よくホラー映画や怪奇小説で題材となる「ポルターガイスト」と「ドッペルゲンガー」。これらにまつわる都市伝説を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
『幻想生物 西洋編』(山北篤 著/シブヤユウジ 画)では、怪物やモンスターと呼ばれる幻想生物をはじめ、美しい女性の姿をした妖精や神話に登場する幻想生物について、西洋を中心に伝説や伝承を交えて丁寧に紹介しています。今回はその中から、オカルト作品に登場する幻想生物に焦点を当てて、ポルターガイストとドッペルゲンガーについて、実際にあった事例を交えてご紹介します。
目次
幻想生物①実は子供が大好き? ポルターガイスト
日本語で「騒霊」と呼ばれる奇妙な霊現象、もしくはそれを起こす霊そのものを表す。『幻想生物 西洋編』p.59ホラー映画の題材としても取り上げられることの多いポルターガイストは、本書の中でも有名な幻想生物といえるのではないでしょうか。
ポルターガイストは、水の入ったコップを飛ばしたり、重たいベッドを軽々と浮かせたり、姿は見せず不思議な現象を起こすことで人々を恐怖に陥れます。昼夜を問わず騒音と破壊が続く状態の家に住むのは、かなりの精神的苦痛を受けることでしょう。ポルターガイストという言葉は、ドイツ語で「騒がしい」を意味するポルターと「霊」を意味するガイストを結び合わせた造語です。まさにポルターガイストの性質をよく表している名前ですね。
不思議なことに、このような現象が発生する家庭には、ほとんどの場合、小さな子供がいることが判っている。『幻想生物 西洋編』p.59この厄介な「騒々しい霊」はどうやら子供がお気に入りのようで、子供がいるところに現れることが多いことがわかっています。そのため、ポルターガイストは心霊現象ではなく、子供の無意識な力によって引き起こされると主張する人もいます。
ポルターガイストという名前が広まるきっかけとなった「ポルターガイスト少女」エレオノーラ・ズグンの事例を紹介しましょう。
1923年、ルーマニアの村娘エレオノーラは、祖母の住む町へ出かける道中に拾ったお金でお菓子を買って食べてしまいました。そのことを知った祖母に「お前は悪魔のものだ」と脅され、翌日からポルターガイストが現れるようになります。
窓を割られたり小物が飛んだりする現象を目の当たりにした祖母は、エレオノーラが悪魔に憑りつかれたと思い村へ返します。しかし、送り返された村でも、その後に入れられた僧院でもポルターガイスト現象は止まず、エレオノーラはとうとう狂人の房に閉じ込められることになってしまいました。
ポルターガイストといえば家に棲みつくイメージをもつ方も多いかもしれませんが、この事例では少女に憑りつく存在として登場しているようです。
本書ではより詳しい事例を紹介していますので、気になる人は読んでみてはいかがでしょうか。
幻想生物②出会ったら最後? ドッペルゲンガー
人間そっくりの怪物。ドッペルゲンガーは元々ドイツ語で、「ドッペル(分身)」、「ゲンガー(歩行者)」という意味だ。『幻想生物 西洋編』p.59世界中を探せば自分と同じ顔をした人間が3人いるという話があります。これはあくまで同じ顔をしている人間がいるだけで、ドッペルゲンガーとは関係ありません。 それ以外にも、紛れもない同一人物が同時にふたつの場所の存在するバイロケーションという現象があります。しかしこの現象には幻想生物が介在しているわけではないので、ドッペルゲンガーとは関係のない別の現象ということになります。
では、ドッペルゲンガーとはどのような存在なのでしょうか。
もし、ドッペルゲンガーが当人の前に姿を現したとき、その人物はまもなく死ぬ運命にある。『幻想生物 西洋編』p.59「自分と同じ顔の人物に会ったら死んでしまう」こんな都市伝説を聞いたことはありませんか? 実際に、友達から「あなたとよく似た顔を見かけて声をかけたら無視された」と言われたが、自分はその時間その場所にはいなかった。そんな経験をした人もいるかもしれませんね。 これが他人の空似だったらともかく、もしもドッペルゲンガーだったとしたらどうでしょう。
有名なドッペルゲンガーの事例として、アメリカ大統領のアブラハム・リンカーンが見た2つの顔をもつドッペルゲンガーを紹介しましょう。
大統領に選ばれた夜、リンカーンはタンスの鏡に映る2つの顔をもつ自分自身を見たといいます。片方は普通の顔をしていましたが、もう片方は青ざめた顔色をしていたため「第2期を生きて終えることはいことの前兆なのだ」と妻に話しました。
皆さん知っての通り、リンカーン大統領は第2期の途中で非業な死を遂げてしまいます。
ある日突然、自分の前にそっくり同じ顔を持つ人物が現れたとしたら。残念ながらそれは、近い将来訪れる死から逃れられない運命を意味しているようです。
- ダンピール
- ニンフ
- ヒッポグリフ
- ヴァルキューレ
- サラマンダー
- etc...
ライターからひとこと
ファンタジー作品に登場するポルターガイストといえば、「ハリーポッターシリーズ」に登場するホグワーツ魔法魔術学校に棲みつくピーブスが有名ではないでしょうか。また、ドッペルゲンガーも度々創作物の中に登場します。本書ではドストエフスキーの『分身』やエドガー・アラン・ポーの『ウィリアム・ウィルソン』などの例が紹介されています。
恐ろしい幻想生物を創作の種に役立ててみてはいかがでしょうか。
『幻想生物 西洋編』の関連項目を限定公開! (2017年6月13日~2017年6月30日)