小説「アルセーヌ・ルパン」シリーズの名作に『カリオストロ伯爵夫人』や『カリオストロの復讐』があります。また映画「ルパン3世」シリーズにも『カリオストロの城』という作品がありますよね。
ではこれらの作品の元ネタとなった「カリオストロ伯爵」とはどんな人物なのでしょう?
目次
カリオストロ伯爵は数秘術の使い手だった
まずは、カリオストロ伯爵の人物像をみていきましょう。
アレッサンドロ・カリオストロ伯爵は18世紀ヨーロッパに生きた人物で、自ら「人民の保護者」を名乗り、貧しい人や恵まれない人を助けたといわれています。彼は心霊治療という方法を用い、ストラスブール(フランス)で3年間に1万5千人もの人を無料で治療しました。さらに、貧しい人々に金を与えたりもしたといいます。
心霊治療の他に、カリオストロ伯爵は数秘術と呼ばれる不思議な力も使うことができました。
カリオストロ伯爵は幼い頃に両親を亡くし、イスラム法の最高権威者のもとに預けられて育ったといいます。そしてアラビアのマスター、アルトタスという人物に秘術を習ったということです。もっとも、こうした生い立ち話は本人が主張しているだけですので、どこまで本当のことかはわかっていません。
ともあれ、カリオストロ伯爵はこの数秘術の力を使ってカジノで好きなだけ金を儲けることができました。時には親しい女性に宝くじの当たり番号を教えることもあったそうです。
伯爵が教えた番号は必ず的中しましたが、その女性が4度目に当たり番号を教えてもらいに行った時には、「あなたはもう充分豊かになったでしょう」と言って番号を教えることを断りました。彼はあくまでも困窮している人の味方であり、他人に必要以上の協力をすることはなかったのです。
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フランス革命とカリオストロ伯爵の予言
カリオストロ伯爵は数秘術の力を使い、未来を予言することもできたといいます。
ある時、彼はフランス王妃マリー・アントワネットの首飾りを盗んだ疑いをかけられ、バスチーユ監獄に囚われてしまいます。独房に繋がれたカリオストロ伯爵は、壁に暗号でこう記しました。
「1789年7月14日、包囲されたバスチーユの監獄は、上から下まで取り壊されるだろう」
するとどうでしょう。1789年7月14日、バスチーユ監獄はフランス市民から襲撃され、伯爵の予言は的中することとなったのです。
さらに1785年5月10日、フランスのフリーメーソンのロッジで、カリオストロ伯爵は当時のフランス国王ルイ16世とその王妃マリー・アントワネットの運命についても予言しています。
「国王は国外逃亡を計画しますが、失敗してしまうでしょう。さらに暴動が起きた責任を問われ、39歳になる前にその頭を失う運命にあるでしょう」
カリオストロ伯爵の予言は続きます。
「王妃は不運が続き、財産も地位も失ってしまいます。そして投獄され、処刑されてしまうでしょう」
事実、フランス革命の結果、ルイ16世とマリー・アントワネットはギロチンにかけられてしまいました。今回もカリオストロ伯爵の予言は的中したのです。
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カリオストロ伯爵の正体は山師で犯罪人?!
カリオストロ伯爵は貧しい市民の味方となり、数秘術を使って多くの功績を残しましたが、そんな彼を妬む者たちもいました。
中には伯爵の生涯についての本を出版し、その中で彼は本当は伯爵などではなく、ジュゼッペ・バルサモという名の山師だったのだと断言した者もいます。ジュゼッペ・バルサモとは当時、シチリア警察に手配されていた犯罪人でした。
では本当にカリオストロ伯爵の正体は山師で犯罪人のジュゼッペ・バルサモだったのでしょうか?
取り調べ記録によると、バルサモは根っからの悪人で、教養のない無骨な人物だったということです。一方のカリオストロ伯爵は神秘学と学問に卓越し、人々の賞賛を集めた人物でした。
仮にバルサモが改心しカリオストロ伯爵を名乗るようになったのだとしても、教養を身につけ洗練された人物になるまでにはかなりの時間が必要だったことでしょう。ですがバルサモにそのような時間はありませんでした。
カリオストロ伯爵が本当にジュゼッペ・バルサモと同一人物だったのかは今もはっきりとしていません。しかし、伯爵の最期については記録が残されています。
カリオストロ伯爵はマリー・アントワネットの首飾りを盗んだ疑いで投獄されたことがきっかけとなり、次第に名声を失っていきました。疑いが晴れ釈放された後、彼はフランスを出てロンドンやローマを渡り歩きます。
ところが、キリスト教のお膝元であるローマでフリーメーソンの下部組織を建設しようとしたため、カリオストロ伯爵は宗教裁判にかけられ、1795年に獄死してしまいました。
カリオストロ伯爵は数秘術を使い社会に奉仕しようとしていましたが、志半ばで倒れることとなったのです。
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ライターからひとこと
カリオストロ伯爵はフランスだけでなくロンドンやローマでも、心霊治療や数秘術を使って貧しい人々を助け人気を集めたようです。彼の他にも18世紀フランスでは、サン・ジェルマン伯爵という神秘と謎に満ちた人物も活躍しています。本書ではサン・ジェルマン伯爵についても紹介していますので、数秘術や錬金術に興味のある方はぜひご一読ください。