昨年、エジプトにあるクフ王の大ピラミッドの中心部に未知の巨大な空間があることがわかったと、ニュースで話題になりましたね。
そもそもピラミッドはいつ何のために、どうやって建設されたのでしょうか?
『古代遺跡』(森野たくみ 著)では、トロイやポンペイ、ストーンヘンジ、アンコールワットなど、世界各地の遺跡を地域別に分けて紹介しています。
今回は本書を参考に、「そもそもピラミッドとは何か?」ということについてお話します。
目次
四角錘とは限らない ピラミッドの形と語源
ピラミッドは紀元前3000年頃に成立した古代エジプト文明に建設された巨石建築物です。ピラミッドというと、ギザの3大ピラミッドに代表される四角錘の形をしたものを思い浮かべる方が多いと思います。ですが実はピラミッドには、他にも様々な形のものが存在しているのです。
たとえばサッカラには、紀元前27世紀にジェセル王が築いたという「階段式ピラミッド」があります。これは段々が積み重なったような形をしたピラミッドです。
また他にも「屈折ピラミッド」という、途中から勾配の角度が変わるピラミッドも存在します。このように、全てのピラミッドが四角錘のような形をしているわけではないのです。
これらのピラミッドは古王国から中王国時代(紀元前2800年~紀元前1600年)にかけて建設され続けられましたが、新王国時代になるとつくられなくなりました。しかし建設から数千年が経った現在でも世界中の人々を魅了し続けてやみません。
ところでピラミッドという言葉はエジプトの言葉ではないということはご存知ですか? 古代エジプト人は階段状ピラミッドのことを「イアル」、四角錘のピラミッドのことを「メル」と呼んでいました。
ピラミッドは元々ギリシア語で、その語源はピラミスという四角錘のパンだとも、ギリシア語で火を意味する「ピュル」という言葉だともいわれていますが、はっきりしません。
深まる謎 ピラミッドの建設方法をめぐる仮説とは
それでは巨大ピラミッドはどのように建設されたのでしょうか?古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは、クフ王が10万人の人々を3か月交代で奴隷のように働かせピラミッドを建設したと書き残しています。ですが現在では、ピラミッドは奴隷が働かされてつくられたわけではなく、農閑期の失業対策として建設されたという説が有力です。その証拠にピラミッド建設に使われた石切り場には、労働者らが書いたと思われるクフ王を称える落書きが残されています。
実際の建設方法について、ヘロドトスは「寸の短い材木で作った起重装置」を使ったとしか書いていません。残念ながらピラミッドの建設方法は今のところまだわかっていませんが、考えられる方法を2つご紹介しましょう。
ひとつめは、ピラミッドの斜面の前に土を盛ってゆるやかな傾斜を付け、一段ずつ石を運び上げたのではないかという説です。
ふたつめの説は、ピラミッドの斜面に沿って螺旋を描くように土を盛り、石を運ぶ道を作ったのではないかというものです。
どちらの説でも、傾斜には石を運びやすいように木のころを敷き、ロープで石を引っ張ったのではないかと考えられています。
また最近では、石の周りに半円状の車輪を取り付け、石を転がして運んだのではないかと考える学者もいます。
いずれにせよピラミッド建設は資金調達、材料の調達、資材の運搬、労働者の管理や建築家の育成など、様々な技術と知恵がなくては成し遂げられない事業でした。実際の建設方法だけでなく、こうしたシステムを古代エジプトの人々がどのようにしてつくり上げ、運営していたのかも大きな謎として残されています。
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王の墓か神殿か? ピラミッドが建設された理由とは
ではなぜピラミッドは建設されたのでしょうか?こちらもまだはっきりとはわかっていませんが、様々な説の中から代表的なものをご紹介しましょう。
ひとつめは、ピラミッドが王の墓であるという説です。
ヘロドトスは著書の中でピラミッドが王の墓だと書いていますし、実際にピラミッドの中からは石棺が発見されています。
ですがヘロドトスの主張はあくまでも後世の伝聞にすぎず、またピラミッド内部の石棺から遺体が発見されたこともありません。それに古代エジプトの遺跡からはピラミッドが墓であると記した文献も見つかっていないなど、この説に反論する意見は多くあります。
ふたつめは、ピラミッドが太陽を祭る神殿であるという説です。
これはフランスのエジプト学者アンドレ・ポシャンが主張した説で、クフ王が太陽神クヌムを信仰していたことや、クフ王の別名が「クヌムは我を守る(ハル・クヌム・クフ)」であることなどが理由になっています。
3めは、オリオン信仰にちなんでいるのではないかという説です。
エジプトの建設技師ロバート・ボーヴァルは、古代エジプト人はオリオンを信仰していたのではないかと考えました。ギザの3大ピラミッドの配置がオリオン座の3つの星に対応しており、ピラミッドを地上につくることで天界を地上に再現させたというのです。
ピラミッドをめぐっては、建設理由や建設方法など、わからないことがまだまだたくさん残されています。日本を含め世界中の学者たちの研究によって、謎がひとつひとつ解明されていくのが楽しみですね。
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ライターからひとこと
ちょうど昨年の今頃、エジプトで実際にピラミッドを見学してきました。ひとつひとつの石の大きさに驚き(私の背丈近くまでありました)、内部が急な坂と階段続きになっているため、息を切らしながら見学したことを覚えています。皆さんも機会があればぜひエジプトを訪れてみてください。歩く場所が多いので、足腰が元気なうちに行かれることをおすすめします。