ファンタジーRPG入門㉚
この記事を読んでいる人は、試しにD&D第5版を遊んでみようとするとき、その用意に金銭的な費用はかからない。
D&D第5版のキャラクター・シート、キャラクターの作成・成長と判定のルール、ダンジョンを探険するわかりやすいアドベンチャー・シナリオ、いくらかのモンスター・データなどがウェブサイトから無料で手に入る。
「D&D日本公式サイト」内の「サポート」
http://hobbyjapan.co.jp/dd/support/ からだ。
(1)『プレイヤー用ベーシック・ルール』日本語版ver.2
(2)キャラクター・シート(PDF)
(3)『ダンジョン・マスター用ベーシック・ルール』日本語版ver.2
(4)1レベル用アドベンチャー・シナリオ “腐敗の影”
今回は(1)について、どこまで使うことができて、どこからは製品の『プレイヤーズ・ハンドブック』が必要となるか、どこに差があるかを紹介していく。
まず、PDFファイルをダウンロードして入手できる「D&D第5版プレイヤー用ベーシック・ルール」(原書:"Player's Basic Rules" 以降"PBR")日本語版だ。PBRは『プレイヤーズ・ハンドブック』(以降"PHB")から抜粋された内容で、ほぼ「コンパクトな電子書籍『プレイヤーズ・ハンドブック』である」と言える。
PBR日本語版は、翻訳版としてのバージョンは2へ更新された(原書のバージョンは0.3。日本語版Ver.2は、この0.3に製品との訳語の一致やエラッタ反映がなされている)。
PDF形式なのでスマホやタブレット、パソコンで参照しやすく、加えてPBRにのみ収録されている「付録C:5つの勢力」の情報があったり、呪文以外にもルール用語に対訳がついているのも利便性を高めている。
PBRとPHBとで同じ内容の項目を挙げる。
・「はじめに」「舞台となる世界」「このルールの使い方」「このゲームはどうやって遊ぶか」「アドベンチャー」までの“D&Dとは何か”という導入部分。この項目には、「TRPGはどう遊び、どのような点が楽しいのか」、「ダイスをどう使うのか」といったRPGの一般論が述べられているので、まさに「ファンタジーRPG入門」に最適なテキストである。(PBR P.4 ~ P.7:PHB P.5 ~ P.8)
・「
第1章:キャラクター作成手順」には、第5版におけるキャラクター作成の手順すべてと、「1レベルよりも先」の項目には「キャラクターの成長」表も掲載されており、1レベルから、最大の20レベルまでの成長を扱うことができる。(PBR P.8 ~ P.13:PHB P.9 ~ P.15)
※ PBRの「能力値の要約」表では、PBRに掲載の種族・クラスのみ掲載。
・「
第4章:個性と背景」のうち、PHBの「キャラクターの詳細」から「インスピレーション」まで。ここには第5版の新たなルールのひとつ「インスピレーション」について、ルールと使い方も説明されている。(PBR P.35 ~ P.38:PHB P.121 ~ P.125)
※ PBRでは、種族語のアルファベットと各種ランダム決定表にPBRで未収録の種族は掲載されていない
・「
第5章:装備」すべて。ここには通常の武器・防具、冒険用装備、道具や乗騎、交易品、生活費や呪文発動サービスといったことの説明、価格表が掲載されている。(PBR P.45 ~ P.57:PHB P.142 ~ P.161)
・「
第7章:能力値の使用法」「
第8章:冒険」「
第9章:戦闘」のすべて。これによりセッションにおいての能力値判定、技能判定やその難易度の考え方、様々な挑戦や交渉に伴う判定、戦闘中の命中やダメージの算出方法や戦場の遮蔽、ペナルティなどについて、PBRが手元にあればPHBの代わりになる。もちろん第5版の新ルール「有利・不利」も説明されている(PBR P.59 ~ P.79:PHB P.173 ~ P.198)
・「
第10章:呪文の発動」。呪文そのものは次の第11章に網羅されるのだが、呪文の発動ルールについては、この項目によりPBRでもすべて説明される。(PBR P.80 ~ P.83:PHB P.201 ~ P.205)
・「
付録A:状態」すべて。PHBの気の利いたイラスト・カットこそPBRにはないが、状態の説明はすべて記述されている。セッションにおいてクリーチャーが陥りうる状態は、ここを参照すればすべてわかる。
以上について、PBRとPHBは共通である。判定全般について説明されていて、エルフ、ドワーフ、ハーフリング、ヒューマンの4種族に、ウィザード、クレリック、ファイター、ローグの4クラスの組み合わせの中でならば、PC作成から、セッションのプレイ、PCのレベルアップまで遊ぶことができてしまう。
では、遊んで『プレイヤーズ・ハンドブック』が欲しくなってしまう理由はなにか。それは次回に『プレイヤー用ベーシック・ルール』と『プレイヤーズ・ハンドブック』の差分を紹介することで説明しよう。
※記事中の日付は記事公開時のものです。