DMの創作力にとって魔法の杖『ダンジョン・マスターズ・ガイド』
前回から続きで、コア・ルールと『ダンジョンズ&ドラゴンズ スターター・セット』(以後"スターター")をあわせた活用について紹介する。
日本語版『ダンジョン・マスターズ・ガイド』(以降"DMG"、以降のページ数はすべて日本語版)の第3章「アドベンチャーの作成」の中の「既成のアドベンチャー」(DMG p.72)という項目で、スターターの「|ファンデルヴァーの失われた鉱山」を例に出し、ダンジョン・マスターの「アドベンチャーの一部を切り取って、君の目的にかなうように再利用してかまわない」と述べられている(その導入は、第1章「君の世界」の「キャンペーンをつくりあげる」(p.25)にある)。
そのあとには、アドベンチャーを創り出すための知識と、ランダム生成に使うことができるいくつもの表と使い方の解説が続く。参考に表題を引いておこう。
・場所型アドベンチャー
ダンジョンでの目的/野外での目的/その他の目的
アドベンチャーの悪役/アドベンチャーの依頼者役
アトベンチャーの導入/アドベンチャーのクライマックス
・イベント型アドベンチャー
イベント型の悪役の行動/イベント型アドベンチャーでの目的
大きな出来事
道徳上の問題
ひねり
サイド・クエスト
表にはランダム選択のためのダイスも表記されていて、上記の要素をすべてランダムで決めることもできる。物語の概略がこれだけで作成できるわけだ。インタラクティブな遊びのTRPGだから、経過と結末はプレイヤー・キャラクター(以降"PC")たちの行動、活躍によって変わるが、「なにが起きるのか」という点については、剣と魔法の冒険むけの物語を創作する強力な手引書、ツールになるのは間違いない。
この章には続いて、「遭遇の作成」としてPCたちが戦闘ではない場面の目的の例があり、その後にいよいよ「戦闘遭遇の作成」が来る。
「戦闘遭遇の作成」は、戦闘でのPCの活躍と生死、経験点の計算、ひいてはPCのレベルアップにつながる重要なポイントであるため、システマチックな手順がある。『モンスター・マニュアル』(以後、"MM")から脅威度(と経験点)を参照して戦闘遭遇をゼロから作り出すための解説だ。
とは言え、キャンペーンで遊ぶのに必要な数の戦闘遭遇を作成するのはひと仕事であるし、入門編としては重い。そこで既存のアドベンチャーに収録されている戦闘遭遇(大抵は戦場やダンジョンごと記載されている)を取り出し、前述の表を駆使して全体の物語と、戦闘と戦闘の間の非戦闘場面で連結するのだ。
「|ファンデルヴァーの失われた鉱山」の冒頭が、王道の「ゴブリン退治」であるのは述べたが、都市ネヴァーウィンターで依頼を受けてのスタートでなく、DMGを参照して創り出した別の形の導入にすることで、また違う物語にすることができる。このアドベンチャーに登場する町などの場所、ダンジョン、そしてモンスターは「D&Dらしい」から、そこから外れることなく、PCが経験する物語を創り出すことができる。もちろん、DMGの各表をランダムに選ぶだけでなく、DMである君がキャンペーンやセッションにおける物語の筋や登場人物たちを創作したり、アニメーション、映画、ゲーム、小説、神話、伝説、ドラマなど他の物語からもらってきても一向にかまわない(セッションが楽しいものとなるような)。
この方法で、いままでのD&Dも遊んでいて、手元に第4版アドベンチャー『殺戮のバルダーズ・ゲート』『クリスタルシャードの影』があれば、それらの英語の第5版用データ(*1)とMMを参照し置き換えて遊ぶなら、物語と戦闘遭遇の両方を用意できることになる(*2)。
今回のアドベンチャーの作成は第3章というDMGのいち部分でしかなく、ほかにもDMが自作をするための情報や表がふんだんに掲載されている。スターターで入門し、コア・ルールを活用してプレイし、クリエイティビティを発揮することは、ハードカバーの大型アドベンチャーに挑むことを含めて、必ずやプレイ仲間とのD&Dライフをより楽しくすることだろう。
*1 それぞれのダウンロードは、MURDER IN BALDUR'S GATE PRODUCT OVERVIEW、LEGACY OF THE CRYSTAL SHARD PRODUCT OVERVIEWから。
*2 日本語版は準備中。