ファンタジーRPG入門㊶
3/02/2019
D&D TRPG コラム ファンタジーRPG入門 上田明(HobbyJAPAN)▷バックナンバー
今回は、自作派のDM向けの、『ダンジョン・マスターズ・ガイド』(以降"DMG")と『ザナザーの百科全書』の活用についての続きだ。
DMGを参照して、ステップ方式で「場所型アドベンチャー」「イベント型アドベンチャー」として概要を組み立てることができることを紹介した。
『ザナサーの百科全書』(以降"本書")には、それらを補助する情報や代用することのできる各種の表が掲載されている。「第2章:ダンジョン・マスターの道具箱」の中で、ランダム遭遇について説明し、ランダム遭遇の表が多数用意されている。
それぞれは、場所(アンダーダーク、海岸、丘陵、極地、砂漠、山岳、市街地、湿地、森林、水中、草原)ごとに、レベルの段階別(1~4、5~10、11~16、17~20のレベル)の表だ。どの表もd100(10面ダイスを、一つを十の位、もうひとつを一の位としてロールし、1~100を出す)用で、40~70種の遭遇を決めることができる。
場所によって、モンスターの名前だけでなく、出来事が示されることもある。たとえば海岸の遭遇のひとつには「一瞬、海の波が巨大な人型生物の顔のように見える」といったものがある。これがセッションで登場したときに、単なる風景として流すか、なにかの前兆だと利用するか、あるいは何かしらのモンスターの誤認で遭遇とするのかは、DMが決めて良い。
戦闘遭遇を作成するのに、DMGの詳細な計算の手間をかけずに手早く調整しようという「お手軽調整」表もある。P.91 に掲載されているこの項には、あるレベルのプレイヤー・キャラクター1人が、何体のモンスターと同等であるかを示した表が示されている。1レベルに対しては、モンスター1体なら脅威度1/4、2体なら1/8であり、10レベル1名には、モンスター1体なら脅威度4、対2体ならそれぞれ脅威度2、4体では脅威度は各1までと言った具合。
これが1~20レベルで示されているから、それに沿ってパーティー人数とモンスターの数と脅威度を設定できる。DMGの戦闘遭遇作成は正統派なのだが、「正統な方法に沿って戦闘遭遇を作成する」ことが目標なのではなく、(間に合うように用意をして)「セッションをプレイする」ことが目的なのだ。本書の「第2章:ダンジョン・マスターの道具箱」では全編にわたって、その「セッションを遊ぶことが目的」が通底していて、DMを支援する内容が60ページ以上にわたって掲載されている。
さらに、「付録B:キャラクターの名前」は、D&Dを含むTRPG以外にも、創作を手掛ける人には重宝がられる表の集合だ。「ヒューマン以外の種族の名前(エルフ、ティーフリング、ドラゴンボーン、ノーム、ハーフオーク、ハーフリング)」は、剣と魔法のファンタジーには使いやすい。さらに「ヒューマンの名前」の項には、アラブ風、インド風、英米風、ケルト風、古代エジプト風、古代ギリシャ風、スペイン風、スラヴ風、中国風、中米風、ドイツ風、ニジェール・コンゴ風、日本風、フランス風、北欧風、ポリネシア風、ローマ風とある。
種族、ヒューマンの各地域別ともに男女2つの表があり、それぞれ50の名前がd100でランダム選択できる。もちろん、任意で選んでもかまわない。
なお、プレイヤーにも人気の本書だが、それは「第1章:キャラクター・オプション」でPHB収録の各クラスにサブクラスが追加されることと、「第3章:呪文」で新しい呪文が追加されていることによる。
DMにも、プレイヤーにも、D&Dのプレイをより楽しくしてくれる名サプリメントが『ザナサーの百科全書』なのである。
次回は、アドベンチャー自作に公式の世界設定への興味とこだわりがあるDMに向けて紹介をする。
ファンタジーRPG入門㊷は3/15公開予定!
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