お宮参りに七五三……小さい頃から、日本人には馴染みの深い巫女さん。
「神に仕える子」である巫女は、清らかでありながらどこか幻想的です。
こちらの記事では、巫女の種類や装束(衣装)についてご説明しましたが、今回は『図解 巫女』(朱鷺田祐介 著)より、彼女たちをより幻想的に見せる装飾品について、ご紹介します。
目次
巫女の黒髪を美しく纏める「髪留め」の名は?
巫女さんといえば、白い小袖に緋色の袴、そして後ろに結った長い黒髪——。凛とした後ろ姿が目に浮かびますね。
日本文化の誇りとされる黒髪は、やはり巫女さんにとっても大切な要素となるようです。
しかし髪が長くないと巫女さんになれないかといえば、そうではありません。
短い場合は、「髢(かもじ)」または「垂髪(たれがみ)」と呼ばれる付け毛で、長く見せることができます。
その場合、地毛と付け毛の接続部分は、髪留めで隠します。
髪留めは、髪が短くても長くても使います。
基本的には以下の2種類で、
「水引(みずひき)」と、「丈長(たけなが)」です。
水引とは、細い紙縒(こより)に糊(のり)を引いて乾かし固めたもの。進物用の包み紙などを結ぶのに用いる。普通数本を合わせて、中央から色を染め分ける。吉事の場合は紅と白、金と銀、金と赤など、凶事の場合は黒と白、藍と白などとする。巫女が髪留めに用いる場合、紅白、または白を用いる。『図解 巫女』p.26「水引」は、よく贈呈に使う「のし紙」に描かれるなど、祝儀袋や香典袋で見る紐のようなものです。
ちなみに凶事とは、お葬式などのことを指します。
まずはひとつにまとめた髪を和紙で包み、高さを出します。
この和紙が「丈長」です。
丈長は、たとえば時代劇で奥方様が結った髪に、白い紙を巻いている姿などで見かけますね。
丈長に使う和紙は、楮(こうぞ)という植物で造られており、ちりめん状のしわがあります。
巫女が使う場合は、白、もしくは金銀か、赤金を使います。
次に、その丈長の上に「水引」を結びます。
水引は、結び目を装飾的にしたり、丈長は多重の円を造ったりと、その形状は様々です。
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儀礼で巫女の頭を飾る「かんざし」と「冠」
巫女の頭を飾るのは、水引と丈長だけではありません。神事など儀礼の際には、さらに華やかな、「簪(かんざし)」と「冠」を身に付けます。
【挿頭(かざし)】
挿頭とは、簪の原型で、棒状になっています。
もともとは、髪や冠に生花をさした柔術的な装いが始まりで、山の樹木の霊力を分けてもらうために用います。
髪飾りと髪留めの両方の役目を持ち、巫女が使うものは主に以下の2種類です。
①簪
花をあしらった「花簪(はなかんざし)」を用いることが多くあります。
現在では造花を使うこともあります。
②折枝(せっし)
神事の際に折った枝を使います。
【冠】
神楽などの儀礼にあわせて使います。
①前天冠(まえてんかん)
額に山形の金属製の冠があり、両耳の上には花飾りがつくこともあります。
②額当(ぬかあて)
黒い布製で、女性神官が冠の代わりに用いることが多くあります。
さらに、水干という衣装で神楽を舞う場合は、冠の代わりに烏帽子を被ります。
巫女の清楚な足元、「履物」はどうなっている?
基本的に巫女は和装ですので、やはり足元は白足袋(しろたび)に草履です。【足袋】
足袋は七五三や成人式で履いたことがある方も多いかと思いますが、親指とそれ以外の指とが、分かれているのが特徴ですね。
履き方は、まず足袋を半分ほど外に折り返し、それから足を入れて、アキレス腱のあたりで金具を留めます。
この金具を「小鉤(こはぜ)」といいます。
足袋の普及は、江戸時代からです。
それまで庶民に愛用されていたのは、革製の丈夫な革足袋でしたが、江戸時代に皮が不足したことから、白足袋が普及してゆきます。
白足袋は能役者や茶室、相撲の行司など儀礼と清浄が重んじられる場所で使用された。巫女も同様で、清浄を表す白足袋を着用する。『図解 巫女』p.30このように白足袋は清浄を表す意味もありますが、庶民の間では、さまざまな場面や衣服にあわせやすいことも、普及した理由のひとつです。
【草履】
草履はわたしたちが普段使うものと変わらず、黄褐色か薄緑の草模様であれば、素材が合成樹脂でも、底がスポンジでもかまいません。 足の指を入れる鼻緒は、赤が一般的ですが、白も多いようです。
ただし、神職の場合は草履ではなく、正装では「浅沓(あさぐつ)」を履きます。
浅沓は黒漆塗りの木製の靴である。平安時代、殿上人や公家などの男性貴族のうち、文官が礼装をした際に履物として用いたが、現在では神職以外が履くことはあまりない。『図解 巫女』p.30この浅沓、見た目よりは軽く、内部には綿などが詰めてあるため、足にフィットするようですよ。
ちょっと意外ですね。
鈴に白い紙のヒラヒラ? 巫女が持つものを何と呼ぶ?
巫女が祭祀や舞踊を行うときに手に持つもの——、それは「採り物(とりもの)」です。
鈴や白い紙のヒラヒラを持っている巫女さんの姿は、テレビや漫画、あるいは神社で見たことがあるのではないでしょうか。
採り物にはさまざまなものがあります。
【採り物】
・榊(さかき)
・幣(みてぐら)
・杖
・篠(ささ)
・弓
・剣
・鉾(ほこ)
・杓(ひさご)
・葛(かずら)
以上の9種類は、宮廷で行われる御神楽で使用されるものです。
民間の神楽もこれに準じますが、さらに、鈴、扇、盆などを持つ場合もあります。
ちなみにお祓いなどによく使う白い紙のついた採り物は、「幣(みてぐら)」です。
別名、へい、ぬさ、紙垂(しで)とも呼ばれます。
さてこの採り物、どんな意味があるのでしょうか。
浅沓は黒漆塗りの木製の靴である。平安時代、殿上人や公家などの男性貴族のうち、文官が礼装をした際に履物として用いたが、現在では神職以外が履くことはあまりない。『図解 巫女』p.32依代(よりしろ)とは、神が現れるときに宿るもののことです。
とはいえ採り物は、依代としての役割だけではなく、神楽では楽器としても、舞を鮮やかにするためにも使われています。
以上、巫女さんの装飾品についてご紹介しました。
雅やかでどこか幻想的な巫女さんの姿、実際に見てみたくなりますね。
本書で紹介している明日使える知識
- 巫女の種類
- 神社巫女の仕事
- 巫女の装束
- 巫女の頭飾り
- 採り物
- etc...
ライターからひとこと
いつもの白い小袖に緋袴のいでたちも素敵ですが、神楽に登場する巫女さんはさらにぐっと神秘的で、やっぱり憧れます。もしかすると巫女さんは、現代でもっとも身近な、非日常的な存在かもしれませんね。
本書では、巫女だけではなく、女性神官などについてもご紹介しています。
ぜひともさらに、日本の神秘に思いを馳せてみてください。