機動戦士ガンダムシリーズにはアプサラスというモビルアーマーが登場しますが、実はインドの神話にも、同じアプサラスという名前の水の精霊が登場します。
今回は水の精霊アプサラスにまつわる物語をご紹介しましょう。
目次
水の精霊アプサラスとは?
- 種族:水の精霊または半神。
- 容姿:豊かな胸とくびれた腰を持つ美しい女性。
- 仕事:天界に住む神々の接待役(踊り子)。
アプサラスとは「水の中で動くもの、雲の海に生きるもの」という意味で、水の精霊または半神だとされています。
アプサラスは官能的で美しい女性の姿をしており、河川や湖などの中に存在したり、水鳥に変身して水辺で遊ぶこともありました。
彼女たちは接待役として、天界の神々に踊りを見せることを仕事としています。
しかし時にはその美しさを利用され、英雄たちを魅了したり、聖仙が苦行するのを妨害するよう神々から指示されることもありました。
次項からはアプサラスにまつわる物語をご紹介しましょう。
アプサラスに恋した男の物語
アプサラスたちは半人半獣のガンダルヴァ族の恋人であるとされています。ですが時には他の者と恋に落ちることもありました。
ある時、女神イダーの息子プルーラヴァスは、アプサラス族のひとりウルヴァシーに恋をし、結婚を申し込みました。
ウルヴァシーはこれを承諾しましたが、次のような条件をつけます。
「決してわたしが望まぬときに近づいてはなりません。そして、あなたの裸身をわたしに見せないでください」
『インド曼荼羅大陸』p297
こうしてふたりは結婚し、ウルヴァシーはお腹に子どもを授かりました。
ところが、本来自分たちの妻となるはずだったウルヴァシーの幸せそうな姿を見て、ガンダルヴァ族の者たちは彼女を奪ってしまおうと考え始めます。
ガンダルヴァたちはまず、彼女が可愛がっていた子羊をさらおうとしました。ウルヴァシーの悲鳴を聞きつけ、夫のプルーラヴァスは裸で飛び出します。ガンダルヴァたちは彼の裸体に稲妻をあて、その姿をウルヴァシーに見せつけました。
こうして結婚の時の条件が破られたため、ウルヴァシーは夫のもとを去ることとなりました。
プルーラヴァスは妻を諦めきれず、放浪の旅に出かけます。長旅の末、ある湖で水鳥となって水浴しているアプサラスの中に、ウルヴァシーの姿を見つけました。
家に戻って昔のように一緒に暮らしてほしいと懇願する夫に、ウルヴァシーは1年に1度だけ会うことを提案します。
こうしてふたりは1年に1度だけ夫婦として暮らすようになりました。
やがて5年の月日が過ぎ、ウルヴァシーはプルーラヴァスとの間に5人の子どもを授かります。ふたりの様子を見たガンダルヴァたちは、夫のことを哀れに思い、ひとつだけ願いを叶えてやることにしました。
プルーラヴァスはガンダルヴァに向かい、「あなたがたの仲間に入れてほしい」と願いました。
彼が定められた祭祀を実行すると、願いはたちどころに聞き入れられ、プルーラヴァスはガンダルヴァ族の一員となったのです。
こうしてプルーラヴァスとウルヴァシーは幸せに暮らすようになりました。
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聖仙を誘惑したアプサラス
もうひとつ、全く別のアプサラスの物語をご紹介しましょう。
聖仙のひとりヴィシュヴァーミトラは
そこでインドラ神はヴィシュヴァーミトラの苦行を妨害しようと、アプサラスの中でもひときわ美しいラムバーに彼の住まいを訪ねさせました。
ラムバーはさっそく魅惑的な姿でヴィシュヴァーミトラを誘惑しました。
ヴィシュヴァーミトラは激しく心を動かされましたが、この美女がインドラ神の罠だと気づいて怒ります。
「1万年の間、石になってしまえ!」
ラムバーはあっという間に石にされてしまいました。インドラ神は驚いて逃げ去り、ヴィシュヴァーミトラは再び激しい苦行を続けることができました。
そうしてついに、目標としていた梵仙の地位を獲得したということです。
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◇参考書籍
『インド曼荼羅大陸 神々/魔族/半神/精霊』
著者:蔡丈夫
新紀元社
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