この記事を読んでいる人は、試しにD&D第5版を遊んでみようとするとき、その用意に金銭的な費用はかからない。
D&D第5版のキャラクター・シート、キャラクターの作成・成長と判定のルール、ダンジョンを探険するわかりやすいアドベンチャー・シナリオ、いくらかのモンスター・データなどがウェブサイトから無料で手に入る。
「D&D日本公式サイト」内の「サポート」http://hobbyjapan.co.jp/dd/support/ からだ。
(1)『プレイヤー用ベーシック・ルール』日本語版ver.2
(2)キャラクター・シート(PDF)
(3)『ダンジョン・マスター用ベーシック・ルール』日本語版ver.2
(4)1レベル用アドベンチャー・シナリオ “腐敗の影”
前回、『プレイヤー用ベーシック・ルール』(以降"PBR")が『プレイヤーズ・ハンドブック』(以降"PHB")の抜粋で、どこが同じであるのかを紹介した。それに続いて、今回はPBRとPHBの違いを紹介する。
「第2章:種族」
PBRでは、エルフ(ウッド・エルフ、ハイ・エルフ)、ドワーフ(ヒル・ドワーフ、マウンテン・ドワーフ)、ハーフリング(スタウト、ライトフット)、ヒューマン(すべての"民族")の4種族を掲載。PC作成のための項目に限らず、種族の文化風俗や氏名についても記載されている。D&Dに詳しい人に注目されるのは、エルフの項目の中でダーク・エルフ(ドラウ)が、PBRではコラムで述べられているのにとどまっていることかもしれない。
PHBではこの章に、ドラウを含めてさらにティーフリング、ドラゴンボーン、ノーム(フォレスト・ノーム、ロック・ノーム)、ハーフエルフ、ハーフオークが収録されている。
「第3章:クラス」
では、クラスとしてウィザード、クレリック、ファイター、ローグの4種があり、サブタイプがそれぞれ1つずつある。これらのクラスは、掲載されているサブタイプとの組み合わせで、D&D第5版PCの最大である20までレベルアップできる。
サブタイプ(ファイター、ローグは「類型」、ウィザードは「学派」、クレリックは「領域」と称する)とは、ウィザードは2レベルで"秘術の学派"として呪文の系統を選択するが、そのうちのひとつ「力術系統」が用意されている。クレリックは「生命の領域」、ファイターは「チャンピオン」、ローグでは「シーフ」が、同様にレベルアップに必要な情報とともに掲載されている。
PHBでは、ウォーロック、ソーサラー、ドルイド、バード、バーバリアン、パラディン、モンク、レンジャーがあり全12クラス。12クラスそれぞれに、2~8に及ぶサブタイプがあり、キャラクター作成、成長のバリエーションを多彩にしている。
「第4章:個性と背景」
PBRには、キャラクターのアイデンティティに関する重要な物語的手がかりにできる「背景」として、貴族、賢者、侍祭、犯罪者、兵士、民衆英雄の6種が用意されている。PHBにはさらに、イカサマ師、隠者、ギルドの職人、芸人、船乗り、浮浪児、辺境育ちが収録され13種。
「第6章:カスタマイズ用オプション」
PBRとPHBで、呪文に次いで差があるのが第6章だろう。PBR「第6章:カスタマイズ用オプション」には、プレイに深みを持たせる選択ルールとして「マルチクラス」「特技」が紹介されている。PHBにはそれらを実際にプレイに導入するための「マルチクラスの前提条件」表と、個別の「特技」が掲載されている。
「第11章:呪文」
最も差があるのは「第11章:呪文」の項だ。具体的な呪文とその説明が網羅される章で、PBRでは P.84~P.108 の24ページでウィザードとクレリックの0~9レベルの呪文リスト(呪文にはPCのレベルとは別に"呪文レベル"が設けられていて、最大は9レベル)と呪文を掲載している。
PHBの相当部分には、魔法を行使する7クラスそれぞれの0~9レベルの呪文リストと呪文の説明が P.207~P.289 の 82ページにわたり収録されている。
「付録B:多元宇宙の神々」
PBRにはフォーゴトン・レルムの神について抜粋されている。PHBの「付録C:存在の諸次元界」「付録D:クリーチャー・データ」「付録E:おすすめ書籍」は、PBRには収録がない(クリーチャー・データについては、次回の『ダンジョン・マスター向けベーシック・ルール』で解説する)。
「付録C:5つの勢力」
PBRにのみ掲載されていて重宝するのが「付録C:5つの勢力」だ。公式イベント「D&D アドベンチャラーズ・リーグ」でのPC作成や、第5版の公式アドベンチャーでは、PCがこの5つの勢力のどれかに勧誘されたり、属していることになっていたりする。
この5つの組織はフォーゴトン・レルムにある組織という(歴史と)設定であるため、PHBと『ダンジョン・マスターズ・ガイド』(以降"DMG")には、各組織にどういう歴史があり、どのような構成で、PCに何をしてくれるのか、という詳しい言及がない(DMGでは、コラムで若干の紹介はある)。
日本語でプレイすることができるアドベンチャーでは、『スターター・セット』の「ファンデルヴァーの失われた鉱山」や『魂を喰らう墓』を遊ぶ際に役立つこと間違いない。なにせこの5つの組織はどれも、所属員への情報提供や協力にとどまらず、イベント・セッションにおいては4レベルまでの(戦闘不能や気絶状態でなく)死亡したPCを、一度だけは生き返らせてくれるのだ。出目自慢のDMも、戦闘でのダイス・ロールを遠慮なくできるというものである。
掲載されている種族、クラスにとどめれば、D&D第5版を知るのに十分なプレイが可能であるのが、PBRであるのがお分かりいただけただろうか。
これに、(2)キャラクター・シートがあるから、PCを作成して、セッションによって経験値を得て、20レベルまで成長させる、ことも可能だ。
さて次回以降は、「ダンジョン・マスター用ベーシック・ルール」、それにアドベンチャーの用意について紹介する。
※記事中の日付は記事公開時のものです。
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