ここまでは、無料提供されている「ベーシック・ルール」で、「D&D第5版を試してみよう」という手引きを述べてきた。
1レベル用アドベンチャー・シナリオ “腐敗の影”で遊んで、プレイヤー・キャラクター(以降"PC")のパラメーターについてや、通常時、戦闘時、それぞれでの行動や判定について、さらにダンジョン・マスター(以降"DM")はモンスターのデータ・ブロック("モンスターのデータ"と言えばこのことを指す)と、その運用について身についたことだろう。
その、試しに入った数部屋からなる洞窟を生き抜いたら、判定方法やデータを越えたところにはPC以外の人々が暮らし、交流・親交があり、モンスターの被害にとどまらない人々の間での対立や、暴力、魔法、政治がらみやあるいは悪辣な陰謀が引き起こす"冒険"がPCたちの挑戦を待っている。そのD&D第5版のプレイ世界を広げる登竜門として『ダンジョンズ&ドラゴンズ スターター・セット』がある。
この連載の第19回において、単独で入門向け製品として「スターター・セット」を紹介した。その際には、コア・ルール(PHB、MM、DMG)がなくても、セッションを遊ぶことができるという"仕組み"の面を紹介した。
今回からは、「ベーシック・ルール」と「スターター・セット」を組み合わせることで、「剣と魔法の世界を感じ、楽しめる」という面を、「スターター・セット」収録のアドベンチャー「ファンデルヴァーの失われた鉱山」への導入になるよう、紹介していく。
剣と魔法の世界に生きるキャラクターを創り出す
最初の大きな一歩は、ベーシック・ルールによってPC作成ができることだ。
「スターター・セット」には、作成済みで5レベルまでの内容が記載されているキャラクター・シートが入っていて、キャラクター作成は行わない。
そこにベーシック・ルールを使ってPCを作成することは、代表的な種族、職業―クラス、装備、(クラスによっては)呪文を選び、剣と魔法の世界に生きる人物を創り出すことにほかならない。エルフ、ドワーフ、ハーフリング、ヒューマンの4種族と、ウィザード、クレリック、ファイター、ローグの4クラスの組み合わせを行え、冒険を経てのレベル・アップも、「スターター・セット」の5レベルにとどまらず、D&D第5版で最大の20レベルまで行ける。
「装備」では武器や防具、アイテムともヨーロピアン・ファンタジーにおいて一般的なものが並んでいる。キャラクターの作成そのものから、剣と魔法の世界を感じることができるだろう。
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」向けにベーシック・ルールでPC作成を行う際には、「背景」を決める段で「スターター・セット」の作成済みキャラクターにある「背景」を使うと良い。その背景には、「ファンデルヴァーの失われた鉱山」のストーリーに関わるドラマティックなつながりや、舞台となる場所・地域への関係性が含まれるからだ。
たとえばハーフリングのローグは、PCたちがホームタウンとする「ファンダリン」という街に住んでいた過去があり、ゆえあって出奔した ― となっている。
PC作成においては、習熟や所持金を含む装備といったデータは、キャラクター・シート上部の「背景」の欄に「犯罪者」とあるので、『プレイヤー用ベーシック・ルール』P.42にある背景のうちの「犯罪者(Crininal)」を参照して、作り出すPCに適用することができる。
「背景」は種族やクラスに縛られないので、作成済みPCの持つ背景を、ベーシック・ルールで作成したPCに用いることによって「ファンデルヴァーの失われた鉱山」の内容に絡みやすい人物を新たに作り出すことができる。
もちろん、過去につながりがなくたって、新たなことに飛び込んでいくPCだ、という作り方、遊び方でも構わない。
どうして鉱山は失われ、どのようなものだったのか
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」は、入門してきたDMが悩まないよう、フォーゴトン・レルム世界での出来事についてわかりやすく説明される。
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」P.3には「物語の背景」が述べられている。500年前にドワーフ、ノーム間で結ばれた「ファンデルヴァー協定」のもと、栄えた鉱山とファンダリンの街。そこを襲った災厄。そしてPCたちの時代となって起きている出来事や、PCたちへの依頼者、悪役の立ち位置などが、この1/4ページほどのスペースで説明されている。いかにも、中世風の剣と魔法のファンタジーでありそうな歴史である。
この中の情報は、セッションの中でPCがなにかしらの調査や、調べ事を行って知ることになるかもしれない情報でもある。DMの流儀によっては、前述の背景によるつながりを考慮して、この「物語の背景」そのものを冒険の「予告編」としてPCに紹介することもあるかもしれない。
さらに、この冒険の舞台である世界、フォーゴトン・レルムについても、P.4に半ページほどにまとまっている。この部分は、セッションの参加者全員であらかじめ共有しておくと、D&DというテーブルトークRPGが「剣と魔法の世界でのヒロイック・ファンタジー」であることがはっきりして、遊び始めるのに良いだろう。
次回も、世界を感じるという面から、「ファンデルヴァーの失われた鉱山」の冒頭とファンダリンの街について、アドベンチャーの妨げにならない範囲で紹介していく。
※記事中の日付は記事公開時のものです。
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