突然ですが、中世ヨーロッパの世界で錬金術師を目指しませんか？ 錬金術師は賢者の石をつくり出したり、黄金を生成したり、不老不死になることだってできるかもしれない、夢にあふれた職業です。しかし錬金術師になるにはどうしたらよいのでしょう？ 何か特別な条件が必要なのでしょうか？
『図解 錬金術』(草野巧 著)では、賢者の石やホムンクルス、金の生成といった錬金術にまつわるさまざまな研究とその成果について、文章と図解でわかりやすく解説しています。今回はその中から、錬金術師になる方法をご紹介します。
目次
錬金術師の求人票①～学歴不問。ただし学識は必要～
錬金術師になるために必要なものは何でしょう？ 学歴、資格、それとも他に何か必要なものがあるのでしょうか？実は錬金術師になるには学歴も資格も必要ありません。ただし、すぐれた錬金術師を目指すにはある程度の学識が必要でした。
まず、様々な言語で書かれた古文書が読めなければなりません。錬金術について書かれた古文書には、ヘブライ語、ギリシア語、アラビア語、ラテン語などが使用されていますので、これらの言語を習得する必要があるでしょう。
こうした言語やその他錬金術に知識を得るために有効なのは、大学で学ぶことです。学部としては神学部や医学部などが相応しいでしょう。中世ヨーロッパでは宇宙を作ったのは神であると考えられていたため、世界の神秘に近づくには神学は重要な学問とされていました。また、物質を操作して人体に役立つ薬を作れるという点で、医学の知識も錬金術のプラスになると考えられていたのです。
参考までに中世ヨーロッパで有名な大学として、神学ではフランスのパリ大学が、医学ではイタリアのサレルノ大学などが挙げられます。大学卒業は錬金術師の必須条件ではありませんが、錬金術師として必要な知識を得るためにも、一度これらの大学の門を叩いてみるのもよいかもしれませんね。
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錬金術師の求人票②～優れた師への入門経験必須～
錬金術師になるために学歴よりも重要なことは、優れた師に出会い、入門することです。錬金術師の教育は基本的に師から弟子へと口頭で行われるため、親が錬金術師で自分がその後を継ぐという場合以外では、早く良い師にめぐり会うことが重要なのです。錬金術師の中でも特に優れた者たちは、アデプト(達人)と呼ばれます。アデプトはヨーロッパ各地に存在するとされますが、現実に出会うのは困難でした。真のアデプトは突然姿を消したり現れたりするため、住所を突き止めることも難しかったのです。
もしアデプトに弟子入りしたいと思うなら、まずその居場所を探して各地を旅する必要があるでしょう。ヨーロッパだけでなく、時には遠く北アフリカやペルシアまで出かけなくてはならない可能性もあります。
しかし一説では、もし錬金術を志す者がいて、その者が十分な美徳と人格を備えているなら、アデプトの方から彼の前に姿を現し、錬金術の秘密を伝授してくれるとも言われています。秘密を究めた真のアデプトは、自らの秘密を伝えるにふさわしい若者の前にだけ姿を現すというのです。
錬金術師の求人票③～最大の必須条件は忍耐力～
ここまでで、錬金術師になるためには、一定の学識があり、アデプトをはじめとする優秀な錬金術師に入門することが必要だとお伝えしました。その上で、錬金術師になるために最も必要とされるのは忍耐力です。錬金術の研究をし、賢者の石の探究を続ける間には様々な困難が予想されます。貧乏や病気、時には迫害を受ける可能性もあるでしょう。そうした逆境を乗り越え、数十年に渡って研究を続けるためには、かなりの忍耐力がなくてはなりません。
錬金術を志す者の格言に、「読め、読め、もっと読め、祈れ、働け、さらば見出さん」というものがあります。錬金術の道がいかに困難なものかを表す格言といえるのではないでしょうか。
さて、もし晴れて一人前の錬金術師になれたとしても、アデプトになるためにはさらに研鑽を積む必要があります。アデプトは邪念を払い、神に自分をゆだねることができなくてはいけません。さらに優秀なアデプトともなると、時には炉やレトルト、蒸留装置といった錬金術の道具まで自作することもありました。アデプトは単に知識を持っているだけではなく、鍛冶やガラス製造といった技術力も持ち合わせていなければならないのです。
錬金術師になるための道筋は掴めたでしょうか？ 方法がわかればあとは簡単、覚悟を決めて実行するのみです。さあ、あなたも錬金術師を目指しませんか。
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