映画やゲームなどのモチーフによく用いられる『ギルガメシュ叙事詩』。
でも、名前は知っているけれど内容はよく知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は『オリエントの神々』(池上 正太著)を参考に、『ギルガメシュ叙事詩』の主な内容をご紹介します。
目次
そもそも『ギルガメシュ叙事詩』とは?
『ギルガメシュ叙事詩』は、古代メソポタミアの都市国家ウルクに実在したとされる王ギルガメシュについての伝承をまとめた物語です。元はシュメール語で記されていましたが、後にシュメールを支配したバビロニアの人々により、アッカド語でもまとめられました。こうした経緯から、『ギルガメシュ叙事詩』には「シュメール語版」「古バビロニア版」「中期バビロニア版」といったいくつかのバージョンが存在します。
『ギルガメシュ叙事詩』の断片の解読に初めて成功したのは、大英博物館のジョージ・スミスです。1872年、彼は粘土板に記された楔形文字の中に、『旧約聖書』の「ノアの方舟」によく似た内容が含まれていることに気づきました。
この発見はヨーロッパの人々に大きな衝撃を与えます。その後二ネヴェ(アッシリアの都市)の発掘が進むと叙事詩の新たな書版も発見され、『ギルガメシュ叙事詩』の研究が盛んになされることとなりました。こうして『ギルガメシュ叙事詩』は世界中の人々に知られるようになったのです。
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『ギルガメシュ叙事詩』①ギルガメシュとエンキドゥ
ここからは『ギルガメシュ叙事詩』の主な内容をご紹介しましょう。ウルクの王ルガルバンダとその守護女神ニンスンの間に生まれたギルガメシュは、半神半人と称えられるほどに強く、並ぶべき者の無い優れた人物でした。しかし、それゆえに彼は慢心し、暴君となってしまいます。
ウルクの人々はギルガメシュの圧政に嘆きました。その声は天まで届き、天の神アヌは、女神アルルに命じて野人エンキドゥを創らせます。
エンキドゥは粘土をこねて創られた野人で、はじめは自分の使命に気付くことなく荒野で獣たちと共に暮らしていました。しかしある時、ギルガメシュによってウルクに招かれることとなり、2人はウルクの町で対面します。2人は対峙するとどちらからともなく戦いを始め、決着はつかなかったものの、初めて自分と同等の力を持つ者に出会った喜びから、友達同士となりました。
その後ギルガメシュとエンキドゥは「香柏の森」に行き、森の守り手である怪物フンババを倒すことを決めます。
フンババは強敵でしたが、太陽神シャマシュから送られた13の風の援軍もあり、2人はついに勝利します。フンババは命乞いしましたが、エンキドゥはこれを許しませんでした。2人は香柏を伐採して筏に積み、その上に切り落としたフンババの頭を乗せニップルの町へと戻ります。
森から戻ったギルガメシュの勇壮な姿を見て、女神イシュタルは彼に恋をしました。イシュタルは早速彼に言い寄りますが、冷たく断られてしまいます。怒ったイシュタルは自らの父親アヌを脅迫し、天の雄牛グガランナを地上に解き放たせました。
ギルガメシュはエンキドゥとともに、地上で暴れ回るグガランナを討伐すると、軽蔑の証としてイシュタルに雄牛から切り取った足を投げつけました。
その夜、エンキドゥは不吉な夢を見ます。それはギルガメシュとの冒険で犯した罪の報いとして自身が亡くなるという夢でした。目を覚ましたエンキドゥは嘆きますが、太陽神シャマシュに諭され、夢の内容を受け入れます。そうして最期はギルガメシュと語り合いながら、夢のお告げの通りに息を引き取りました。
『ギルガメシュ叙事詩』②不死を求めて
ギルガメシュはエンキドゥを手厚く葬りますが、その心の中には死への恐怖が深く刻み込まれました。そこで彼は死の恐怖から逃れるため、不死の秘密を知るというウトゥナピシュティムを探す旅に出ます。旅は困難を極めました。マーシュの山をなんとか越え、光り輝く海辺へたどり着いた彼は、酒場の女主人シドゥリにウトナピシュティムの元へ行く方法を尋ねます。シドゥリは疲れ切った様子のギルガメシュを見て「人間はいずれ死ぬものだから、生を楽しみなさい」と諭しますが、彼は諦めませんでした。
その後ギルガメシュは、ウトゥナピシュティムに仕える船頭ウルシャナビの協力を得て死の水と呼ばれる海を渡り、ついにウトゥナピシュティムの元へとたどり着きます。
ギルガメシュは早速「死を免れる方法を教えてください」と懇願しましたが、待っていた返答は「そのような方法はない」というものでした。
納得しないギルガメシュに、ウトゥナピシュティムは自分が神々に列せられた経緯を語ります。
かつてウトゥナピシュティムはエア神からのお告げを受けて船を作り、自分と自分の家族、船大工、全ての動物のつがいを乗せました。やがて世界を洪水が襲いましたがウトゥナピシュティムたちだけは船に乗っていたため助かり、神に列せられて永遠の命を得たというのです。
話し終えたウトゥナピシュティムはギルガメシュに、「洪水が起きた期間と同じ7日間眠らずに過ごしてみよ」という試練を与えます。ギルガメシュはこの試練に挑戦しますが、初日から眠ってしまいました。
試練に失敗したギルガメシュをウトゥナピシュティムは追い返そうとします。しかし妻のとりなしもあり、若さを保つ草のある場所を彼に教えることにしました。
喜び勇んだギルガメシュは早速この草を手に入れますが、帰り道に水浴びをした際に大事な草を蛇に取られてしまいます。
こうしてギルガメシュは悲嘆に暮れながら帰国しました。道中最後まで付き添った船頭のウルシャナビに、自らが築き上げたウルの町の繁栄を語って聞かせたということです。
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