「宝石には力がある」――そんな噂を聞いたことはありませんか。古代から、宝石は種類によって様々な効能や魔力を持つとされ、多くの伝説や物語が語り継がれてきました。
そうした伝説の中から、今回は美しい緑色に輝く5月の宝石、エメラルドの物語をご紹介しましょう。
目次
地獄や悪魔と結びついた宝石、エメラルド
エメラルドは地獄や悪魔と関係のある宝石だと考えられています。
エメラルドは昔、大天使ルシファーが被っていた美しい王冠に使われていました。また別の説では、ルシファーの額にあった第3の眼がエメラルドでできていたともいわれています。
ルシファーは天界で最も美しく、最も神に愛された大天使でしたが、いつしか自分こそが神にふさわしい存在だとおごり高ぶるようになります。その結果、神の怒りに触れ、天界を追放され地獄に落とされてしまいました。
こうしてルシファーは地獄の悪魔たちを率いる大魔王となりました。そしてエメラルドもまた、地獄や悪魔と繋がりのある宝石だと考えられるようになったのです。
錬金術の奥義が記された『エメラルド板』
大天使ルシファーが身に着けていたエメラルドは、彼が地獄に落とされた時に人間の住む地上に落ちてきたといわれています。
その小片はエジプトに伝わる錬金術の文書『エメラルド板』の作成に使われました。
伝承によると、錬金術は古代エジプトの知恵の神トートが、その知識を人間に授けたことから始まったといいます。
その後、ギリシアからエジプトにやって来た植民者たちは、このトート神が古代ギリシアの冥界神ヘルメスと同一の神だと考えるようになりました。
こうして、ヘルメス・トリスメギストスという錬金術の祖の伝承が誕生します。「トリスメギストス」とは「三重に最も偉大な者」という意味で、ヘルメス神(=トート神)が偉大な神だということを表していました。
やがて時代が下ると、ヘルメス・トリスメギストスは人間化され、3226年間も地上に君臨した神話的な王だと考えられるようになります。
ヘルメス・トリスメギストスは生前、自らが編み出した錬金術の奥義を数十行の寓意に満ちた文章にまとめ、エメラルドの小片に刻みました。これが『エメラルド板』と呼ばれる文書で、この時に使われたエメラルドこそ、天界から落ちてきたルシファーのエメラルドだといわれています。
ヘルメス・トリスメギストスの死後、『エメラルド板』はミイラ化されたヘルメスとともに、ギゼーの大ピラミッドの中にある深い穴の中に埋葬されました。実物は失われてしまいましたが、その複写は長い間、錬金術師たちに愛読され続けることとなります。
それにしても、「モーセの十戒」や「ラジエルの書」のような神聖な書が天界の宝石サファイアに刻まれたのに対し、魔術的な学問である錬金術の奥義が天界を追放されたルシファーの持ち物だったエメラルドに記されたというのは、いかにも伝説的なお話です。
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スペインの民話『魔法のエメラルド』
エメラルドに関する魔術的なイメージから、いつしか人々はエメラルド自体に強力な魔力があると考えるようになります。
その一例が、スペインの民話『魔法のエメラルド』です。
あるところに、おばあさんとその孫と暮らす1羽のメンドリがいました。メンドリはある日、地面に落ちていた魔法のエメラルドを見つけ、王様に届けようと宮殿へ向かいます。
旅の途中、メンドリは狼に襲われてしまいました。ところがメンドリがくわえていたエメラルドが狼に触れた途端、狼の身体は小さく縮んでしまいます。そこでメンドリは狼を籠に入れ、旅を続けることにしました。
メンドリが歩いていると、今度は道の真ん中に巨大な大木が倒れているではありませんか。しかしメンドリのエメラルドが触れると、大木はたちまち小さな枝へと姿を変えてしまいます。メンドリはこの枝も籠に入れ、旅を続けました。
最後にメンドリの行く手を阻んだのは大きな湖です。しかしこの湖もまた、メンドリがエメラルドをちょっと水に浸しただけで、ひとすくいの水に縮んでしまいました。メンドリはこの水もまた木の葉に包み、籠に入れて旅を続けます。
こうしてついに宮殿へ到着したメンドリは、無事に王様にエメラルドを献上しました。
ところが王さまはメンドリを褒めることもなく、他の鶏と一緒に鳥小屋に閉じ込めてしまいます。
腹を立てたメンドリは、籠の中から小さな狼を取り出し、「小さな狼よ、大きくなれ!」と呪文を唱えました。すると狼は元の大きさに戻ったので、鳥小屋はたちまちパニックになり大騒ぎです。
これに困った王様は、メンドリを高い塔に閉じ込めました。そこでメンドリは籠の中から小さな枝を取り出し、先ほどと同じように呪文を唱えます。すると小さな枝はたちまち巨大な大木に戻ったので、塔はあっという間に崩れ落ちてしまいました。
王様は怒り、家来に命じてメンドリを熱い炉の中に放り込もうとします。そこでメンドリは籠の中から木の葉に包んだ水を取り出しました。水はすぐに湖になり、宮殿全体を水浸しにしてしまいます。
観念した王様は、エメラルドをメンドリに返して宮殿から追い払うことにしました。
こうして故郷に帰ったメンドリは、エメラルドをおばあさんにあげることにします。おばあさんはエメラルドを売って大金を手に入れ、孫と一緒に幸せに暮らしたということです。
旅の途中、メンドリは狼に襲われてしまいました。ところがメンドリがくわえていたエメラルドが狼に触れた途端、狼の身体は小さく縮んでしまいます。そこでメンドリは狼を籠に入れ、旅を続けることにしました。
メンドリが歩いていると、今度は道の真ん中に巨大な大木が倒れているではありませんか。しかしメンドリのエメラルドが触れると、大木はたちまち小さな枝へと姿を変えてしまいます。メンドリはこの枝も籠に入れ、旅を続けました。
最後にメンドリの行く手を阻んだのは大きな湖です。しかしこの湖もまた、メンドリがエメラルドをちょっと水に浸しただけで、ひとすくいの水に縮んでしまいました。メンドリはこの水もまた木の葉に包み、籠に入れて旅を続けます。
こうしてついに宮殿へ到着したメンドリは、無事に王様にエメラルドを献上しました。
ところが王さまはメンドリを褒めることもなく、他の鶏と一緒に鳥小屋に閉じ込めてしまいます。
腹を立てたメンドリは、籠の中から小さな狼を取り出し、「小さな狼よ、大きくなれ!」と呪文を唱えました。すると狼は元の大きさに戻ったので、鳥小屋はたちまちパニックになり大騒ぎです。
これに困った王様は、メンドリを高い塔に閉じ込めました。そこでメンドリは籠の中から小さな枝を取り出し、先ほどと同じように呪文を唱えます。すると小さな枝はたちまち巨大な大木に戻ったので、塔はあっという間に崩れ落ちてしまいました。
王様は怒り、家来に命じてメンドリを熱い炉の中に放り込もうとします。そこでメンドリは籠の中から木の葉に包んだ水を取り出しました。水はすぐに湖になり、宮殿全体を水浸しにしてしまいます。
観念した王様は、エメラルドをメンドリに返して宮殿から追い払うことにしました。
こうして故郷に帰ったメンドリは、エメラルドをおばあさんにあげることにします。おばあさんはエメラルドを売って大金を手に入れ、孫と一緒に幸せに暮らしたということです。
今回はエメラルドにまつわる様々な物語をご紹介しました。皆さんは魔術的なエメラルドの力を信じますか?
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