れた。議論は白熱した。
所有権を認められなかった日本政府は、負けてなるかと今度は占有権を主張した。しかしただちに却下。それならばと、排他的管理権を主張。これも瞬殺……。
会議は三日三晩つづき、結局のところ、巨大宇宙船の帰属は棚上げされ、国連の管理下に置かれることになった。調査・研究は専任の国際委員会を設置して共同で行うこととし、成果は人類共有の知的財産として公開することも決定された。日本国には土地の使用代の意味を込めて復興補助金が拠出されることになった。日本国政府はうなだれるしかなかったが、場合によっては世界大戦に発展しかねない状況の中、人類は英知を発揮したと言えるだろう。