ファンタジーサイトのマスコットキャラクターを務めることになった、ぱん太とぽる太。
しかし、ファンタジーという玉虫色の言葉に二人は戸惑ってしまいます。こうなったら、ファンタジー好きに聞いてみるしかない!
かくして、「ファンタジーのここが好き」をテーマに、ぱん太とぽる太が新紀元社のAさんへ突撃インタビューをおこなうことになりました。
ぱ:ねえ、ぽる太。ボクという存在は、いったい何なんだろう。
ぽ:フム。わしも昔、考えたことがあるよ。自分はいったい何者なのか、なぜ生まれてきたのかと……。
ぱ:違うよ! ボクが言ってるのは、ボクがファンタジー的な存在なのかどうかってことなんだ。
ぽ:帽子を被ってしゃべるパンダは、十分ファンタジー的な存在ではないかな。
ぱ:でも、カフェを経営しているシロクマとか、理由はわからないけど擬人化しちゃったフレンズとか……古今東西アニマル作品はたくさんあるけど、その全てをファンタジーとは言わない気がするよね。
ぽ:そうかもしれないね。じゃあその疑問について、ファンタジーが大好きなあの人に聞いてみようか。
ぱ:「あの人」っていうと、もしかして……。社内でファンタジーのことを喋らせたら右にでる者はいないとウワサされる、名前を言ってはいけないあの人のことかなあ。
ぽ:よし、レッツ取材じゃ!
*
ぱ:よろしくね、Aさん。
A:はい、よろしくお願いします。
ぽ:さっそくですが、Aさんの思う「ファンタジー」について聞かせていただけますかな?
A:そうですね……「ファンタジー」という語を狭く定義して、「これこそがファンタジー。例外は認めん!」と強硬なスタンスはとりたくないですね。実際には、いわゆるファンタジーといわれる作品の中にも、多くの人が想像するような剣と魔法の世界といった王道ファンタジーに当てはまらないものも出てきていますし。
ぱ:うわっ、いきなり怒涛の喋りをみせてきた! でも、明確にここからここまでがファンタジーだって決まっていないのも、ファンタジーの良いところだと思うなあ。自由な発想があるからこそ、想像の翼も広がるんじゃないかな。
A:ただ、多くのファンタジー作品では「現実には存在しない、非科学的な事象」を、歴史や神話、伝承をベースとして、そこに作者のオリジナル要素を加えることで世界観を形成していますよね。完全に作者の創造による、独創的な世界観をほこる作品もあるのですが、それでもその世界での人々の暮らしぶりや、小道具などに過去の歴史を思い起こさせるものごとが登場することが多いですね。
なぜファンタジーにはそうした古いものごとが多く登場すると思いますか?
ぽ:実際に存在したものをベースとすることで、作品の世界に説得力を持たせようとしているのではないかね。
A:そうですね。さらに付け加えるなら、おそらくそれらが今の私たちの現実の生活からは失われてしまったものだからでしょう。日常からは失われていてもどこか記憶の底にある。そんな郷愁が、現実から私たちを自由にしてくれるように感じるのではないでしょうか。
ぱ:その気持ちはわかるよ! ボクも魔術師とか騎士って聞くとワクワクするもん。
A:さっきぽる太くんが言っていた「説得力」の部分がそうですが、ふだん私たちが忘れてしまったものや過ぎ去ってしまったことがいきいきと描かれているところに、ファンタジーの魅力があるように私は思います。
しかしここで注意が必要なのは、歴史作品ではないのですから、過去の現実をそのまま物語に持ち込んだだけではファンタジー作品ではなくなってしまう危険性があることです。歴史をもとにしていたとしても、作者のつくった空想がファンタジー作品には盛り込まれていて欲しいですよね。そうしたことが、日常から解き放たれた感覚をより味あわせてくれるのではないかと思います。
ぽ:やはりわしらも、パンダとタヌキの特性を活かしつつ、しっかりとしたキャラ作りに励まないといけませんな。
A:ただのパンダとタヌキなら、ファンタジーとは言い難いですからね。現実という確固としたものに対峙できるほどにしっかりとした別世界を構築することで、多くの人を魅了する作品となるのではないでしょうか。新しい世界を見せてくれる作品ほど、魅力的なものはありません。
そうは言っても、読者や観客を魅了する世界を一から構築することは、大変むずかしいことです。流行している作品の世界を真似ることもひとつの手法ですが、当然他者が創り上げた世界なのですから、自分の物語を導入した途端に設定がほころんでしまいがちです。
ぱ:実はボクも流行りにのって中世ヨーロッパの異世界を舞台にした小説を書いてみたんだけど、世界を支配していた悪い魔法使いを主人公のパンダがダムダム弾一発で倒したら炎上してね……。魔法使いが弱すぎるとか、そもそもダムダム弾どこから出てきた? とかさ。まあ正直、パンダが銃器使ったらかっこいいかなって思って書いただけなんだけどね。
A:しっかりと統一感のある破綻のない世界を作るためには、歴史的な資料や、過去に語られていた神話や伝承にあたることも有効だと思いますよ。過去に実際にあった、語られていたというリアリティが損なわれることがないのですから。
ぽ:すでにあるものを上手く活かして、物語をつくっていくということですな。しかし、いざ物語につかえそうな文献を調べようとしても、歴史だけでなく、神話やモンスターなど、ファンタジー作品の要素となるような情報を集めるのはなかなか骨の折れる作業だと思いますよ。
A:そこで我々の出番ですよ! 実は新紀元社の資料書はもともと、洋書や日本語の本でも専門書でないと載っていない情報を手軽に読めるように、というところから始まっているんですね。
日本のRPG黎明期を知っている、今四十代以上の方であれば覚えがあると思いますが、当時はファンタジー作品に出てくるモンスターや武器にどういったものがあるのか、調べるのがものすごく大変だったんです。
ぱ:ネット世代のボクたちには馴染みのない感覚だよね。まさに未知との遭遇って感じで楽しそう!
A:今では新紀元社の資料書も、すべてあわせると数百冊にもなるほどに成長しました。うち以外の出版社からも同じようなタイプの本はたくさん出ていますし、ネット世代という言葉も出ましたが、Webでも簡単にいろいろな情報が拾えるようになりましたよね。
ぽ:便利な世の中になったものですな。わしが小さいころは伝道師が村に来て情報を伝えておったというのに……。
A:そうなんですね。確かに今は手軽に情報を得ることができますが、ただそうなると逆に、情報量が多すぎて必要な情報にアクセスしづらくなっているようにも感じています。
せっかく自分たちが築き上げた多くの資料が、必要としている人に届いていないのではないか、という疑問があったんです。
ぱ:ボク、ネットで何かを調べていても、検索で出てきた上から3番目のページを見るころには何を知りたかったのか思い出せないことがよくあるよ……。
A:そういうぱん太くんには本をおすすめしますよ。本には情報の統一性、密度、正確さにまだまだ優位性がありますから。でもWebには、存在を知ってもらう、興味を持ってもらうための発信力や拡散力に優れた点があると思うんです。
ぽ:ネットを通じていろんな分野に興味をもてるようになったのは、とても良いことですな。
A:今回「パンタポルタ」を立ち上げたことで、もっと多くの人にファンタジーの魅力を知ってもらうことができれば嬉しいですね。
ぱ:うんうん。ボクたちも、たくさんの人にファンタジーの魅力を届けられるようにがんばるよ! とりあえず今はAさんの熱いトークでお腹がいっぱいになったから、お昼寝して夢の世界を旅してこよう……zzz
A:まもなく開催される「第二回 モーニングスター大賞」でも「ファンタジー賞」を設置いたしました。前回は残念ながら該当作なしとなってしまいましたが、今回はぜひ審査員をうならせるような作品の登場を期待したいと思います!
ぽ:みんなの応募を楽しみにしておるぞ~