ペンネーム『みにら』さん
奥様が毎度ステキですね(笑)。東雲先生、雑に扱われたい欲求あるのかしらん……。次回も楽しみにしています!
奥様が毎度ステキですね(笑)。東雲先生、雑に扱われたい欲求あるのかしらん……。次回も楽しみにしています!
「ねーよそんな願望!」
ないです! 断じてないです!
ああ、もっと大事にされたい……お姫様みたいに大切に扱われたい……。
「今日は開幕から読者メッセージを紹介させていただきました。読者の皆様、いつもありがとうございます。
ということで、皆様こんにちは。新紀元社の重岡です」
「作家の東雲佑です。……自分で『作家です』って自己紹介するのむちゃくちゃ居心地悪いなぁ」
「まあまあまあまあ。さあ、それはさておき」
さて置かれた。
「前回に引き続いて、今回も読者だよりですね」
「はい。前回お時間の問題で(つまりは文章量が増えすぎたせいで。便宜的表現である)やりきれなかったお題をやります。あと、それから」
「それから?」
「今回のお題ともかなり関係が深いので、今まさに大ヒット上映中の『シェイプ・オブ・ウォーター』について特集したいと思います」
「きゃー! 大好きです! 大好物です!」
うん、知ってる。業務連絡かと思ったら「シェイプオブウォーター見てきました!」ってメールが来た時はそれはもう驚かされましたからね。
「さて、それでは」
「はい」
「学ぼう!」
「学びましょう!」
そういうことになった。
∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞
ペンネーム『いちま』さん
異類婚姻譚というと、人外の者が人に変化する話が多いと思うのですが、シェイプオブウォーターのように人外で言葉もはっきりと通じないままのものはほかにどんな話があるのか調べようと考えてます。
異類婚姻譚というと、人外の者が人に変化する話が多いと思うのですが、シェイプオブウォーターのように人外で言葉もはっきりと通じないままのものはほかにどんな話があるのか調べようと考えてます。
ペンネーム『ななを』さん
言葉で意思疎通のできない異類婚姻譚が読みたいです!
言葉で意思疎通のできない異類婚姻譚が読みたいです!
「言葉が通じない異類婚姻譚、頑張って探したんですけどなかなか見つからなくて。東雲先生はなにか見つけましたか?」
「いやー、童話みたいな創作の範疇になればちらほらあるんだけど、神話や伝承になるとさっぱり」
『言葉が通じない』じゃなくて『話が通じない』なら結構ある気がするんだけど、それはもう異類婚姻譚までいかなくても現代の夫婦間にもいっぱい転がってると思う。知りたい人はお父さんお母さんに聞いてみよう(その結果お茶の間がギスったとしても責任は取れないけど)!
「有名どころでは人魚姫、それに南総里見八犬伝にも該当するエピソードがあるって聞いたんだけど、どちらも創作だなあ。神話探しを手伝ってくれた魔王の始め方(※1)の笑うヤカン先生曰く『言葉の通じない相手とどうこうなるっての自体が割と新しい概念なのかもしれない』って」
「なるほど。笑うヤカン先生、ありがとうございます!」
「ありがとうございます! さて、その笑うヤカン先生が教えてくれたギリシャ神話のエピソードをご紹介しましょう!」
エコーとナルキッソス
エコーはギリシャ神話に登場する森のニンフである(ニンフとは妖精や精霊に近い下級の女神。美しい乙女の姿をしているとされる)。
おしゃべり好きで心優しいエコーは、ゼウスの浮気相手となった山のニンフたちがゼウスの正妻ヘラの追求から逃れられるよう、ヘラにあれこれと話しかけて足止めをした。
ニンフたちは救われたが、妨害されたことに気づいたヘラは怒り狂い、おしゃべり好きのエコーに「自分からは話しかけられず、相手の言葉を繰り返す形でしか言葉を発することができない」という呪いをかけた。
数年後、エコーは森を訪れたナルキッソスという青年に恋をする。
だが、話しかけようとしても自分からは話しかけらことができず、ナルキッソスの言葉をおうむ返しに繰り返すばかりのエコー。結局、ナルキッソスはエコーに冷たい言葉を投げつけて、彼女に背を向ける。
こうして失恋したエコーは悲しみのあまりどんどん瘦せおとろえ、ついには肉体をなくして声だけの存在となってしまった。
エコーの悲しい結末に同情した仲間のニンフたちは、ナルキッソスへの仕返しを復讐の女神ネメシス(ネメシスは義憤の女神とも)に願った。
ニンフたちの願いは聞き入れられた。ナルキッソスは水面に映った自分の姿に恋をしてしまい、そのまま命を落とすまで水辺から離れなかった。
水鏡に映った自分の美しさにナルキッソスがため息をつくたびに、エコーもまたため息をついたという。
「悪いの浮気したゼウスとヒス起こしたヘラじゃん! 仕返しすんならそっちにしろよニンフたち! ネメシスもそんな願い叶えんなよな!」
「エコーもナルキッソスも被害者ですよね、これ……」
ああもう、ギリシャ神話ってほんとクズのパンテオンだな!
「さてそれはともかく、この話も厳密には婚姻までは至ってないね」
「ですねぇ。言葉が通じないまま結婚は、やっぱり難しいのかもしれませんね」
そういえばアンデルセンの『人魚姫』も結婚まではギリギリいってない悲恋話だった。比較的下った時代の創作ですらがこうだとなると、神話の時代ともなれば物語的な制約としてはちょっと尖りすぎだったのかもしれない。
「ところで、今回のお題について意見をくれた作家さんがもう一人います。担当がおなじよしみで色々よくしてもらってる(富士そば連れてってもらったこともあるよ)蝉川夏哉先生です」
「わー、今月から異世界居酒屋のぶ(※2)のアニメがはじまる、あの!」
「はい、その蝉さんです。で、蝉川先生曰く『言葉の通じない異類婚姻譚というこのお題は、質問者がなにを知りたがっているのかを考えることで答えの幅が広がるのではないか』と」
「ふむふむ」
「つまり『ドラマとして言葉が通じないことを重視した物語』なのか、それとも『ケモケモして人間に変身しないものとのカップリングの話』なのか、とか」
「あー! なるほどです!」
「我々はついつい前者に焦点を絞って探してしまったけど、後者にも視界を広げるとたしかに該当するエピソードはグッと増える気がする。たとえば馬と人間の娘の恋愛に端を発するおしら様の伝承とか」
「ですね! ですね!」
「でも、その話は今回はやりません! なぜならお時間が(つまりは文字数が。便宜的表現)すでに押し始めてるからです! 確か『動物との異類婚姻譚を知りたい』という投稿も来ていたはずなので、この続きはまたいずれ、その時が来たら!
ということで、今回のお題はここまでです。次のコーナーに行きましょう!」
「さあ、本日後半戦は重岡女史お待ちかねの『シェイプ・オブ・ウォーター』特集です」
「きゃー! 待ってましたかねてました!」
そうだろうともそうだろうとも。その日本語は甚だ間違ってるけどな。
「というか、東雲先生も観てきたんですね、『シェイプ・オブ・ウォーター』。もー、観たなら教えてくれればよかったのに。私、語り合う仲間が欲しいって言ったじゃないですか」
「いや、観てないよ?」
「……」
あ、絶句した。
だって仕方ないじゃん。事故後片目が不自由でただでさえ映画はご無沙汰なのに(ガルパン行きたかったなあ)、『シェイプ・オブ・ウォーター』って字幕版だけで吹き替え版が存在しないからまともに観れる気がしないんだもん。
「僕の代わりに妻に(読者だよりが続いているせいで影が薄いけど、想定されるこの連載のヒロインはガチオタ女編集ではなくマイワイフである)観に行ってもらおうかとも考えたんだけど、調べたらうちの近辺ではレイトショーしかやってなくて、それだと終電なくなって帰ってこれなくなっちゃうからさ」
「え……それでどうやって特集するんですか……?」
「大丈夫、そこは心配しなくていい」
そう、心配しなくていいのだ。僕には秘策がある。
「僕の知り合いにデルトロ監督の大大大ファンがいるんだけど、その人が『シェイプ・オブ・ウォーター』について語ってくれたメールがすごい熱量だったんで、せっかくだからそれを紹介させてもらおうかと」
「はあ、作家さんですか? それにメールってそれ、使わせて頂く許可は取ってるんですか?」
「作家じゃないけど出版業界の人だね。まだ許可はもらってないけど、でも100パーセントもらえるから安心して。
では、メッセージの紹介です」
東雲さま
お世話になっております。
新紀元社の重
お世話になっております。
新紀元社の重
「ちょっと! ちょっとちょっとちょっと!」
「はい?」
「『はい?』じゃないです! これもしかしなくても私が送ったやつじゃないですか!」
「そうだよ?」
「そうだよって……出しませんよ許可! 許しませんよ使用!」
「重岡さんがくれなくても許可なら上司の阿部さんか、なんなら新紀元社の社長さんに『ください』って頼むから大丈夫だよ(新紀元社はアットホームな会社なのである)」
「な、な、なにそれ、全然大丈夫じゃな……!」
東雲さま
お世話になっております。
新紀元社の重岡です。
昨夜は『シェイプ・オブ・ウォーター』観てきました! もう、すっごくときめいちゃいました。
素晴らしかったです。ロマンチックファンタジー流行るといいなっ。
お世話になっております。
新紀元社の重岡です。
昨夜は『シェイプ・オブ・ウォーター』観てきました! もう、すっごくときめいちゃいました。
素晴らしかったです。ロマンチックファンタジー流行るといいなっ。
「ぎゃああああああああああああ!」
重岡さんが悲鳴をあげている。
ああ、いかにもこれは歴史的な瞬間だ。読者だよりがはじまってこの方ずっとやり込められていた僕が、はじめて重岡女史に一矢を報いたのだ。東雲派の読者たちは今頃各地で快哉を叫んでいることだろう。
「うぐぅ……映画の余韻に任せて送ったとびきりお花畑なテンションのメールがまさかこんな形で……」
「過去はいつなんどきどのような形で牙を剥くかわからぬもの、ゆめゆめ油断めされるな」
さて、上の文章は読者だより第一回進行中に送られてきた業務連絡メールの冒頭部分である。
確かに「この女ラリってやがんな」とは思ったものの、しかしなんだかんだ言って僕は編集者としての重岡女史を信頼しているし、彼女の感性を深く信用してもいる。
重岡さんが言うなら観てみたいな、観てみようかなという気持ちには、正直かなりさせられた。
たださっきも話したように、現在僕は映画を楽しめるような状態にない。『シェイプ・オブ・ウォーター』に日本語吹き替え版が存在しないと判明した時点で、自ら映画館に足を運ぶという選択肢は潰えた。
そこで、この映画の魅力をひとつ言葉で説明してくれないかと、そう重岡女史に頼んでみたのである。
僕としては気楽なお願いのつもりだったのだけど、はたして、信頼すべき担当編集はまったく手抜きをせずにこの要望に応じてくれた。それこそ、僕が個人的に楽しんで終わらせるには惜しいような力作のレビューで。
そういうことなので、ここはひとつ、皆様にもその力作をお読みいただきたいのだ。読んで、話題沸騰の異類婚姻譚映画の素晴らしい魅力と、また新紀元社重岡女史という編集者の真摯さと熱意の程が皆様にも伝わったならば、これに勝る喜びはない。
まずは、あらすじをおさらいしましょう!
物語の舞台は1960年代のアメリカ。
政府の研究施設で掃除婦として働く女性イライザが主人公です。
あるとき彼女は、研究目的で連れてこられた半魚人と出会います。そして二人は音楽や手話を通じて次第に心を通わせていく……というのが大まかなストーリーです。
イライザは幼い頃に起こったある出来事が原因で声を出すことができません。この設定こそ、最大のファンタジー的ポイントだと思います!
アンデルセン童話の『人魚姫』はご存知ですよね。
王子様に恋をした人魚姫は、声と引き替えに人間の足を手に入れます。けれど王子は別の女性と結婚することになり、最終的に人魚姫は海に飛び込み、泡となって消えてしまうのです。
このように、童話などで描かれる異類婚姻譚は悲劇的な結末がほとんどですよね。
わたしはいつも思っていました……人魚姫がかわいそう! だって、王子を助けたのは人魚姫なのに手柄を横取りされ、それを伝えることもできずに鈍感な王子と他の女性が結婚するのを眺めているだけなんて。そのうえ、王子を殺すか自分が死ぬかという二択を迫られるのは、いくらなんでも理不尽すぎると思いませんか?
そこで、このシェイプオブウォーターです!
人魚姫とシェイプオブウォーターはどちらも声を失ったヒロインの物語ですが、この設定は正反対の役割を果たしています。
人魚姫では、言葉を発せないせいで王子に真実を伝えられないなど、ディスコミュニケーションの象徴として描かれています。
一方シェイプオブウォーターは、声の代わりに音楽や視線、手話を通じ、ともすれば言葉を交わすよりも濃密なコミュニケーションを重ねるのです。
イライザの言った「彼は本当の自分を見てくれている」という言葉には胸を打たれます!
わたしが異類婚姻譚を好きな理由は、そこに純粋な愛のかたちを感じるからです。
結婚というと、どうしても現実社会が関わってきちゃいますよね。そうすると打算がうまれたり、越えなければならない面倒な壁がたくさんでてきます。
こうしたしがらみを全て乗り越えて(あるいは切り捨てて)結ばれるには、それ相応の理由が必要だと思うんです!
美男美女の物語は世の中にたくさんあって、美女と野獣でさえ野獣がイケメンに変わってしまいます……。そうじゃなくて、選ばれる理由のない者たちの恋愛がいいのです。
じゃあ醜ければいいのかというとそうでもなくて(めんどくさいとか言わないでください!)、こだわらなくっていいのです。
シェイプオブウォーターは、クリーチャー好きの変わった女性とたまたま出会えてめでたし、という話ではありません。
孤独と孤独が出会って心を通わせる……そこに美醜や種族なんて関係ないのです!
イライザと半魚人が惹かれあう過程も丁寧に描かれていますし、プラトニックな恋愛じゃないのもグッドです! 愛と性欲……つまり愛欲があってこそ、相手のすべてを受けいれたと言えるのではないでしょうか! そこまでちゃんと描ききったデルトロ監督ありがとうございます。
あ、それから人魚姫の話が捨て置かれてました! イライザの場合、声を失うことになった素因こそが、半魚人と結ばれる上で重要な役割を果たすのです! 人魚姫と逆パターンですね。
つまり、幼い頃から半魚人さんと結ばれる運命だったとも考えられて、なんだかとってもファンタジー。そんな感じでした!
物語の舞台は1960年代のアメリカ。
政府の研究施設で掃除婦として働く女性イライザが主人公です。
あるとき彼女は、研究目的で連れてこられた半魚人と出会います。そして二人は音楽や手話を通じて次第に心を通わせていく……というのが大まかなストーリーです。
イライザは幼い頃に起こったある出来事が原因で声を出すことができません。この設定こそ、最大のファンタジー的ポイントだと思います!
アンデルセン童話の『人魚姫』はご存知ですよね。
王子様に恋をした人魚姫は、声と引き替えに人間の足を手に入れます。けれど王子は別の女性と結婚することになり、最終的に人魚姫は海に飛び込み、泡となって消えてしまうのです。
このように、童話などで描かれる異類婚姻譚は悲劇的な結末がほとんどですよね。
わたしはいつも思っていました……人魚姫がかわいそう! だって、王子を助けたのは人魚姫なのに手柄を横取りされ、それを伝えることもできずに鈍感な王子と他の女性が結婚するのを眺めているだけなんて。そのうえ、王子を殺すか自分が死ぬかという二択を迫られるのは、いくらなんでも理不尽すぎると思いませんか?
そこで、このシェイプオブウォーターです!
人魚姫とシェイプオブウォーターはどちらも声を失ったヒロインの物語ですが、この設定は正反対の役割を果たしています。
人魚姫では、言葉を発せないせいで王子に真実を伝えられないなど、ディスコミュニケーションの象徴として描かれています。
一方シェイプオブウォーターは、声の代わりに音楽や視線、手話を通じ、ともすれば言葉を交わすよりも濃密なコミュニケーションを重ねるのです。
イライザの言った「彼は本当の自分を見てくれている」という言葉には胸を打たれます!
わたしが異類婚姻譚を好きな理由は、そこに純粋な愛のかたちを感じるからです。
結婚というと、どうしても現実社会が関わってきちゃいますよね。そうすると打算がうまれたり、越えなければならない面倒な壁がたくさんでてきます。
こうしたしがらみを全て乗り越えて(あるいは切り捨てて)結ばれるには、それ相応の理由が必要だと思うんです!
美男美女の物語は世の中にたくさんあって、美女と野獣でさえ野獣がイケメンに変わってしまいます……。そうじゃなくて、選ばれる理由のない者たちの恋愛がいいのです。
じゃあ醜ければいいのかというとそうでもなくて(めんどくさいとか言わないでください!)、こだわらなくっていいのです。
シェイプオブウォーターは、クリーチャー好きの変わった女性とたまたま出会えてめでたし、という話ではありません。
孤独と孤独が出会って心を通わせる……そこに美醜や種族なんて関係ないのです!
イライザと半魚人が惹かれあう過程も丁寧に描かれていますし、プラトニックな恋愛じゃないのもグッドです! 愛と性欲……つまり愛欲があってこそ、相手のすべてを受けいれたと言えるのではないでしょうか! そこまでちゃんと描ききったデルトロ監督ありがとうございます。
あ、それから人魚姫の話が捨て置かれてました! イライザの場合、声を失うことになった素因こそが、半魚人と結ばれる上で重要な役割を果たすのです! 人魚姫と逆パターンですね。
つまり、幼い頃から半魚人さんと結ばれる運命だったとも考えられて、なんだかとってもファンタジー。そんな感じでした!
「やぁ、何度読んでも力作だなあ。重岡さんこれきっと社長賞ものですよ。ボーナスで欲しかったフィギュアか庭付き一戸建てでも買うといいよ」
「うちの社長賞って新紀元文庫5冊とかじゃないですか! だいたいこれ、晒すなら本題のとこだけで十分ですよね!? なんで最初の部分まで!」
「でも柳野かなた先生(※3)がまさにその部分を褒めてたよ。『重岡女史ってかわいい方ですね』って」
「見せたんですか!?」
うん、見せた。あ、また絶句してる言葉を失ってる。いいじゃんか、どうせこの記事が公開されたら読者みんなに見られるんだから。
さてその柳野先生だけど、彼も公開後すぐに『シェイプ・オブ・ウォーター』を観に行っている(観に行ったよー! ってメールをくれてたのだ)。
そこで、今回特集をやるのでよかったら簡単にでいいから感想を聞かせてくれない? とお願いしたところ、なんとわざわざ原稿として整えてくれたのだ。
有り難い友の厚意に感謝しつつ、読者の皆様には柳野先生のレビューもご覧いただきたい。
シェイプ・オブ・ウォーター!
秀逸なシナリオと美しい音楽、時代表現。そして描かれる様々な立場や階層の人々への透徹した眼差し、散りばめられた示唆的表現。
引き込まれる序盤から転変する中盤、終盤の緊迫した展開まですべてがハイレベルで、押し付けがましくない程度の社会的なメッセージ性にも富んでいます。
わけてもタイトルどおり水を使った演出が素晴らしく、たいへんな名作であると感じました。
……しかし、ここで静かに告白します。
実は、残念ながらこの恋物語、私の心にはうまく刺さりませんでした。
それというのもヒロインであるイライザと恋をする、名もなき半魚人の外見から幼少の砌に親しんだ濁った川の魚の臭いや、ぬるつく手触りのイメージが想起され……
物語の進行とともに明かされてゆく半魚人の知性や人間味と兼ね合わせても、「この生物と性交渉を含む恋愛は……ううむ……」と感じてしまい、二人の恋にうまく没入できなかったのです。
……そう、まさに私は「外見の美醜」に躓いてしまったのでした。
異類婚姻譚の主人公やヒロインがその深い愛でもって乗り越えているハードルというのは、実際すごいものだなと改めて再認識させられます。
さて、では「半魚人とか本当に受け付けられない、無理!」という人物がこの映画を楽しめないか? というと、そんなことはありません。
主人公のイライザには二人の友人がおり、彼らはイライザに対する友情や心配から彼女に力を貸すことになります。
私はどちらかというと彼らの視点に近い感じで、イライザと名もなき半魚人の恋を「大丈夫かい? ……本当に?」と、ハラハラ心配しながら応援するような感覚でした。
直には刺さらずとも、こういう楽しみ方もできるという意味でもたいへん懐の深い作品です。
未視聴の方は、よろしければぜひ映画館や、レンタルDVDショップ等に足をお運びくだされば、きっと満足のゆく二時間が過ごせるかと思われます。
秀逸なシナリオと美しい音楽、時代表現。そして描かれる様々な立場や階層の人々への透徹した眼差し、散りばめられた示唆的表現。
引き込まれる序盤から転変する中盤、終盤の緊迫した展開まですべてがハイレベルで、押し付けがましくない程度の社会的なメッセージ性にも富んでいます。
わけてもタイトルどおり水を使った演出が素晴らしく、たいへんな名作であると感じました。
……しかし、ここで静かに告白します。
実は、残念ながらこの恋物語、私の心にはうまく刺さりませんでした。
それというのもヒロインであるイライザと恋をする、名もなき半魚人の外見から幼少の砌に親しんだ濁った川の魚の臭いや、ぬるつく手触りのイメージが想起され……
物語の進行とともに明かされてゆく半魚人の知性や人間味と兼ね合わせても、「この生物と性交渉を含む恋愛は……ううむ……」と感じてしまい、二人の恋にうまく没入できなかったのです。
……そう、まさに私は「外見の美醜」に躓いてしまったのでした。
異類婚姻譚の主人公やヒロインがその深い愛でもって乗り越えているハードルというのは、実際すごいものだなと改めて再認識させられます。
さて、では「半魚人とか本当に受け付けられない、無理!」という人物がこの映画を楽しめないか? というと、そんなことはありません。
主人公のイライザには二人の友人がおり、彼らはイライザに対する友情や心配から彼女に力を貸すことになります。
私はどちらかというと彼らの視点に近い感じで、イライザと名もなき半魚人の恋を「大丈夫かい? ……本当に?」と、ハラハラ心配しながら応援するような感覚でした。
直には刺さらずとも、こういう楽しみ方もできるという意味でもたいへん懐の深い作品です。
未視聴の方は、よろしければぜひ映画館や、レンタルDVDショップ等に足をお運びくだされば、きっと満足のゆく二時間が過ごせるかと思われます。
「そうそうそう、そうそうそうそう! そうなんですよ! 水の表現、よかったですね!」
「お、おう。水の表現すごいらしいね。俺もこないだワイドショーの特集で見……」
「イライザが半魚人にゆで卵を持っていくじゃないですか!?」
「え、あ、うん……観てないから知らんけど……」
「あれってどうして卵なんだろうって思っていたんですけど、沸騰したお湯の中でころころと卵が茹でられている場面が出てきて『なるほど!』って納得しました! そんな細かな演出も素敵ですよね!」
いかん。重岡女史がまたスイッチ入ってしまった。これぞまさしく水を得た半魚人。というか、趣味の話題を振られたオタクである。
「柳野先生の仰るとおり、この生きものと恋愛するなんてありえない! って思えばこそ、愛の深さを感じることができるのです! 半魚人がリアルに描かれているのには、そんな狙いもあるのかもしれませんね!」
「う、うん。それはそうと重岡さん、最後に読者メッセージの紹介を……」
「異類婚姻譚は好きですけど、私自身が異類と恋愛できるかと問われれば、恥ずかしながらできないと思います。あ! あと、それから」
「えー、担当編集はこの通りまたもやトリップしちゃってますが、最後に読者からのおたよりの紹介です!」
ペンネーム『くろふ』さん
いつも楽しく拝見させてもらっています。
「異類婚姻譚の定義」というテーマでしたが、ここまで読んで私は「同じものを求めるからこその異類婚姻譚なのではないか」と思いました。どれだけ人と違うか、ということよりも、人間と違う存在に人間らしさを求める行為が根底にあって、その果てにあるものこそが人外との恋愛、つまり異類婚姻譚なのかなぁ、なんてぼんやりと考えていました。
いつも楽しく拝見させてもらっています。
「異類婚姻譚の定義」というテーマでしたが、ここまで読んで私は「同じものを求めるからこその異類婚姻譚なのではないか」と思いました。どれだけ人と違うか、ということよりも、人間と違う存在に人間らしさを求める行為が根底にあって、その果てにあるものこそが人外との恋愛、つまり異類婚姻譚なのかなぁ、なんてぼんやりと考えていました。
ペンネーム『きたのあかり』さん
今回も楽しませて頂きました。読みながらふと思った事があります。自分にとって、他人は全て『異類』。精神的にかけ離れた、まさに別種族です。他人同士を見ていても、皆違いすぎる……っ。なので、世界は「異類婚姻譚」に溢れてる(ちゃうわ)なーんて。次回も楽しみにしてます!
今回も楽しませて頂きました。読みながらふと思った事があります。自分にとって、他人は全て『異類』。精神的にかけ離れた、まさに別種族です。他人同士を見ていても、皆違いすぎる……っ。なので、世界は「異類婚姻譚」に溢れてる(ちゃうわ)なーんて。次回も楽しみにしてます!
「そして、脇キャラクター! 個人的には、悪役のストリックランドも好きで!」
「読者の皆さま、今回もたくさんのおたより、ありがとうございました!」
「すっごく嫌な奴なんですけど、読んでる本が『ポジティブ・シンキング』なんですよ! 出世する人にいそうなタイプですよね! こういうちょっとした演出で登場人物の人間性が垣間見えるのも、この作品の魅力だと思います! あと」
「えー、この通り『シェイプ・オブ・ウォーター』はかなり熱心なファンを生み出す素晴らしい異類婚姻譚です! 皆さんも是非劇場に足を運んでみてね。
それから最後に宣伝だけど、今回寄稿してくださった柳野かなた先生の『最果てのパラディン』、そのコミカライズ版が3月25日に発売されました。皆さま、こちらも是非よろしくね」
「それにしてもデルトロ監督のモンスターへの愛情の深さです! そもそもこの『シェイプ・オブ・ウォーター』は彼が6歳の時に観た『大アマゾンの半魚人』っていう映画が」
「ではでは、親愛なる読者の皆さま! また次の読者だよりでお会いしましょう!
それでは今回も、学んだー!」
∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞~~~∞
※1
ビギニングノベルズ
著者:笑うヤカン
イラスト:新堂アラタ
コミックやゲームなどメディアミックスも絶好調のビギニングノベルズの看板作品。魔王様のハーレムには多種多様な種族の美女が参戦しているが、中には異類婚姻譚のお相手として成立しそうな顔触れもある。
宝島社
著者:蝉川夏哉
イラスト:転
2018年4月よりアニメも始まる宝島社の大人気作。しのぶちゃんが異世界メンバーと結ばれたら異類婚姻譚になるだろうか……とか言ったらタイショーに睨まれてしまうか。
※3
ガルドコミックス
漫画:奥橋睦
原作:柳野かなた
キャラクター原案:輪くすさが
第二話でも登場し異類婚姻譚の定義について悩む東雲に知恵と知識を貸してくれた頼れる友人(頼りにしてます!)。本文中でも宣伝したけど、『最果てのパラディン』のコミカライズ一巻は絶賛発売中。みんな、よろしくね!
*作者紹介*
東雲佑(しののめ たすく)。幻想小説を得意としている。第3回なろうコンの拾いあげ作品『図書館ドラゴンは火を吹かない』が宝島社より発売中。
第2回モーニングスター大賞では『雑種の少女の物語』が最終選考まで残り、社長賞を受賞。ちなみに、第1話の作中に登場する「先日のエッセイ」とは『名前の中のストーリー』のこと。
東雲佑(しののめ たすく)。幻想小説を得意としている。第3回なろうコンの拾いあげ作品『図書館ドラゴンは火を吹かない』が宝島社より発売中。
第2回モーニングスター大賞では『雑種の少女の物語』が最終選考まで残り、社長賞を受賞。ちなみに、第1話の作中に登場する「先日のエッセイ」とは『名前の中のストーリー』のこと。
『作家と学ぶ異類婚姻譚』
第1話
読者だより①
第2話
読者だより②