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十字軍の戦士たちの装備①防具
11世紀から13世紀の約200年にわたり展開された十字軍。彼らはどんな装備でイスラム地域へと遠征していったのでしょう?
まずは鎧や兜などの防具からご紹介しましょう。
【鎧】
- 「ハウバーグ」と呼ばれる鎧で、メイル(鉄製の輪)を繋ぎ合わせて作られる。
- コートのようになっていて、長さは首から膝まで。袖の長さはまちまちだった。→12世紀になると足の部分も覆うよう進化した。
- 初期は前開き→時代が進むとシャツのように頭から被って着ていた。
- 皮製の裏地がついており、肌触りは悪くない。
十字軍の戦士たちが着ていた一般的な鎧は「ハウバーグ」と呼ばれます。これは一種のチェイン・メイルで、鉄製の輪を繋ぎ合わせて作られ、皮製の裏地がついていました。
ハウバーグは首から膝あたりまでを守れる長さになっています。12世紀になると足の部分も覆うようになりました。
袖の長さは肘くらいまでの短いものや、手首まであるもの、指まで覆えるようになっているものなど様々でしたが、12世紀に入ると手首まで防護できるものが一般的となります。
ハウバーグは前開きになっていて、戦士たちは何ヶ所か紐で縛って着用していました。時代が進むと頭から被るタイプのものも登場しています。
【胴着】
- 胴着=鎧の下に着るもののこと。だが後の時代になると上着化した。
- 「ジポン」と呼ばれる。後にポルトガルから日本にもたらされ、「襦袢」(じゅばん)の語源となった。
- 綿を入れて網目状に縫って作る。布製が多いが、皮革製のものもあった。
第1回十字軍(1096~1099年)の頃になると、戦士たちは鎧の下にジポンと呼ばれる胴着を着るようになります。この胴着には、衝撃を吸収し、打撲傷を減らすことができるという効果がありました。
布製のものの他、皮革でできたものもあり、脇開きになっています。中には前開きものものあり、こちらは「プールポアン」と呼ばれていました。
【サーコート】
- 鎧の上に着る上着(胴着)。
- 色は黒や赤、白など様々。十字の模様が描かれることが多い。
- 布製で、裏地に毛布を縫い込んだものもある。
十字軍の騎士たちは鎧の上に「サーコート」と呼ばれる上着を羽織っています。サーコートには暑い土地で日射しを和らげ、鎧の鉄が焼けることを防ぐという役割がありました。
サーコートの色は騎士団によって黒や赤、白など様々です。胸の部分には大きな十字の模様が描かれていました。
【兜】
- 「コイフ(鎖帷子の兜)」をかぶり、頭やあごを守っていた。
- 12世紀まで:「ノルマン・ヘルメット」(板で作った兜で、鼻当てがついている)。
- 13世紀以降:「ヘルム」(鉄製の板を繋ぎ合わせた臼型の兜で、呼吸するための穴が開いている)。
十字軍の戦士たちはコイフをかぶって顔以外の部分を防護しています。
さらに12世紀頃までは「ノルマン・ヘルメット」、13世紀以降は「ヘルム」と呼ばれる兜もかぶっていました。
「ヘルム」は「ノルマン・ヘルメット」よりも頑丈でしたが、視界が狭くなるという難点もあります。
【盾】
- 「カイト・シールド」と呼ばれる凧型の盾が一般的。
- 長めのベルトがついていて、肩からかけることもできた。
十字軍の戦士たちは「カイト・シールド」というノルマン独特の盾を愛用しています。
この盾にはベルトがついており、騎乗する際は肩からかけられるようになっていました。
十字軍の盾やサーコートなどには、自分の家柄を示す紋章の他、十字のマークなどが描かれます。十字軍の提唱者であるローマ法王ウルバヌス2世(在位1088~1099年)の提言により、東方に向かうキリスト教徒は胸か額に十字の印をつけることになっていたのです。
十字軍の戦士たちの装備②武器
続いて、十字軍の戦士たちが使った武器についてもご紹介しましょう。
【長剣】
- 長さは70~80cmぐらい。
- 刃幅が広い→敵の鎧や兜を断ち切れる!
- 柄頭は国によって様々な形をしていた。
十字軍の時代には、多くの国で同じような剣が使われていました。
その最大の特徴は刃幅が広いことで、敵の鎧や兜を切断し致命傷を与えられるのです。
柄頭の形は国によって様々で、例えば次のようなものがありました。
イギリス:魚の尾型
フランス:車輪型
ドイツ:ブラジルナッツ型(猫の目のような形)
【槍】
- 騎乗した際の武器。
- 柄の部分には紋章入りの旗がついている。
十字軍の戦士たちは、騎乗した際にはランス(槍)も用いています。
この長い槍の柄には紋章入りの旗がついていて、自らの所属や家柄を示すことができました。
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