小説や漫画、ゲームなどの題材として人気の高い北欧神話。
何となく興味はあるけど難しそう。話のネタとして知っておきたい。好きなキャラクターがどんな活躍をしていたのか気になる。
そんな方に向けて、北欧神話のあらすじや名シーンを分かりやすくご紹介します。
今回のテーマは、北欧神話の世界の創造です。
目次
北欧神話・世界の創造のあらすじ
神々が存在するよりはるか前の時代。
そこには深淵ギンヌンガガプと、灼熱の世界ムスペッルスヘイム、極寒の世界ニヴルヘイムが存在していた。
ある時、熱風が霜を溶かし、そこからふたつの生命が誕生する。原初の巨人ユミルと牝牛アウズフムラだ。
原初の巨人ユミルからは霜の巨人と呼ばれる一族が発生し、牝牛アウズフムラが舐めた霜からはブーリという男が生まれる。
その後、ブーリの息子ボルは霜の巨人の娘との間に、主神オーディンをはじめとする3人の神をもうけた。
ところがオーディンたちは霜の巨人を嫌っており、ある時原初の巨人ユミルを殺害してしまう。ユミルから流れた血は洪水となり、霜の巨人のほとんどはそれに巻き込まれて滅びてしまった。こうして生き残った巨人たちは神々を恨むようになった。
一方オーディンたちは、殺害した原初の巨人ユミルの身体から世界を創造しようと考える。
彼らはまずユミルの血の上に肉で造った大地を浮かべると、毛髪や骨、脳から樹木や岩石、雲を造った。頭蓋骨からは天を造り、そこにムスペッルスヘイムの火花で造った太陽と月、星々を置き、季節を定めた。
次に、オーディンたちは海辺で拾った流木からアスクとエンブラという人間の男女を生み出す。さらに大地を人間の世界ミズガルズと巨人の世界ヨトゥンヘイムとに分けると、ミズガルズの周囲を原初の巨人ユミルのまつ毛から造った柵で囲う。世界の中心には砦を築き、そこを神々の世界アースガルズとした。
こうして世界は創造された。だが平和は長くは続かなかった――
イラスト素材:『図解 北欧神話』
ざっくり用語説明
*ムスペッルスヘイム
北欧神話を構成する9つの世界のうち、最も古くから存在する世界。原初の巨人ユミルが生まれる以前から存在していた。
燃えさかる炎に包まれた世界で、ムスペッルと呼ばれる種族の長スルトによって治められている。しかし、ムスペッル以外にも生き物はいたのか、どんな文化が存在していたのかなど、詳しいことはわかっていない。
*ニヴルヘイム
北欧神話を構成する9つの世界のひとつで、極寒の世界。ムスッペルスヘイムと同様、原初の巨人ユミルが誕生するより前から存在していた。
寒さや全ての気味の悪いものの源とされる世界で、フェルゲルミルと呼ばれる泉があり、有翼の黒龍ニーズホッグや彼の手下の無数の蛇が住んでいる。
*ユミル
原初の巨人。極寒の世界ニヴルヘイムの霜が、灼熱の世界ムスッペルスヘイムの熱気によって雫となり、そこからユミルが生み出された。
両性具有の存在で、単独で子を生むことができる。性格は獰猛。
子孫であるオーディンらに殺害され、彼らの住む世界の材料とされた。
*オーディン
北欧神話の主神。戦争と死の神であり、呪術や知識、詩芸の神でもある。
灰色の髭をたくわえた片目の老人で、魔法の槍グングニルを持っている。知識を得ることに貪欲で、策略や裏切りもいとわない性格。
先祖である原初の巨人ユミルを滅ぼし、その肉体から世界を創造した。
*ヨトゥンヘイム
巨人たちの住む世界で、人間の世界ミズガルズを囲む柵の外(東方または北方)にある。
巨人ミーミルが管理するミーミルの泉や、毒の川エーリヴァーガル、狼の姿をした巨人の一族が住むというイアールンヴィズの森などがある。作物は少ないが、ほかでは見られない生き物であふれた世界だ。
*アースガルズ
北欧神話の神々が住まう世界。高い城壁に囲まれた砦になっており、他の世界からアースガルズに入るには、虹の橋ビフレストを渡るか、空を飛ぶしかない。
グラズヘイムという黄金の神殿や、オーディンの宮殿ヴァルハラなどの施設がある。
妄想名シーン
――オーディンたち3人の神は原初の巨人ユミルを斃すと、その身体から世界を創造することにした。
「ユミルの肉体で大地を造ろう」
「いいね。ではその大地には、歯や砕けた骨で造った石と砂利を敷き詰めよう。大きな骨からは岩が造れそうだ。血液で海や川も造って、毛髪の樹木も植えたいな」
「頭蓋骨からは天の覆いが造れるぞ。脳で造った雲を浮かべようか」
こうしてユミルの肉体は無駄なく全て世界の材料となった。
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