前回は、アドベンチャー作成の、地域や都市という舞台背景の材料として『大口亭綺譚』『ウォーターディープ:ドラゴン金貨を追え』『ウォーターディープ:狂える魔道士の迷宮』に触れてきた。今回からは数回にわたり、1~20レベルというD&D第5版のレベル最大までのキャンペーン・アドベンチャーとして『ウォーターディープ:ドラゴン金貨を追え』『ウォーターディープ:狂える魔道士の迷宮』の魅力を、なるべくネタバレを避けて紹介していこうと思う。
『ウォーターディープ:ドラゴン金貨を追え』は1~5レベル向けアドベンチャーだが、シティー・アドベンチャーにふさわしく都市の情報がサプリメント並みに記述されている。市街地、季節、法、治安体制、交通、貨幣、売買、各種ギルド、貴族家、組織、団体など。このあたりは、「ヴォーロのウォーターディープ旅行ガイド 観光客のための名所案内」の章が、アトベンチャーの内容とは独立した読み物となっているので、プレイヤーも読んでおくとウォーターディープがどのような場所であるかわかり、プレイの中でロールプレイがはかどるだろう(このガイドの前はアドベンチャー、後ろはマジック・アイテムのデータなので、遊ぶ前のプレイヤーは見てはいけない)。
いままでもPCの支援団体として紹介されてきたエメラルド団、ガントレット騎士団、ゼンタリム、ハーパー、領主同盟も、この都市で目指すところが主要人物とともに説明されている。アトベンチャーの進む中で、これらの組織がなにをPCに持ち掛けたり依頼してきたりもPCのレベル別に提示される。その中には、アドベンチャーの本筋にかかわる事案も含まれる。
もちろん、それ以外のアドベンチャーにかかわってくる組織も複数、設定されている。
このような組織や設定されているギルドとPCたちは、PCたちがウォーターディープで生活する中でも関係が発生する。多くのアドベンチャーでPCたちは風来坊であることが多いが、本作では切った張ったの立ち回りとは別に、「ウォーターディープの住人としてのPC」を楽しむことができるギミックが用意されている。これはダンジョンに巣くうモンスターを倒す、といった単純な冒険ではない、シティー・アドベンチャーとしての奥行きであるし、聞き取りや強硬な調査(どこかに忍び込んだり、踏み込んだり)をこなしていると、PCたちにとっての時間では何か月にもわたる物語になっていて、その背景としてPCにも生活があるわけだ。
本作のアドベンチャーのルートは複数用意されていて、起きる事件の意味や関わるNPCや姿勢が変わり、クライマックスや結末も異なる。訪れる場所も網羅的な処理ではなく、ルートによって様々だ。
これらの情報を土台に、『ダンジョン・マスターズ・ガイド』を活用して、ウォーターディープを舞台とするシティー・アドベンチャーを作ることもできる。英語であれば、『ウォーターディープ:ドラゴン金貨を追え』のサイドストーリー的なアドベンチャーが、Dungeon Masters Guild(*1 に公式の D&D Adventurers League 用に用意されていて(有料)、キャンペーンを膨らませたり、別のPC・パーティーの冒険としてプレイしたりも可能である。
(*1 https://www.dmsguild.com/
※記事中の日付は記事公開時のものです。
◎ファンタジーRPG入門