魔術を使いたい、魔導書を手に入れたいと思ったことはありませんか? もし魔術を使うことができたら、お金持ちになったり、好きな人と両思いになったり、透明人間になれたり……。いろいろできそうですよね。魔術について記されているという魔導書には、何が書いてあるのでしょうか。魔導書は本当に実在していたのでしょうか。
『図解 魔導書』(草野巧 著)では、 多くの魔導書を紹介しています。ファンタジー小説や映画でよく登場する魔術師の参考書ともいえる魔導書。魔術に興味がある人をはじめ、ファンタジーが好きな人、創作に魔導書を採り入れたい人必見です。
目次
スペインや北欧で人気の魔導書『聖キプリアヌスの書』
本書ではスペインや北欧で人気のあった魔導書として『聖キプリアヌスの書』や聖キプリアヌス作の魔導書が紹介されています。聖キプリアヌスは伝説上の聖人で、3世紀に実在していたカルタゴ司教の聖キプリアヌスとは違う人物です。彼は偉大な魔術師と呼ばれていましたが、自らの罪を悔いて改宗し、有徳の司祭になりました。中東では古くから彼の作った呪文や護符が広がり、18世紀にキプリアヌス作の魔導書が流行したといいます。
最も人気の高い魔導書『ソロモン王の鍵』
『ソロモン王の鍵』は、伝説ではソロモン王が書いたといわれています。1559年ローマ教皇パウルス4世によって発行された『禁書目録』のなかで邪悪の本の代表格と扱われ、かえって人気が高まった本です。ヨーロッパ中で最も有名な魔導書となり、後の『レメゲトン』、『大奥義書』、『小アルベール』、『黒い雌鳥』、『ホノリウス教皇の魔導書』など様々な魔導書に影響を与えました。『ソロモン王の鍵』は2巻で構成され、1巻では基本となる魔術の手順や特別な目的に対する魔術の手順、2巻では魔術の準備作業がテーマになっています。この魔導書に記載された魔術とは、神に祈ることで様々 な霊に働きかけ、自分の願望を達成するものです。
さらには、魔術を行うために必要な道具や材料、ペンタクルのシンボルなどについて詳しく書かれています。また実際に魔術を行う際の注意点などについても解説されています。
魔導書を手に入れても、魔道具の作り方や身の清め方、羊皮紙やインクの作り方など、魔術を行うための準備作業の仕方がわからなくてはなにもできませんよね。そのため『ソロモン王の鍵』は魔術を行う者にとって必要不可欠なものでした。
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魔導書の起源は紀元前2千年紀のバビロニアまでさかのぼり、当時は粘土板に楔形文字で書かれていました。その後、魔術的な事柄が書かれたパピルス紙の本は遅くとも紀元前4世紀に登場しました。中世のヨーロッパでは羊皮紙の魔導書が一般的ですが、羊皮紙は紀元2世紀ごろトルコで発明されたといわれています。
ヨーロッパでは15世紀から 紙が作られるようになりますが、魔術的には羊皮紙に書かれていることが重要で、印刷された本には魔導書がもっているはずの魔力がないと考えられていました。そのため、16世紀になっても、印刷された魔導書をもとに写本が作られることが多かったようです。
古代の人々は文字そのものに魔力があると考え、魔術の儀式には自分が書き写した写本が必要でした。『ソロモン王の鍵』に羊皮紙のとり方や魔導書のつくり方まで書かれているのはそうためです。
欲望をかなえるために利用された魔導書
昔の人たちはどんなことに魔術や魔導書を使っていたのでしょうか。もちろん、自然の秘密を学ぼうという気持ちもあったでしょう。しかし、多くの場合、宝探しと愛であったといいます。中世から近代にかけて、トレジャーハンターたちは魔導書を頼りに宝探しをしました。また、自由な恋愛ができる時代ではなかったため、愛を勝ち得るための魔術も人気だったようです。透明人間になる方法なども魔導書には説明されており、わいせつ目的の魔術も載っていました。
そのほか魔導書には、泥棒の探索、陰謀を暴く術などいろいろな魔術が掲載されていました。犯人を捜すため魔術師に依頼したと公言することで、周囲や犯人にプレッシャーを与え、解決に導く効果もあったようです。
お金持ちになりたい、好きな人の愛を勝ち取りたい、勝負に勝ちたいなど人間の欲望はいつの時代でも変わらないのかもしれませんね。
本書で紹介している明日使える知識
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- ソロモン王の魔法円
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