今夜中に仕上げなければいけない仕事や課題を必死にこなしているとき、ふと 意識が遠くなったり、こくりこくりと居眠りしてしまった経験、皆さんもあるのではないでしょうか。
あの、あらがいがたく心地よい眠気は、ある妖精の仕業かもしれません。
今回は、ドイツの民間伝承に登場する、眠りをもたらす妖精ザントマンをご紹介します。
目次
優しそうなのに残酷? 眠らない子供のもとに現れるザントマン
ザントマンはドイツ語ではSandmann、英語ではSandmanと書き、どちらも「砂男」という意味です。姿を見たものは誰もいませんが、気の優しそうな老人だといわれており、その名の通り、魔法の砂がいっぱいつまった袋を背中にかかえています。
この魔法の砂を目の中にかけられた人は、どうやっても眠らされてしまいます。抵抗しようとしても、ザントマンがまぶたの上にどっかと座りこんで、むりやり目を閉じさせるそうです。
もし、ここまでされても素直に眠らない子供がいたら、ザントマンはどうすると思いますか?
魔法の砂をかけられてもまぶたの上に座られても、どうしても眠ろうとしない子供がいたら……ザントマンはその子供の目に砂を入れて目玉をえぐり取り、自分の子供がいる月へと持ち帰って、その目玉を食べさせ てしまうのです。
優しそうなおじいさんの姿をしたザントマンが残酷な行いをすることに、まさかと驚くかもしれません。しかしこれは、ドイツのお母さんたちが子供を寝かしつけるときの決まり文句。
子供のころ、夜更かししていたらお母さんに怖い話を聞かされたことはありませんか?
同じように、ドイツの家庭では「早く寝ないと、ザントマンに目玉を取られてしまうよ!」と叱るのかもしれませんね。
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ザントマン だけじゃない ゲルマン諸国に伝わる眠りの精
ゲルマン諸国には他にも、オーレ・ルゲイエというデンマークの睡魔がいます。オーレ・ルゲイエも、ザントマンと同じくおじいさんの姿をした妖精で、子供たちの目の中に魔法のミルクをさして眠りへ誘うといわれています。七色に光る絹の上着を着込み、誰にも気づかれないよう忍び歩きをするために靴ははいていません。
また、オーレ・ルゲイエは絵が描かれた傘を片手に持っており、すなおな良い子の枕元で広げ、美しく不思議な夢を見せてくれます。もう片方の手には無地の傘を持ち、しつけの良くない子の頭の上にさして、朝まで夢も見ないように寝かしつけるのだそうです。
オーレ・ルゲイエには同じ名前の兄弟がいて、こちらは永遠の眠りをつかさどります。この妖精は馬に乗ってやってきて、生前に良いおこないをした者は自分の前に乗せ、そうでない者を後ろに乗せて、冥界まで連れて行ってしまいます。
一晩の眠りと永遠の眠り、同じ眠りでも全く意味が違いますね。
ザントマンを始めとして、ゲルマン諸国に伝わる睡魔の妖精には、お母さんが子供たちを寝かすときに聞かせるしつけの意味合いが強かったようです。
わが子が日中たくさん体を動かした後、しっかり睡眠を取ってほしいと願うのは、いつの時代も子を思う親心なのでしょうね。
ライターからひとこと
なかなか寝付けないときに、ザントマンの魔法の砂があると便利だろうなと思ってしまいます。そうは言っても、もし今夜枕元にザントマンが現れたら、素直に眠ることをおすすめします。