『ダンジョンズ&ドラゴンズ スターター・セット』に収録されている「ファンデルヴァーの失われた鉱山」とベーシック・ルールを使い、D&Dをはじめてみるお話の続きをしよう。いよいよ戦闘遭遇だ。「スターター・セット」の内容については本連載の第19回を参照すると、より分かりやすいだろう。
今回は、DMを担当する人へ向けてのアドバイスだ。魚に泳ぎを教えるようなことかもしれないが、心がけとして読んでいただければ幸いだ。
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」は、入門編として作られている。「はじめに」から、この物語をDMしていくのに必要な説明が述べられている。
6ページからの、実際にプレイヤー・キャラクター(以降"PC")たちとテーブルでプレイしていく場面で必要なことが説明されている。PCが対面する状況、モンスターなどのほか、この場面での戦闘遭遇の運営をステップを踏んで順番に解説してある。戦闘をPCたちが乗り越えたら、という部分についても、PCがとりそうな行動を先回りして「展開」の項目で案内している。
最初のセッションでは、7ページの「経験点を与える」までを遊ぶと区切りがついてよいだろう。その上で時間に余裕があれば、一緒に遊んだプレイヤーたちと感想を述べあったり、疑問点やルールの確認をしたり、どのようにDMしてほしい、プレイヤーにはこうしてほしい、といった相談もしやすく、次回以降のセッションも遊びやすくなる。
また、最初の戦闘でPCやモンスターのデータとその使い方が把握できる。「スターター・セット」の作成済みPCを使っているプレイヤーが、「ベーシック・ルール」(か、「プレイヤーズ・ハンドブック」(以後"PHB"))でPCを改めて作成したい、と言うかもしれない。そのまま進めるか、再作成をしてもらうかは、セッションの参加者で相談したうえでDMである君が決定する。もちろん横暴にならず、参加者全員が楽しめる選択をすべきだ。
戦闘について、もう少し細かい点を述べよう。D&Dを知っているDMなら、戦闘でミニチュアとマス目を使ってのグリッド・マップを使うべきと考える人もいるかもしれない。だが最初の戦闘遭遇には、マップは用意されていない。どうするのか?
D&D第5版では、グリッド・マップを使った戦闘はオプションとなっており、必須ではない(PHB P.192)。敵味方それぞれについて、相手に近接攻撃が届く者(前衛)と、遠隔攻撃の距離にいる者(後衛)とで分けて、簡易な戦闘処理を行えばよい。PCやモンスターがいる場所として[味方後衛][味方前衛][敵前衛][敵後衛]とエリア分けし、前衛同志は近接武器が届く距離とする。
呪文で、複数の目標に効果を与えたり、範囲に影響を与える呪文は、近いエリア、遠いエリアのどちらかにかかる、としたり、ダイスで決めると良い。たとえばゴブリンがA、B、Cと3体いて、どれに当たるかは「6面ダイスで、1、2はAに、3、4はBに、5、6が出たらCを対象にする」といった風に(ただし、PCが狙いをつけられるものはプレイヤーが目標を指定するし、ウィザードのスリープの呪文はまた違う目標の指定方法なので注意)。
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」に掲載されている次の場所は、マップが掲載されているので、PHBと「ダンジョン・マスターズ・ガイド」(以後"DMG")を手元に置いて、グリッド・マップを使った戦闘を取り入れても良い。
望ましいのは、グリッド・マップがないとか、アドベンチャーの成否に深刻な影響がない戦闘(町でチンピラに絡まれたとか、ランダム遭遇表で戦闘となった場合など)は、簡易な戦闘処理で軽く進め、重要な場面の戦闘(悪事の首謀者だったり、ダンジョンの悪意のあるじとか、アドベンチャーのボスとの戦闘)は、グリッド・マップとミニチュアを使って戦闘遭遇をプレイするのだ。
グリッド・マップを使った戦闘については、DMGと「ザナサーの百科全書」に詳しい。だれ何がどこにいて、攻撃の位置や呪文の目標選定が具体的に指定でき、一目でわかるマップとミニチュアを使った戦闘は、D&Dの華であるしPHBにある戦闘・呪文のルールを最大限に使用することができる。
命がけのバトルと、それを乗り越えた勝利とアドベンチャーの問題の解決による爽快感は、セッションの参加者たちを満足感で満たすはずだ。ぜひ、プレイヤーたちと失われた鉱山を取り戻すまでの冒険を完遂してほしい。
◎ファンタジーRPG入門