スナイパーの任務は、確実に標的を仕留めることです。しかし標的も狙われていることに気が付けば、身を隠したり逃亡したりと対策を講じてきます。そのためスナイパーの任務は、標的に気付かれないことが必要条件となります。
ではスナイパー達は、どのような方法で標的に気付かれないようにしているのでしょう。 『図解 スナイパー』(大波篤司 著)では、狙撃に関するさまざまな工夫が紹介されています。今回はその中でも、ギリースーツについてお話します。
目次
野戦での狙撃兵定番スタイル「ギリースーツ」の役割
狙撃では、標的に気付かれず不意打ちで仕留めることが基本です。こちらが仕掛ける前に標的に気付かれてしまうと、ヒットさせることが難しくなるためです。また場合によっては、既に標的が警戒していることもあります。そんな標的の目を欺き、存在を気付かなくさせるための偽装がギリースーツです。
ギリースーツとは、偽装を極限まで追及した野戦服です。着込んで地面に寝そべると、人間がいることさえわからなくなります。この状態で匍匐前進を行えば、目標から発見される可能性を減らすことができます。
ギリースーツを着用する最大の利点は、その迷彩効果が立体的ということです。迷彩服でもある程度の偽装効果は期待できます。しかし迷彩服の偽装は布地にプリントを施しただけのものですので、2次元的なものに過ぎません。
一方ギリースーツの場合、全身にまとわりついた立体的な歪みが、微妙な陰影を生み出してくれます。こうした陰影が人間のシルエットを崩し、より偽装効果を高めてくれるわけです。
どのようにしてギリースーツを自作するのか
現代では、最初から完成形としての「ギリースーツ」を入手することができます。しかし迷彩服に偽装用のネットを縫い付ける、ちぎったパラシュートの帆布や現地で採取した草木や小枝をくくりつけるといった昔ながらのやり方で、ギリースーツを自作するスナイパーも多くいます。こういった作業は手間がかかっているようにも見えますが、面倒くさがるスナイパーはいません。任務の成功は勿論ですが、自分の命もかかっているためです。
そもそもギリースーツの作成は、狙撃に取りかかる遥かに以前に行われるため、それなりに時間をかけることも可能なのです。現地の植生に合わせた偽装を施すなど、ひとつひとつの工夫が任務の成功率向上に繋がるのです。
ギリースーツ以外の狙撃に適した服装とは
ギリースーツの役割は、周囲に認識されないことです。認識されないことは、確かに狙撃の成功に繋がります。しかしギリースーツを纏うだけで、狙撃は成功するわけではありません。そもそも装備品メーカーはギリースーツやスナイパーライフルのようなスナイパー専用装備品の開発に熱心ではありません。スナイパーの数自体が少ないことも理由のひとつですが、それ以上に、どんなものがスナイパーにとって理想なのかという基準が決めにくいことが挙げられます。
極論になりますが、スナイパー本人が精神的にリラックスでき、姿勢や筋肉などに不要な負荷を与えない格好であれば、アルマーニのスーツであってもアキハバラのメイド服であっても構わないのです。
ただし、周囲に認識されないという条件と、リラックスできるという条件は必ずしも一致するとは限りません。真っ白なスーツが一番落ち着ける人であっても、野山にまでスーツで行けばやはり目立ちます。準備しておいたいろいろなものを台無しにしてしまうでしょう。 重要なのは、自分の「一番」のスタイルと偽装のために必要な配慮を施したスタイルをどのようにすり合わせるかです。
任務に必要であっても、ギリースーツを纏い、手袋をはめ、暗視装置を通してスコープを覗いた状態で撃つ場合と、理想のスタイルで撃った場合とはわずかながら違いがあります。
一流のスナイパーは、両者にどれくらいの差異があるのかを客観的に把握した上で、その隙間を修正しているのです。
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ライターからひとこと
狙撃兵は隠れること、リラックスできることの2点が最重要とされています。そのためヘルメットやボディアーマーなどの防弾効果のある装備さえも身につけないことが多いといいます。また伏せるときに邪魔になるような胸、腹の装備も付けません。【タダ読み】立体的な迷彩服ギリースーツ-『図解 スナイパー』