西洋ファンタジーの源泉であり、中世騎士物語の定番でもある「アーサー王伝説」。
数々の魅力的な登場人物の中から、アーサー王を敗北させ、名剣エクスカリバーを折ったペリノア王の物語をご紹介しましょう。
目次
ざっくり解説 ペリノア王ってどんな人?
- 冒険が大好きだが、ひとつのことに熱中すると周りが見えなくなる。
- アーサー王と一騎打ちし、勝利をおさめた。
- アーサー王がブリテンを統一した後は円卓の騎士の一員として活躍。
- 息子には、聖杯探索に成功した騎士パーシヴァルなどがいる。
ペリノア王は一国の王でしたが冒険が大好きで、旅の途中でアーサー王と一騎打ちし、エクスカリバーを抜いたアーサー王に勝利をおさめたこともある人物です。
しかし、一つのことに熱中すると視野が狭くなる性格だったため、後に取り返しのつかない失敗をいくつもしてしまいます。
一体何があったのか、次項からはペリノア王の物語をまとめてご紹介しましょう。
ペリノア王、アーサー王を打ち負かす
ある時、ペリノア王は冒険の途中で不思議な獣に出会います。それは頭が蛇、胴体は豹、尻尾はライオン、足は鹿の姿をした動物で、腹の中から数十頭の猟犬が唸るような声を上げていました。
「唸る獣」と呼ばれたこの獣こそ、自分が探求すべき謎に違いないと信じたペリノア王は、それから何年も唸る獣を追い続けました。
しかし、見つけられないまま、ある日ついにペリノア王が乗っていた馬が死んでしまいます。
困っているペリノア王の前に、ちょうど馬を連れて休んでいるひとりの騎士が現れました。
唸る獣のことで頭がいっぱいになっていたペリノア王は、騎士の了解を得ずに馬を奪い冒険を続けてしまいます。この騎士こそ、ブリテン王アーサーでした。
それからしばらく後、ペリノア王は森の中で通りかかる騎士を次々に打ちのめします。その中にはアーサーの配下の騎士もいたため、怒ったアーサー王は部下の仇を討つべく、自らペリノア王のもとへと向かいました。
ふたりは馬上で槍を交えますが、なかなか勝負はつきません。しかしもう一度ぶつかり合うとアーサー王は落馬してしまいます。
アーサー王は負けを認めず、今度は王者の剣エクスカリバーを抜いてペリノア王に挑みました。ペリノア王も馬を下り、自らの剣でアーサー王を迎え打ちますが、両者は拮抗したまま長い時間だけが過ぎていきます。
アーサー王は渾身の一撃を放ちました。しかし名剣エクスカリバーはペリノア王の兜に当たり、真っ二つに折れてしまいます。ペリノア王はすかさず反撃し、ついにアーサー王を打ち負かしました。
するとそこへ魔法使いマーリンが現れます。マーリンはペリノア王に、今打ち負かした相手がブリテン王アーサーであること、かつてペリノア王が馬を奪った騎士であることを告げました。
ペリノア王は自らの行いを反省し、冒険を中断してアーサー王に尽くすことで非礼をわびようと決意します。
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ロット王との戦い
ペリノア王が森を出てアーサー王の力になろうと決心した頃、アーサー王はブリテン諸国を統一するため、敵対する北ウェールズのリエンス王と戦っている最中でした。
ペリノア王はさっそくアーサーの軍勢に加わると、リエンス王とともに奮戦していたロット王を見つけます。
またもや自分の使命に没頭していたペリノア王は、あっという間にロット王を斃してしまいました。この活躍により、ブリテンはついに統一されることとなります。
しかしロット王を斬ったことで、後にペリノアの運命は大きく変わることとなりました。
試練の失敗とその結末
王国統一を果たしたアーサー王は、王妃グィネヴィアとの結婚式を執り行います。ペリノアはこの祝宴で円卓の騎士に叙せられました。
魔法使いマーリンは宴の余興として、魔法の力で人々に不思議な光景を見せます。それは白い鹿を追う猟犬、その猟犬を連れ去る騎士、その騎士を追う女性、その女性をさらう別の騎士といった内容でした。アーサーはペリノアに、この情景に登場するさらわれた女性を探すよう命じます。
もうご想像のとおり、ペリノアは与えられた試練に夢中になりました。さらわれた女性を探すため森の中を進んで行くと、重傷を負った騎士と、彼を抱き上げている女性に出会います。女性はペリノア王に騎士を助けてくれないかと頼みましたが、彼は試練のことで頭がいっぱいだったため、これを断ってしまいます。
ペリノア王が去った後、重傷の騎士は亡くなり、女性は悲しみのあまり自害してしまいました。
一方、旅を続けたペリノア王はついに探していた女性を見つけます。アーサー王の宮廷へと彼女を連れ帰る途中、彼は往路で出会った騎士と女性の遺体を発見しました。
あの時ふたりを助けていたら――。
ペリノアは号泣しましたが、全ては後の祭りです。
実は彼が見捨てた結果亡くなってしまった女性は、ペリノアがかつて愛した女性との間に生まれた実の娘でした。魔法使いマーリンは、ひとつのことに熱中しすぎてしまうペリノアの性格を何とかしようと試練を与えたのですが、ペリノアはこれに失敗してしまったのです。
マーリンは彼に、「そなたはいつか、己の命が危ない時、最も親しい友人に見捨てられるだろう」と予言しました。死んだ娘の責任を取らねばならないというわけです。
その後、自らの熱中しすぎる性格と行いを猛省したペリノアは、新たな冒険には出ずアーサー王に尽くしました。
しかし彼がロット王を斃してから10年後、マーリンの予言は的中し、ペリノアは復讐に燃えるロット王の息子ガウェインに待ち伏せされ、命を奪われてしまったのです。
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