今も昔も人気の職業・忍者。自雷也や犬山道節、猿飛佐助、真田三勇士といった忍者のキャラクターをご存じという方も多いのではないでしょうか。
実は江戸時代には、今のライトノベルにあたる読み物が流行し、その中で多くの忍者のキャラクターが活躍していました。今回はそんな忍者の姿をご紹介します。
目次
江戸のライトノベル「読本」とは?
江戸時代の日本は世界一の識字率を誇っており、字の読める一般庶民たちは娯楽的な読み物を楽しんでいました。
当時人気のあった娯楽書には、次のような種類があります。
①
文字が中心の読み物。『雨月物語』(上田秋成)、『南総里見八犬伝』(曲亭馬琴)など。
・初期:絵はほとんど無し。内容は勧善懲悪モノがメイン。一部で漢語が使われている。
・後期:口絵や挿絵が重要視されるようになり、絵師によって売り上げが変わることも。
②滑稽本
会話が中心でライトノベルに近く、読本よりも読みやすい。『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)などが有名。
③草双紙(絵双紙)
コマ割りがない漫画のような本。絵に文字が添えられている。
・赤本:子ども向け。「桃太郎」「さるかに合戦」など。
・黒本・青本:大人向け。歌舞伎や浄瑠璃、軍記物などが題材。
・黄表紙:成人向け。政治や世相を風刺したものや、ちょっとエロいものなど。
読本に登場する忍者たち
読本をはじめとする庶民の娯楽物語には、多くのヒーローや悪役が登場しました。中には忍者のようなキャラクターが登場するものもありますが、はっきり「忍者」とは書かれていません。
忍者とされるキャラクターの中から、代表的なものをふたりご紹介しましょう。
①犬山道節
・読本『南総里見八犬伝』(曲亭馬琴)登場する8人の主人公のひとり。
・火遁の術を使うが、八犬士として目覚めると術は卑怯だとして捨ててしまう。
②児雷也(児来也=じらいや)
・草双紙『児雷也豪傑物語』(美図垣笑顔=みずがき えがお など)の主人公。
・
・妻の
猿飛佐助を誕生させた「立川文庫」とは?
さて、時代が下り明治~大正初期になると、商家の丁稚などの少年たちの間で「
この立川文庫にも忍者が登場する物語があるのですが、そちらを紹介する前に、まずは立川文庫について簡単にご説明しましょう。
*「立川文庫」とは?*
・大阪の出版社「立川文明堂」が始めた少年向け小型書籍シリーズ。
・明治44年~大正12年まで200冊以上も出版され大ブームに。
・当初は戦記物や講談が中心だったが、大正3年にオリジナルの物語『猿飛佐助』を出版し人気を集めた。
「立川文庫」は大阪の小さな出版社が始めた少年向けの小型書籍シリーズで、戦記物や講談などを題材に少年向けに内容を面白くして出版し、ブームとなります。合計200冊以上も出版されましたが、しだいにネタが尽きてきたため、オリジナルの物語も手がけるようになりました。
そこで第40編として大正3年に発売されたのが『猿飛佐助』です。主人公の猿飛佐助の魅力的な性格と活躍ぶりが、少年たちの間で大変な人気となりました。
猿飛佐助と真田三勇士
では猿飛佐助とはどんなキャラクターだったのでしょう?
*「猿飛佐助」ってこんなキャラ*
・立川文庫の『真田幸村』に名前だけ登場。
・そこに『西遊記』の孫悟空などを加えて作られたオリジナルキャラクター。性格や言動などは全て架空のもの。
・真田幸村に仕える甲賀流の忍者。明るく自由な性格で、痛快な活躍をする。
それまでの立川文庫には、典型的な勧善懲悪の物語が多かったのに対し、明るく自由な雰囲気の猿飛佐助は新鮮で魅力的だったため、少年たちから人気を集めます。
そこで続編が書かれることになり、『猿飛漫遊記』『猿飛南海漫遊』『猿飛江戸探』『猿飛東北漫遊』とシリーズ化していきました。
さらに、猿飛佐助にふたりのキャラクターを新たに加え、「真田三勇士」が作られます。
*「真田三勇士」って誰のこと?*
①猿飛佐助
②
・元は江戸時代末期の講談『真田三代記』に霧隠廣右衛門という名前で登場したキャラクター。
・伊賀流の忍者。ニヒルな性格で、猿飛佐助とは兄弟分。
③
・『真田三代記』に登場する同名のキャラクターがモデル。
・鎖鎌と槍の達人。
真田三勇士は大人気となり、他社からも類似の本が出版されるようになります。その結果、三勇士は七勇士となり、最終的に十勇士にまで増えていきました。
江戸や明治の頃にもライトノベルのような読みやすい小説があったことに驚かれた方も多いのではないでしょうか。忍者たちの痛快無比な活躍ぶりを一度読んでみるのも面白そうです。
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