D&D第3.5版において、バトル・グリッドにD&Dミニチュア配置して臨場感のある戦闘をプレイすることが、基本ルールに組み込まれたことは既に述べた。その好影響として、AD&D時代に比べ、異なるDMやプレイヤーがプレイしても同じように楽しめるセッションになりやすいという、シナリオやプレイ結果の共通化、平均化が可能となった。それをうけ年に一度、世界同時開催の公式セッション・イベントが生みだされる。
世界で同時にD&Dを遊ぶ
“D&D Game Day”の第1回は、2007年11月に開催であった。イベントに必要なシナリオ、D&Dミニチュア、マップなどのセットが提供される豪華なものだ。これはのち、第4版になると新製品の記念イベント(D&Dゲームデイ『プレイヤーズハンドブックII 第4版』 2009年10月開催)となることになる。
日本においてもシナリオや開催の手引きが翻訳、店舗へ提供され、協力的な店舗において開催が拡がっていく。
D&Dゲームデイ『モンスター・マニュアルII』(2010年1月開催)、D&Dゲームデイ『ダンジョンマスターズガイドII』(2010年4月開催)、D&Dゲームデイ『ダンジョンマスターズガイドIII』(2010年10月開催)、D&D"赤箱"ゲームデイ(2010年12月開催。この"赤箱"とは『ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版 スターター・セット』原題:“Dungeons & Dragons Starter Set” WotC 2010、ホビージャパン 2010)、『D&Dネヴァーウィンター・ゲームディ』(2013年9月開催)と開催され、開催数は日本全国で20店舗を越えていた。これは、テーブルトークRPG製品が書籍形態で、プレイスペースが設けられていない書店が主な販売店となっていた日本のRPG市場においては驚くべき数と言える。
また、後述する第4版となってからは“D&D Game Day”のほかにも、店舗で毎週水曜日に2時間のセッションを開催する“D&D Encounters”や、高難易度ダンジョン・アタック形式アドベンチャーに挑む“D&D Lair Assault”などを、TCG“Magic The gathering”のDCIトーナメントと同様にウィザーズ・プレイ・ネットワーク(WPN)へ開催申請と結果報告、参加者へのDCIナンバーの付与などを伴う形で実施した。これらは公式サポートとして「D&Dを遊ぶ」習慣と、D&Dミニチュアを使って「魅せる」という訴求力を持ち、ゲーム製品、D&Dミニチュアの人気を支えた。
これらの店舗イベントは、第5版のプレイ環境として“D&D Adventurers League”へ統合され、日時は自由に設定したうえで開催申請、報告をすることにより公式イベントとして開催されている。
日本のファンによるコンベンション
日本におけるD&Dファンによるコンベンション・イベントも成長してきた。特筆すべきコンベンションとして、宿泊を伴う規模を誇る「DAC(DUNGEONS & DRAGONS ANNUAL CONVENTION)」がある。運営の主要スタッフは、より前から規模の大きいD&Dコンベンションを開催していたが、「DAC」になってから初心者対応のチームを設け、店舗にて初心者対応の小イベントや“D&D Encounters”を開催してプレイヤーを増やし、結果としてコンベンション参加への導線を図ったり、宿泊施設を用意して遠方からの参加者を募ったり、運営スタッフの世代交代ができる組織力も発揮して、順調に回を重ね「DAC2017」で12年に到達した。社会人の参加を考慮し、3連休の前2日間で開催するのが通例で、参加者数は最多の回で延べ400名に達する。
HobbyJAPAN、翻訳小説からアスキー・メディアワークス、「D&Dオンライン ストームリーチ」を運営したさくらインターネットなどが協賛していたが、DAC自体の情報発信もしっかり行われた成果として、公式にも一目置かれるコンベンションとなった。WotC公式のイベント運営組織であるWPN(The Wizards Play Network)から“D&D Adventures League”の一環で第5版の前触れとなる「D&Dプレミア」という公式テーブルを設けることを要請され、2015年の開催にて「D&Dプレミア:The Malady of Elventree」を立卓しているのだ。
DACは東京での開催だが、いまや名称を共有して大阪、愛知、宮城など他県の現地スタッフによる運営による「参加しやすいオープンなD&Dコンベンション」を開催する「運動」と言えるほどの規模になっている。
第5版の多言語展開要望の署名活動などとも合わせ、日本におけるこのようなD&Dファンの活動の大きさと根強さは、シリーズ製品展開の大きな支えになっているのは言うまでもない。第4版末から、第5版の多言語が許諾されるまでの製品の空白期間にも、百人以上の動員があるコンベンションが開催され、RPGファンに知られたことは、D&Dというタイトルに対しての大きな貢献となっている。
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