小説や漫画、ゲームなどの題材として人気の高い北欧神話。
何となく興味はあるけど難しそう。話のネタとして知っておきたい。好きなキャラクターがどんな活躍をしていたのか気になる。
そんな方に向けて、北欧神話のあらすじや名シーンを分かりやすくご紹介します。
今回のテーマは、オーディンの旅です。
目次
北欧神話・オーディンの旅のあらすじ
原初の巨人ユミルを滅ぼし、その肉体から世界を創造した後、オーディンは世界中を旅して回るようになった。
巨人族との戦いに備えるためと、純粋に知識欲を満たしたかったからである。
ある時、オーディンは知恵の泉を訪れた。知恵の泉とは世界樹ユグドラシルの根が1本伸びている泉で、その水を飲むだけで優れた知識を得ることができるといわれる場所だ。
オーディンは知恵の泉の水をひと口飲むために、泉を守っていた巨人ミーミルに自分の片目を差し出した。それほどまでに知識が欲しかったのだ。
またある時、オーディンは自らの体に槍を突き刺し、断食をして世界樹ユグドラシルに9日間も首を吊った。そうしてルーン文字を発明することができたという。
やがてオーディンは、ニヴルヘイムの巫女から恐ろしい予言を受けた。息子のバルドルが亡くなり、神々は破滅するというのだ。
予言を受けてからというもの、オーディンは不安から逃れるため、ますます知識を求めるようになった。2羽の大鴉を世界に遣わして情報を集め、さらに自分でも玉座の上から世界を見通し、監視し始める。
オーディンは知識を得るための旅も続けた。やがて予言が的中し、息子のバルドルが亡くなると、彼は目的のためなら手段を選ばぬ男になっていった。ある時など、詩人の蜂蜜酒を手に入れるために巨人族の娘を汚したほどだ。
オーディンはまた人間の世界でも暗躍し、不和をばら撒くことで戦死者エインヘリアルを集めようともした。
このような彼の行いは、世界の破滅を近づけることとなった。しかし、彼はそのことにまだ気づいていなかった――。
ざっくり用語説明
*オーディン
北欧神話の主神で、アース神族の長。多くの神々の父でもある。原初の巨人ユミルを滅ぼし、その肉体から世界を創造した。
灰色の髭を蓄えた片目の老人で、魔法の槍グングニルを持っている。優れた用兵家で魔術の使い手でもある。
*ミーミル
知恵の泉の番人をしている賢い巨人。オーディンの叔父という説もある。
後にアース神族とヴァン神族が和平を結んだ際、アース神族側の人質としてヴァン神族に送られた。だが、ともに人質となったヘーニルが無能すぎたため怒りを買い、ミーミルは首をはねられてしまう。
ミーミルの首はその後オーディンの魔術的処置を受け、最終戦争の時までオーディンに知恵を授け続けた。
*ルーン文字
主神オーディンが発明した呪力を持つ文字。強力な神々や魔法の品々にも刻まれ、正しく使えば様々な効果を発揮するが、用法を間違えると予想外の結果をもたらすことも。刻んだ文字を削り取ることで効果を消すことができる。
現実世界のルーン文字は日常的な言語で、配列の最初の6文字をとって「フサルク」と呼ばれる。長い縦線と、斜めの短い横線で構成されている。
*ニヴルヘイム
北の果てにある極寒の世界。寒さや全ての気味の悪いものの源とされる。
フェルゲルミルという泉があり、そこには有翼の黒龍ニーズホッグや無数の蛇が住んでいる。
*バルドル
主神オーディンと妻フリッグの間に生まれた息子。「美しの」とも称される神々の貴公子。
光り輝くほどの美男子で、賢く雄弁で優しい。
母フリッグの尽力により、ヤドリギの若木以外では彼を傷つけることはできない。
*エインヘリアル
来るべき最終戦争ラグナロクに備え、主神オーディンたちが戦場から集めた戦死者たち。
毎日戦闘に明け暮れ、夕方になるとヴァルハラの館で盛大にもてなされる生活を送る。
妄想名シーン
オーディンは知恵の泉を訪れた。
オーディン:「ミーミル叔父さん、私にこの水を飲ませてください」
ミーミル:「この泉は私のものだ。水がほしいなら対価をよこしなさい」
オーディン:「対価? 何が欲しいのです?」
ミーミル:「そうだな、お前の片目をよこすなら、水をひと口飲ませてやろう」
オーディン:「ええっ! それは困ります」
ミーミル:「嫌ならいいんだぞ。立ち去りなさい」
オーディン:「いや、どうしてもこの泉の水が飲みたい。知識が欲しい。……ええい、私の片目を差し出しましょう」
こうしてオーディンは自らの片目を担保に泉の水を飲み、知識を得ることができた。
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