怪奇幻想作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトは、「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」を小説という形で表現しようとしました。
みなさんは、恐怖の宇宙そのものを創造した神をご存知でしょうか。実は、暗黒神話の名称になっているクトゥルフではなく、外なる神の総帥「アザトース」こそが狂気的な宇宙を作り上げた真の創造主だといわれています。
今回は、『図解 クトゥルフ神話』(森瀬繚 著)を参考に、「アザトース」をご紹介します。
目次
すべてを創造する恐るべき宇宙の原罪アザトース
アザトースは、名状しがたくも恐るべき宇宙を作った真の創造主です。無限の宇宙空間の中心部の、沸騰する混沌が渦巻く最奥に存在すると言われている、時を超越した無明の部屋で、あたかも玉座に大の字になって寝そべっている様子で、不浄の言葉を吐き出し続けています。
しかし、アザトースが創造したのは、狂気と恐怖の宇宙そのものだけではありません。 存在するものすべてが、アザトースの思考によって創造されているのです。逆に、アザトースを見てしまったものは、存在を根底ごと破壊されてしまいます。
また、宇宙に存在するものすべての王であるアザトースは、ヨグ=ソトースなどの「外なる神」の総帥でもあります。
その姿は、暴走するエネルギーの塊であり、いかなる形も持たない無定形の黒い影。その影は、泡立ち、絶え間なく膨張と収縮を繰り返しています。 このような姿で、更に盲目でもあるため、アザトース自身が直接なにかをなすことは滅多にありません。
外なる神の使者である「ニャルラトホテプ 」が代行者としてその意思を直ちに遂行します。
また、ニャルラトホテプの他にも従者が存在し、アザトースの座する玉座の周囲には、心を持たない無定形の騒がしい踊り子たちが、常に取り巻いています。
彼らは、アザトースの周りで踊り狂いながら、下劣でくぐもった音を出す太鼓を狂ったように連打し、呪われたフルートでか細くも単調な音色を奏でて、退屈しているアザトースを楽しませようとしています。もちろん、彼らもそれぞれが強大な力を持つ怪物であり、侮ることのできる存在ではありません。
アザトースが現れるところには、常に創造と破壊の入り混じった爆発的な混沌のみが吹き荒れるため、アザトースの顕現を待望する崇拝者は、シャッガイの昆虫など僅かな例外を除き、存在しません。
火星と木星の間にある小惑星帯は、かつてそこにあった星が、召喚されたアザトースによって砕かれたなれの果てなのです。
宇宙を創造してもなお、退屈だと悶えるアザトース。あなたの前にニャルラトホテプが現れた時、あなたはアザトースの退屈しのぎの楽器として踊り狂わなければならないのかもしれません。
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ライターからひとこと
アザトースだけではなく、クトゥルフ神話そのものが奥深く、紹介してもしきれない神話です。今回紹介できたのもアザトースの一部分のみ。本書で是非クトゥルフ神話の世界に触れてみてください。